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世界人口・33554432


ゆうべ、イヤな話題を聞かされた。

そのせいか寝覚めもイマイチだ。


教室では秀治・アイトに加えてツトムンガーも居る。

ただでさえ備品だらけの教室が、少し狭くなった気もする。


洗面を済ませ、昨日炊いたゴハンを握り飯にする。

ムツミが用意してくれた海苔を巻いて、頬張る。


女子3人が合流しても、お互いに口数も少ない気がする。

なんとなく、ピリピリした空気だ。


「みんな、コンビニへ行こう!」



空気を気にせず、秀治が呼びかける。


「買い出し?だったら”マルキング”に行こうよ」

「なんですか、それ」

「スーパーだよ。安いよ?」

「甘いねムツミ。幾ら安くたって店員がいないし、閉まってるだろう」



アイトが言い放つ。

ムツミは、むっとしてる。


ゆうべは、アイトがムツミを擁護してたように思える。

だからムツミはいま”なんで?”と思っただろう。


でも俺には判る。このアライグマは根本的に、空気を読まないタイプだ。

だから態度も支離滅裂。友達いないのも当然だ。


そこで俺は、空気を読んで発言する。


「スーパーマーケットの方が広いし、人が居るかもしれないだろ」

「そうだよね!」



ムツミは、同調してくれる。


「強奪」


「莉々ちゃん、それは人として問題があるよ」

「よお秀治、人の面子にこだわってる場合か?シャッターこじ開けて確保しようゼ」



ツトムンガーは、空気を台無しにする。

それに秀治も、空気を読めてない。

莉々ちゃんは”強奪しよう”なんて言ってないだろ。


すでに他人が”強奪なさってるかも”。

そんな心配の表明だろ。空気読んでやれよ。


「どっちみちさ~、行くんでしょ?言い合ってないで出かけない?」



ミラノが不機嫌そうにまとめた。

こうして俺たちは、なんか険悪な空気をまとって出発する。



校門を出る。7人パーティーだ。


先頭から見ていこう。


◇秀治……大きな災害対策バッグを装備。

◇ミラノ……お洒落な服。



この2人がツートップを形成。


◇ムツミ……ジャージ。段ボールを装備。

◇莉々……謎めいた黒服。小さな手提げカバンを装備。

◇俺……100万ゴールドの男。買い物ならお任せ。

◇アイト……背中にリュックを装備。リュックが本人よりも目立つ。



中央集団は、人数だけ充実してる。


◇ツトムンガー……問題児。バールのような物を装備。



最後方に、いちばん戦闘力ありそうな男がいる。不吉だ。



静かなバス通りを前進する。

目的は、食糧の確保。

フィールドは無人。歩道でも車道でもお構いなく、散開し放題だ。


遠巻きに、犬が見える。

野犬かペットか判らないけど、俺らに近寄ろうとはしない。

パーティーを組んでると、それだけで戦闘を回避できるらしい。


しばらく進むと、先頭でミラノが大声をだす。


「大変だよムツミ~ッ、マルキングが」


「なんですかマルキングって」

「スーパーだよ、ナヲキもう忘れちゃった?」



ムツミの辛辣なツッコミよりも、眼前に見えてくる光景がショックだ。


通り沿いの、スーパーの大きな窓が、すべて割られてる。

これでは入口のシャッターも意味が無い。


スーパーは、もう荒らされてた。

品物もほとんど見当たらない。しかも犬が店内をウロウロしてる。


「どうやら、遅かったか」

「強奪されたのかな」

「まあ、見ての通りだな」



食糧の奪い合い。もうそんな段階まで荒れてたのか。


「どうする?」

「諦めるわけにはいかない。このままじゃ全員、飢えてしまう」

「でも、この様子だと、他のお店も……」


「甘いね。君たちは都市の観察ができてないよ」

「黙れアイト。お前の妄言に付き合ってる場合じゃないんだ」


「じゃあ説明は省くよ。街はずれに行こう、集合住宅が見当たらない所へ」

「なら、俺に心当たりがあるゼ」



ツトムンガーは、ここでパーティーの先頭に出ていく。

俺らとしても、帰る訳にはいかない。ひたすら前進する。



かなり歩いた。バス通りは途中で曲がり、県境の方にのびてる。

俺らは直進する。畑があって、住宅はまばらになってくる。


「いい風景だね。土と道路、農地と家屋」

「どこがいいんだよ。おいアイト、お前なに企んでるんだ」


「まあ、色んな要素があるんだけどさ。ナヲキ、今どこも人が減ってるだろ?」

「それは当たり前だ」


「人だけが消えた。つまり消費者が、まず最初に激減してるんだよ」



なにが言いたいのか、俺には判らない。


「ここだ。前にバイトした事があるんだゼ」



先導してたツトムンガーは、足を止める。

広い駐車場に大型トラックが停まってる。

敷地の奥に、シャッターの閉まった倉庫が並んでる。


「いいね、たぶんここはパラダイスだよ」

「……物流センターか」



秀治は感心した声を出してる。

俺らは倉庫に近寄る。通用口みたいなシャッターの前に来る。


「閉まってるじゃ~ん」

「まあ、任せな」



ツトムンガーは、手にしたバールのような物で、シャッターの最下部をグリグリする。

開け方を知ってるのか?


