二十九 告白
「本当に・・私はお義父様の娘なの?」
「・・先ほど証明されたでしょう?リーナはお父様とお母様の子よ」
「私はお義父様の口から直接聞きたいの!」
リーナの問いにお父様ではなくお義母さまが答える。
リーナはお義母様の言葉を遮りお父様へ詰め寄ると、お父様は意を決したように顔を上げリーナの問いかけに答えた。
「正直、リーナが私の子だと思った事は無かった。私には似ていないと思っていたし当時君は男爵夫人で、私には妻がいた。確かに結婚前は仲は良かったが一線を越える関係では無かったんだ」
「当時はあなたと一緒になれると思っていましたからね。清い体で・・当時の独身女性はそれが美だと教えられていたわ」
「それは今もでは?」
「ザーラ!!」
ザーラさんの独り言にウィルさんが止めると、お義母さまは顔をしかめたがお父様は少し笑った。
「そう、ショックだったよ。ずっと私と一緒になる!と言っていた君が、裕福な男爵と結婚したんだからね」
「・・我が家にも理由があったのです」
「知っていたよ。当時はまだ子爵家の嫡男だった私には何も出来なかった」
「・・・」
お父様は少し考えたあと静かにお義母さまの方へと体を向ける。
「私には本当に記憶が無いんだ。いつ?私たちは関係を?」
お父様が聞いた。
お義母さまは真っ直ぐにお父様を見ていたが、リーナへと視線を移した。
「わたくしは本当にあなたが好きだった。男爵とは親子ほど歳が離れた人と結婚なんてしたく無かった。でも、我が家を救うためには嫁ぐしか無かった・・男爵にはすでに愛人との間に跡取りもいて、子はどっちでも良かった。ただ爵位のある正妻が欲しかっただけの結婚だったの」
お義母さまはリーナへ語りかけるように真っ直ぐ見つめながら話し始めた。
リーナもそんなお義母さまの話を黙って聞いている。お父様も・・
「あなたが結婚して半年後、夫人に子供が出来たとある夜会で耳にしたの。それまでは・・結ばれる相手では無かったのだと諦めてたのに、理由は何であれお互い別の人と結婚したのだからと。でもその時に悔しい気持ちがここに・・」
胸の辺りを手でクルクルと回す。
「わたくしには子を期待されないのに、夫人は・・愛する人の子を産む。そう思ったら・・」
お母様が妊娠して社交会を休んだ日、知り合いの手を借りお父様に薬入りのお酒を飲ませた・・
お父様にそう言った記憶が無いのは、お母様の知り合いたちも手伝っていて一緒に飲んでいた所で記憶が無くなったからだと・・
「確かに君と友人たちと飲んでいた記憶はあるが、それ以降の記憶は無かった。目を覚ますと友人たちも同じような姿で寝ていたし、バカ騒ぎして暑いからと自分で服を脱いだんだ!と言われたら・・」
「・・どうしても欲しかった。わたくしにも子が・・」
計画的な犯行だと言った。
誰にも言わないつもりだったと・・
「男爵にバレたの・・自分の子では無いと。身体は重ねていたけどリーナが出来た頃は愛人と旅行中だったから」
それでもお父様との子が欲しかったと言ったお義母さまを哀れにも思えた。
その後はリーナを盾にされ言われるがままに扱われたと。当然リーナには相続権も与えられず男爵の財産は全て愛人とその子供たちの物になり、男爵が亡くなると着の身着のままで実家へと帰されたと言った。
当然手ぶらで帰って来たお義母さまとリーナを実家は邪魔者扱いした。
それでも耐えられたのはリーナがいたからだと、嬉しそうに話している。
「夫人も亡くなりあなたが独り身になったと知った時、どれほど嬉しかったか・・。色々な伝手を使ってあなたに近づきこの地位を得たわ。本来の場所に戻って来れたんだと思った」
その後の事は私も知っている。
お母様を恨む事で自分を正当化しようとしたお義母さまは、クルト様がリーナに気があることを知ると私とリーナを変えリーナにレビィ子爵家を継がせようとしたと・・
リーナはお父様の子だから、お父様に言えば何とかなると思ったと。
「この国の法では、連れ子に再婚先の爵位は与えられない。その理由が正にこれだ、本来の血筋を脅かさない為の措置なのだと知っていただろ?」
サディル様が思わず言葉を出した。
この国に住む者なら、貴族なら男女問わず先に教育される事。
それでもお義母さまは成長したリーナを見れば疑わないと思ったと言った。
全てを語ったお義母さまはリーナに一言 ごめんね と謝り、騎士に連れられて行った。
お父様への気持ちは分からない事も無い。今の私もサディル様への気持ちは同じだから・・
でもやはり、やって良い事と悪い事はある。
「リーナ・・」
私はリーナへ声を掛けるとゆっくりと私の方へと身体を向けると、深く頭を下げた。
それが何を意味するのか、私にはわからない。
それでも彼女の気持ちを受け取りたくて、私はそっとリーナを抱きしめた。
そしてリーナもまたお義母さまやクルト様同様に騎士に連れられて部屋から出て行った・・




