二十五 さあ始めようか! 二
サディル様が指を鳴らすと先生が現れる。
その手にはある箱を持って。
「先生!」
「フローラ久しぶりだね!今から君の真実を証明するよ」
そう言いながらザーラさんが用意した台の上に箱を置くと、サディル様が箱の中から石の塊を出した。
ただの石では無いことは一目見て分かる。
その石はキラキラ輝いて見えるのに、まるで意志を持っているかのようにキラキラは消えたり移動したりする。
私はその石をとても綺麗だと思った。が・・
「何・・?気持ち悪い・・」
声に出したのはリーナだった。
他の人を見れば妃殿下やお義母さまも眉間にシワを寄せている。
私は自分の感覚が変なのかと思いもう一度石を見る。
「とても美しいわ」
私の言葉にサディル様をはじめ、公爵家の人たちは微笑んだ。
「フローラ、こっちにおいで」
サディル様に呼ばれ台の近くへ寄ると、私の手を取り石の上に置いた。
石は更に輝きを増して部屋全体を照らした・・その瞬間
「フローラ・・顔が・・」
声を出したのはクルト様だが、ロッド侯爵も同じように驚いた顔をしている。
そしてリーナとお義母さままでも・・
私はなぜそんなに驚いた顔をしているのか分からずサディル様を見ると、何故か私の額に口付けを落とすとザーラさんに合図を送る。
その合図にザーラさんが手鏡を持ってくると私の前に差し出した。
「え?これは・・私?」
鏡に映る私は今までの自分ではあるが・・どこか違って見えた。どこが?と言われると悩むが、強いて言えばバランスだろうか・・
「私どもにはこう見えておりましたが、他の方たちには違って見えていたのでしょう」
そう言われてみれば驚きと言うよりは美しい物を見た時の表情だ。
特にクルト様は驚きを隠せずにいる。
「この鏡に映る姿が君の本当の姿なんだ。ザーラも言ったけれど私たちは常にこの姿を見ていたけれどね」
「では・・他の方たちには私はどう見えていたのでしょうか」
クルト様を見れば嫌でもわかる。
きっと今まで見えていた私と今の私の違いの差があるのだろうと。
「貴女は誰だ?フローラはもっと醜女だ。だから俺は一緒に歩くのも、婚約者だと紹介するのも嫌だった・・」
「そうよ・・お義姉さまはもっとブスよ。ブスでなければいけないの!何故私よりも・・」
見ればお義母さまも頷いている。
「お前たちが言うほどフローラはブスでは無い!と言い続けていたが・・これも呪いの一種なのですか?公子様」
「呪い・・?」
私は先生を見た。
先生と出会った時、最初に言われた言葉を思い出したからだ。
君、誰に呪いをかけられたんだ?
と・・
先生は私と目が合うとパチッと片目を瞑る。
「呪い・・フローラからしたらそうなのかもな。だが、我が一族からしたらこれは祝福だ」
「その祝福のせいで娘は婚約者からも邪険にされましたよ?」
お父様は納得がいかないようで事もあろうかサディル様を睨んでいる。
「子爵にも伝えたが、フローラは私の番だ。我が一族に番が現れたら祝福を送る事になっている」
サディル様はハッキリと言いきる。
祝福?っ何?
「それでは納得できません!お義姉さまが番だと言う証拠はあるのですか!?そもそも番って何なのですか?!」
リーナが納得出来ない!とサディル様に詰め寄るが、ウィルさんが立ち塞がる。
石の輝きは徐々に治ってはいるが、輝きの色が変化したように見えた。
「番とは、私の生涯の伴侶で永遠の人。フローラと出会えた事は私にとっては幸運。一族によっては奇跡の人。やっと名乗れる・・」
そう言って私の髪を一房取るとそっと口付ける。
その仕草が甘く、私の心臓が壊れるほど早鐘を打つ。
「そんな・・フローラがそんな美しい人だったなんて・・」
クルト様がショックを受けたように顔色が悪くなる。クルト様の目には一体どのような姿が映っていたのだろう・・と不安になった。
「それが祝福だ!私の番に変な男を近付けない為のもの。本来は・・もう少し大人になってから与えるのだが・・」
そう言ってはにかむサディル様に、私は幼い頃を思い出した。
療養のためと我が子爵家の領地に来た母子。
結婚しようと言ってくれた子息・・
「サン・・サンだったの?」
迎えに来ると言い残し別れ際に・・私は無意識に左首を押さえた。
あの時サンは私に何をしたのだっけ・・?
「本来祝福は婚約を結ぶ時に行う行為。だが私は、離れ離れになる事が分かっていた私はフローラ、君に祝福を与えてしまった・・その事で君に不埒な男は近付かなかったが、確かに子爵の言うとおり君には辛い日々を送らせてしまったと思う」
サディル様の辛そうな告白に胸が苦しくなる。
ブラッド家の番ともなれば花嫁を攫い、復讐に手を染める貴族も現れる。
それを防ぐため婚約後は早めに婚姻を結ぶ事が慣わしと言ってが、私はサディル様に幼い頃に祝福を与えられた。
本来の姿を隠し、男から目を外らせる。
それが祝福。
印を付けた番の事は匂いで分かるのだそうだ。
臭い?
毎日お風呂に入っているから臭くは無いと思うけれど・・と、自分の臭いを嗅いでしまう。
「フローラからは出会った頃から私を狂わせる程の匂いがしていたんだ。とても心地の良い、爽やかで甘い香り。今も・・いや、更に甘さが強くなったかな?」
そう言いながら嬉しそうに、とても嬉しそうに私を抱きしめるように首元の匂いを嗅いだ。




