二十七 さぁ始めようか! 四
私がフローラへ祝福を与えてしまったから
「どういう意味ですか?」
辛そうに、申し訳なさそうに言ったサディル様へ聞く。
「さっきも言ったが・・私たちにとっての祝福は、相手にとっては呪いになる。と・・」
確かに言っていた。
でも呪いと言っても眠くなるくらいだったし・・!
「そう!どうして私、あんなにも眠くなったのですか?」
成人してからはどんどん眠くなる時間が増えていき、最後はこのまま眠り続けるのでは無いかと思えるほどに眠る時間が長くなっていた。
先生にもらった薬を口にし始めてからは症状も楽になり、公爵邸に行ってからは忘れてしまうくらいに体調は戻っていた。
「・・その件はまた後で話そう。これは公爵家の問題でもあるから」
「・・絶対に聞かせてくださいね!」
公爵家の問題と言われれば一旦は引き下がるしかない。
私は念をおして時間を取ってもらうようお願いをした。
でもまだもう一つの理由を聞いていない。私はお父様へ向きを変えるともう一度聞いた。
お父様はサディル様を見て頷くと話始めた。
「最初はフローラの首の後ろに出来た斑点を虫に刺されたからだと思った。だが薬を塗っても治るどころか悪化していき、そのうち容姿が変化して行ったから調べたんだ・・」
「でしたら何故クルト様と婚約を?」
「・・・」
「お父様?」
「・・フローラは子爵家の跡取りだし、公爵家のしかもブラッド家に嫁げば君が苦労するのが目に見えていた。だから・・」
何故だかお父様の言葉に真実味が無い気がした。
何かを隠している?
お父様が私の目を見ない事が気になった時
「そのまま呪われてしまえば良かったのよ」
「おい!」
お義母さまが口を開いた。
お義母さまは口元に扇を当てていたが目が全てを物語っていた。
「あなたも本当の事を仰れば良いのよ!リーナを子爵家の跡取りにする為に放置していたと!」
「やめるんだ!」
「いや、聞かせてもらおう」
お義母さまの言葉を遮るように怒鳴ったお父様に対し、口を開いたのは王太子殿下だった。
「良いだろう?サディル」
サディル様は私を見ると、まるで私を守るかのように後ろから抱きしめると王太子殿下へと頷く。
その意を受け取った殿下は
「子爵夫人は何かを知っているのだろう?この際話した方が楽になると思うが?」
「で、殿下もお止めください!これは我が家の事ですので!」
お父様は一生懸命止めようとしていたが、お義母さまはこれ幸いとばかりに口を開いた。
「そもそもその娘だけがレビィ家の娘だと思われておりますが、リーナだってレビィ家の娘なのです!」
「それはどう言う意味だい?そこの令嬢は確か男爵家の娘で、夫人の連れ子と申請されているが?」
殿下が煽る。
お義母さまはそれを良い方に捉えたのか話し続ける。
隣でお父様が止めているのにも関わらず・・
「本当はわたくしとこの人が一緒になる筈だったのです!それなのに、横から入り込んだあの女のせいで私は別の男と結婚する羽目に・・」
私を母と間違えているのか、ずっと私を睨みながら話している。
今までならお義母さまの睨みに耐えられず下を向いたが今は違う。後ろでサディル様が私を守るように支えてくれている。
私はお義母さまの目を見返した。
「だから、最後の思い出にとこの人と身体を重ねたわ。何度も何度も・・」
「おい!もう止めるんだ!!」
「止めないわ!!だって貴方も信じていないじゃない!何度も言っているのに!」
お義母さまの話を聞いてリーナは青い顔をしている。それはそうだろう、夫がいながら他の男の子を産んだと実の母が言っているのだ。
リーナ自身、自分の父親は男爵だと思っていた。だからお父様が実子のように可愛がってくれても跡取りにはなれないと、そう思っていたのだ。
「では夫人はリーナ嬢もレビィ子爵の娘と、そう言っているんだね」
「そうですわ!幸いにもクルトさんもリーナに気がある様でしたし、この際フローラとリーナを入れ替えようと・・」
お義母さまは言いかけて、自分が今言ったことの重大さに気がついたようだった。
実際、お父様とリーナの顔色は悪い。
この国の婚姻は一夫一婦制。
ましてお互いに伴侶がいながらの相引きは重罪。子を作るなど死に値する。
もちろんお互いが一人身の再婚は許される為、お父様とお義母さまの再婚が認められたのだ。
「お父様はご存知でしたか?リーナが実子だと・・私では無くリーナをレビィ家の跡取りにしようと思われていたのですか?」
私は涙を堪えながら言葉を出す。
もし知っていたのなら母への裏切りだ・・
「・・・」
「お父様・・教えてくださいませんか?」
「・・・」
お父様は拳を膝の上で握り締めながら無言を通す。
お父様が認めなければリーナの血縁関係は証明されない。
リーナも男爵令嬢なのか、子爵令嬢なのかで変わってくる。
「ではこうしよう。レイモンド準備をしてくれ」
「良いのか?それは公爵家の為の物だと聞いたが」
サディル様と殿下が話し始める。
後ろでは先生とザーラさん達が何やら動いているが・・
「もちろん公爵家の為にだ!フローラは私の伴侶、妻だ!その家族の事なら使用出来る」
サディル様の言葉に皆が注目をする。
「ただし、今回だけの特別措置だ!」




