十一 公爵家の夜会で 六 サン目線 二
「申し訳ありません、リーナ帰るぞ」
「嫌です!何故私が帰らなければならないのですか!悪いのはお義姉さまの方です!!」
親の言葉すら耳に入らない女が、何故公爵家に相応しいと思えるのか・・
義娘を注意する父親
我が娘を擁護する母親
自分の非を認めず主張する娘
婚約者が別に居るのにその義妹に執着する男(これは俺にも原因があるが)
「やはり臭いな」
「お願いです!私の話を聞いてくださいませ!これは私では無くお義姉さまに言われて・・」
これ以上聞きたくもなくその場から離れようと踵を返すとタイミング良くウィルが声を掛けてきた。
「サディル様、ザーラより連絡がありお迎えをと」
私はウィルの言葉に気分を良くしその場から立ち去ろうとした。が
「お待ちくださいませサディル様!!」
「私の名を呼ぶなと言わなかったか?」
「うっ・・」
私はそのままその場から離れ、フローラが支度している部屋(公子夫人の部屋)へと急いだ。
フローラは私の番で祝福を与えた人だが、その事を当の本人に伝えてはいない。
屋敷の皆もその事は承知していて今もザーラを筆頭にフローラを次期公子夫人として扱っているだろう。
ザーラも今はまだ私の専属侍女だが、フローラが嫁いできた後はフローラの専属になる予定だ。
「ザーラ様も」
「ザーラとお呼びください」
「いえ、それはさすがに無理です!」
踊る心を抑えフローラの居る部屋の前まで来たが楽しげな声が扉の中から聞こえてくる。
そして微かだがフローラの香りが・・
フローラの香りを堪能しつつも気持ちを落ち着かせていると
「サン?中へ入らないのか?」
痺れを切らした護衛のウィルが声を掛けてきた。
私は堪能を邪魔したウィルを睨むと
「こういう時はお前がノックするのではないのか?」
「えっ!そうですか?そうですね!」
ウィルは思い出したかのように頷くと扉をノックし、扉を大きく開けた・・
一言で言えば 美しい だった。
ザーラを筆頭に我が公爵家の侍女たちに磨き上げられたフローラは名前通り華だった。
ザーラに言わせると時間も無くこんなもので満足されたら困ります!!と言っていたから、フローラ本来の美しさなのだろう。
フローラから漂う香りも容姿に相まって私の思考を奪っていく。
「こんなサンは初めてだな」
「そう?初めてフローラ様に会った時も同じ顔をしていらしたわよ」
後ろでコソコソ話している護衛と侍女を無視しフローラを凝視する。
「ブラッド公子様、この様な素敵なドレスありがとうございます」
「いや、とても良く似合っている。さあ、行こうか」
私が左腕を差し出すと そんな恐れ多いです!! と困惑していたが半ば無理矢理フローラの手を掴むと、フローラは顔を赤くしながらオタオタしていたがそんな姿も愛おしく見えてしまう。
会場までの廊下も普段なら長く感じたがフローラと共に歩いているとあっという間に着いてしまう。
会場の扉の前で一旦足を止める。いや、フローラの足が止まった。私はフローラの顔を見るとフローラも私を見つめていた。そして私の腕から手を離すと
「私には婚約者がおります。このまま公子様と一緒に入場すれば要らぬ噂を呼ぶでしょう」
そう言いながら私から数歩下がろうとした。
そんな彼女の腕を掴み引き寄せると、私の左腕を掴ませた。当然フローラは驚きながらも手を外そうとする。
「我が家の夜会で君は義妹からの嫌がらせでドレスを汚されてしまった。しかもそのドレスは君の手でリメイクした物だったと報告を受けている。間違いないかい?」
フローラは驚きながらも頷いた。
私はレビィ子爵家を探っていた事は内緒にし夜会で耳に挟んだという事にした。
「我が家で起きた事は責任を取らせてもらう。それに今夜の私にはパートナーがいないんだ」
そう言いながらフローラの右手をすくい軽く手の甲に唇を当てながら
「今夜の主役でありながらパートナーも見つける事が出来ない哀れな私に、救いの手を差し伸べてもらえないだろうか」
「そ、そんな事を言われたら、断れないじゃないですかー」
「そう言ってもらえて安心した。今夜は遅くまで付き合ってもらう予定だから宜しく頼むよ」
無理やりとはいえ言質は取った。
ここからの時間は私のパートナーだが、今夜招待したのは殆どが我が一族だ。
今夜を機にフローラは私の真の番と認めさせる。
「では行こうか我がパートナー(番)殿」
「私で良ければ・・よろしくお願いします?」
「ふっ!!あはははは!なぜ最後が疑問系なんだい?」
彼女の言い方があまりに可愛すぎて、我慢も出来ずに笑ってしまった。
こんなに笑う事など無い私にウィルもザーラも、扉の前に立つ者たちも驚いた顔で私を・・私たちを見ていた。
もちろんフローラも。
「そ、そんなに可笑しかったですか?」
顔を赤くしながら聞いてくる君が可愛くて、愛おしくて思わず抱きしめたくなったが背後からくるザーラの圧が強すぎて抱きしめる事は諦めた。
「君は不思議な人だな」
私の言葉にえっ?と首を傾ける。
その仕草も愛おしくて堪らない私の番・・
「いや、宜しく頼むよパートナー殿」
そう言い終わると無意識に彼女の頬へキスしていた。
「いや、フローラ」
彼女の顔がリンゴのように赤く染まる。
可愛い、本当に一日でも早く君を私の物にしたい・・
私の左腕に彼女の右手が触れると、何故だか涙が出そうになった。
扉が開けば一族の者たちへ正式にお披露目となる。
「さあ覚悟は良いかい?フローラ」
私の言葉に力強く頷く彼女に微笑むと、一緒に一歩を踏み出した。




