二十 王宮での夜会 サン目線
「行っておいで」
そう言ってフローラを隣の部屋へと向かわせるとザーラにも目配せをする。
ザーラは頭を下げると静かにフローラの後に続いて隣の部屋へと入って行った。
「サディルがそんな顔で女性を見る日が来るなんて」
「それはそうだろう!何と言っても番様だ!むしろ見つかって良かったよ、じゃないとブラッド公爵家はサディルの代でお終いだ」
「その時はレイモンドの子を養子にする。あいつの子なら間違い無いからな。それでもダメならお前たちの子だ」
「それは頑張らないといけないね」
そう言って隣の妃に言っている。今は王太子の奴も私同様に番を見つけた。その相手が隣に座る妃殿下だ。
彼女の実家は元は男爵家。本来なら大反対を受けるのだが番となれば話は別。彼女を伯爵家の養女とし妃殿下教育を五年ほど行い王家の仲間入りをした。
「何を馬鹿な事を!サディル様はブラッド家の、また王家の本筋で御座いますよ?」
話を聞いていたレナが横から会話に入ってくる。レナの家門はブラッド家の筆頭分家で、レイモンドとも近い家門だ。そして主に執事や侍女として他家へ侵入し情報を持って来る。
「ねぇ殿下?今ブラッド家は王家の本筋と・・」
「ああ、君にはまだ話していなかったかな?これは絶対に秘密だ、もし誰かに話したらたとえ私の番の君でも命の保障は無い。いいかい?」
妃は静かに頷いた。そして・・
「フローラ様!お願いですからお座りください!」
「「「!!! 」」」
隣の部屋が騒がしくなった。初めレナをと思ったが部屋の主人が行った方が早いだろうと思い妃を向かわせた。
妃は続きが聞きたいと言わんばかりの顔をしていたが、奴にも説得され渋々隣の部屋へと向かって行った。
「良いのか?話して」
「ああ彼女は大丈夫だ。王太子妃の立場で手一杯だからね、この国の女主人は望まないし君が許さないだろ?」
「当たり前だ。この国の女主人はフローラしかいない。もし彼女が老衰以外で私の手から離れたらこの国も滅ぶだろう」
「・・お前が言うと本当になるから恐ろしいよ・・」
私は奴の言葉に笑うと、その笑いが更に恐怖心を煽るからやめろ!と言われた。
「それよりもレイモンドは間に合うのか?」
「ああ、もうすぐここへ到着すると伝令が入ったところだ」
レナの淹れたお茶を飲む。やはりお茶はレナが一番美味いな。
見ればレナも嬉しそうに微笑んでいた。
「それよりも彼女、ずっと祝福がかかっているんだろ?可哀想に年頃の女性が生きづらかっただろう」
「バカな奴だな。彼女の素晴らしさは私だけが知っていれば良い。変に他の男に見初められたら厄介ごとが増えるだけだからな」
「いや・・それにしても・・」
「現に子爵は彼女に変な婚約者を当てがった。本来ならば死に値するが、その馬鹿(男)は義妹に熱を上げているからな。良かったよ」
私の笑顔がよほど怖かったのか、奴とレナは無言になった。
レナは元々私の専属侍女だったのだが、私がフローラに祝福を与えてしまい慌てて子爵家へ送り込まされたのだ。
次期公爵夫人になるために、この国の女主人となるための教育をレナに任せたのだ。
レナの教育のおかげかフローラは申し分のない立派なレディとなった。
「サン、レイモンドが到着したよ」
「遅くなってすまない」
タイミングよくレイモンドが部屋へと入って来た。その手には領地から持ってきたある物が箱に収められた状態でテーブルの上に置かれた。
私と王太子は中を確認するとレイモンドを労った。レイモンドは支度があるからと直ぐにその場から下がると箱の中を再度覗いて見る。
「まさか公爵家の秘宝をこの目で見る日が来るとは・・」
「そうでございますね。私も話では聞いておりましたが、実際に見たのは初めてですわ」
レナも同じように覗き込む。
「これで準備は整ったな。レナ、フローラを呼んできてくれるか?」
「かしこまりました」
そう言ったレナは少し、いやとても嬉しそうに隣の部屋へと歩いて行った。
「本当にこれで・・」
「ああ、これは血を操ることが出来る我が一族にしか・・いや、父上と私にしか扱えない物だ」
そう、本家の直系男子のしかも長子にしか扱えない秘宝。
「お前に番が現れて本当に良かったよ・・」
王太子の言葉に改めて自分もそう思った。もし先ほどの言葉通り養子を取っていたらこの秘宝を扱える者が途絶える事になる。
まぁフローラと出会わなければ一族の遠縁から妻を娶っていただろうが・・
「あの時、レビィ領を訪れた幸運に感謝しているよ。でなければフローラと会う事も、祝福を与える事も出来なかったからね」
「・・一族会議では反対されたと聞いたが・・結果オーライだな」
「サディル様、フローラ様のお化粧直しが済みました」
やけに時間がかかったな、と思いながらフローラを出迎えるために立ち上がった瞬間・・
「綺麗だ・・」
と思わず口から出てしまっていた。
公爵家でも綺麗だと思ったが、さすが王家の侍女たちだな!と感じずにはいられないほどの腕前だった。
「ありがとうございます。サディル様」
褒めると今だに頬を染める顔がまた愛らしく、ここが公爵家であればと思わずにはいられない。
もし公爵家だとしてもレナとザーラに邪魔されるだろうが・・
「ではそろそろ行こうか」
「はい、よろしくお願いします」
左肘をフローラの前に出せば右手を軽く添えた彼女の手を、離れないように自分の体と腕に挟む。
さあ君を私の妻にするための戦いの場へ行こう!