「くそっ開かねえ。おりゃ」



ツトムンガーは屈んで、力任せにシャッターを引き上げた。

ガラガラっと開く。中は暗いけど、大規模な食品倉庫だとわかる。


「開いてんじゃ~ん」

「こじ開けたんだよね」


「うわー、広いね」

「すごい、ここは全くの手付かずだ」


「強奪」

「ああ、ここなら取り放題だゼ?」


「ツトムンガー、そうじゃない」



俺は、莉々ちゃんが手提げバッグから、手帳を出してるのに気付いた。

空気を読んで、ムツミにも声をかける。


「強奪じゃなくて、後払いにするんだろ、みんなの分」

「わかってるじゃない、ナヲキ」



ムツミは笑顔。目がキラッと光ってる。


「よし、食べられる物を集めよう。後でここに集合して、商品名をチェックだ」

「まかせて」



やっと莉々ちゃんの言い分が伝わった。

秀治も俺らも、大量のパレットに乗った食品を、物色して回る。



_____________________________________




7人がかりで集めた食糧。

それは倉庫の膨大なストックからすれば、ごく(わず)か。

なので、厳選された食品だと言える。


「ジャガイモお徳用、12袋」

「はい」


「甘くてまろやか人参、12袋」

「はい」


「たまねぎの王様シャキシャキ食感、12袋」

「……はい」



ムツミが真面目に商品名を読み上げる。

莉々ちゃんが手帳に書き込む。

前にもあったな、このやり取り。


「何でもトッピングしてちょうだい素うどん、30袋」

「……はい」


「グリンピースが自慢の可愛い角切りお野菜セット、30袋」

「……はい」


「アライグマ印の雑煮そば、野生に勝てない旨さ!30個」

「……はい」



アイトが一瞬、ムッとした顔になる。

俺らは、ムツミと莉々のコンビ芸をじっと見守る。


「クラシックなミルクチョコレート、15箱」

「……はい」


「雑炊チョコひと口サイズ、やみつきになっちゃうミステリアス風味、1個」

「…………はい」


「ジュゴンの涙とろとろウエハース、昼下がりのあま~い誘惑、1個」

「…………はい」



ミラノが目を閉じて、満足げに微笑んでる。

誰が選んだ品物か、すぐ判る。


ムツミはちょっと咳込んで、動揺しつつも読み上げを続ける。

他にもビスケットやポテチ、チーズや燻製、持ち出す品物はまだまだ残ってた。



大収穫だ。リュックや段ボールがパンパンになってる。

倉庫のシャッターを下ろしておく。動物に荒らされたら困る。


「みんな重いだろうけど、学校まで歩こう」

「なーに、大した距離じゃないゼ」



野菜満載の大型リュックを背負い、ツトムンガーは余裕の態度だ。


「こ~ゆ~時って、なぜか重くても平気なんだよね~」

「わかる、お買い物の帰りって気分が上がるよね」



なにしろ食糧が確保できたので、みんなご機嫌だ。

バス通りまで戻ってくる。すると、犬が寄ってきた。


大きめの犬が2頭。低く唸ってる。

こいつら、7人パーティーに襲い掛かるつもりか?


「まずいな」

「逃げる?」

「でも、食べ物が重くて……」



これ、意外とシャレになってないかも。

俺はアイトと、顔を見合わせる。


◆感染症が心配だ!



犬に本当に噛みつかれたら、どうするんだ。

ゲームじゃないぞこれ。


ツトムンガーが前に出る。

武器はバールのような物。でも野菜を大量に背負ってて鈍重だ。


◆ツトムンガーの攻撃!

◆シベリアンハスキーAはひらりと回避した!

◆ツトムンガーは1歩前に出た!

◆シベリアンハスキーBは逃げ出した!

◆シベリアンハスキーAは逃げ出した!



……地味な戦いだった。

必殺技が出たりもしない。

でも、おかげで無事に済んだ。


「助かったよ、ツトムンガー」

「どうやら帰りのほうが、危険らしいな」



学校まで戻ってこれた。けっこう疲れた。

食糧調達は1日がかりだったけど、これで昨日よりも安心できる。

みんなでポテチなどお菓子を食べて、早寝する事にした。


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