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世界人口・16777216


朝、空腹感を我慢してる。


教室にはカレーの匂いが漂ってる。

俺も野菜を切って手伝った。


完成すると、ムツミたちが盛り付けてくれる。

レタスとトマトのサラダもある。

マヨネーズでもドレッシングでも、好きに味付けできる。


「やったな、食糧事情は向上した!」

「うん、おいしいねっ」



カレーライスの出来は上々だ。

生野菜は少々しなびてるけど、そんなの些細な事だ。

ツトムンガーは黙々とスプーンを口に運び、もうおかわりに入ってる。


業務用冷蔵庫で冷やした水。

デザートには苺が乗ってる卵ケーキ。

遅い朝食が出来上がるまで、我慢した甲斐があった。


「ごちそうさま」

「あー、食った食った」


「これからどうする~?」

「そうですねえ……」



俺は満腹で、頭が働かない。元からバカだけどな。

あとなぜか時々、敬語で喋るクセが付いてきた。



「文化祭をしよう!」

「……」



秀治が、いきなり委員長ぽい発言をなさりやがった。

みんな反応が薄い。

でもツトムンガーだけ乗り気みたいだ。のっそり立ち上がる。


「いいじゃねーか。腹が膨れたら、次は文化だよな?」

「え~、その理屈おかしくない?」



ミラノは、露骨に反感を持ってるみたい。


「学校行事ってイヤなんだけど。押しつけがましいっていうか~」

「いや、押し付ける積もりは無いけど」


「あたしはパス。いいよね~?」



そう言って、隣の教室へ行こうとしてる。

フルートの練習でもしたいのかな。


その時、ツトムンガーは無造作に歩み寄る。

黒板の前で、ミラノのゆく手をさえぎる。


ドンッ……


まさかの黒板、ドン。


「言葉に惑わされんなよ。一緒に遊べば、それが文化祭だゼ?」

「……ッ!」



ツトムンガーに遮られ、ミラノは至近距離で睨み返してる。

しばらく睨んだあと、プイッと顔をそむける。ちょっと赤面してるような。


ええと、俺ら、何を見せられてるんでしょう?

隣を見ると、ムツミも俺を見てくる。びっくり顔だ。



___________________________________________




食器を片づけた後、俺らは外出する。


出かけるのは6人。

ミラノだけ学校に残ってる。


「僕も反省したよ。文化祭なんて言い方は不適切だった」

「今日は遊ぼう、って事だよね?」


「そうなんだよムツミ。最近は負担が大きかったし、息抜きも必要だと思ったんだ」

「で、どこに行く?」


「近所に店があるよね、少しだけ覗いてみようか」

「賛成」



まず行ってみたのは、ワンコインショップ。

俺は初めて入ったけど、えらくカオスな品揃えだ。


日用品、雑貨がびっしり揃ってる。フライパンまである。

しかも上の階に行けば、もっと他の物もあるという。


「ほとんど荒らされてないね、良かった」

「綺麗」

「食糧と違って、すぐ欲しいとは限らないからね。これは穴場かもね」



ムツミと莉々は、買い物カゴを装備して向き合って、士気を高めあってる。

どうやら本格的に探索するようだ。


「これ、頼めます?」

「いいよ、ほらカゴに入れて!」



俺は、レジの近くにあった風船ガムをムツミに預ける。


「女子は、ここで粘りそうだね」

「そうだな。ちょっと隣の雑居ビルも見てみよう」



秀治・アイト・ツトムンガーと連れだって、隣の店を覗く。

そこは、オモチャ屋だ。


「店内は、少し荒れてるな」

「誰かがカチ込んだみてーだな。入口、開いてるゼ?」



入ってみるとまず、プラモデルの箱が目に入る。

床から天井まで積み上がった古今の模型たち。埃をかぶってる。


「なかなかの品揃えだな」

「これはアーマードパンツァー・ガンディムじゃないか」

「レトロな1/72スケールキットも、こんなに」



玩具はプラモデルだけでなく、子供用プールとかも色々ある。

アイトは店内をきょろきょろ見渡し、階段から上階へ登ってる。


秀治とツトムンガーは、モデルガンを手に取って相談してる。


「護身用に持っておくべきかな、何丁か」

「獣には効かないだろ、逆効果じゃねーか?」

「……」



俺は階段を上がり、2階へ行ってみる。

するとアイトが、棚の前で背伸びしてる。

壁をよじのぼって脱走しようとしてるアライグマみたいだ。


「どうしたん、アイト」

「ナヲキ、あれ取って」


「これ?」

「そうそう」



棚に積み上がってるのは、平たい箱入りのボードゲームだ。

アイトが欲しがってたのは……


「昭和の特急ルーレット・日本縦断ぶらり旅DX」

「これ激レアだよナヲキ、完品を見たのは僕も初めてだ!」



やけに興奮してる。

俺には価値がわからん。


「じゃあ、ムツミ達に見せてメモッてもらう?」

「もちろん。いやあ貴重な出会いだよこれは!」



こうして、オモチャを色々と物色した。

欲しいものは”後払い”として、いくつか拝借してく。


「やっぱり実店舗って、いいもんだな」

「僕も通販ばかり頼ってたから、目からウロコだったね」



高校の近所にあるオモチャ屋は、知ってるようで未知のスポットだった。


俺ら男子は、オモチャで手が塞がった。

それで、ムツミと莉々がワンコインショップから出てくるまで、ぼけーっと待った。


女子ふたりは、ビニール袋にありえない程の雑貨を詰め込んで、出てきた。

そこで俺らのプラモデルとかを、莉々ちゃんメモに追加した。


「さて、次はどこ行くの?」

「わくわく」


「いや、今日は帰らないか?荷物も増えたし」

「えーっ、せっかくノッてきたのに」

「無念」



女子ふたりは不満そうだが、俺らは学校へ帰還する。



教室に入る前から、楽器の軽やかな音色が聴こえる。

俺らに気付くと、ミラノは演奏を止めてこっちを見る。


「ほう、フルートかい。お上品だな」

「……ふんっ」



ツトムンガーとミラノが、また妙な空気になってる。


「オモチャ屋で、ミニプールとか風船とか、いろいろ調達してきたよ」

「な~んだ縁日みたいじゃん、コドモ騙しってやつ?」



とか言いつつ、ミラノはころっと態度を変えてる。

莉々と一緒に早速、風船を膨らまして遊びだす。


「子供用プールか。そういえば、水浴びしてーな」

「入ってみれば?たぶんパンクするけど」



ツトムンガーが、ミニプールに浸かる姿を想像してしまう。


女子たちは真顔(まがお)で、風船を咥えたりしながら、顔を見合わせてる。

そしてムツミが、俺たちの方を向く。



「実は、宿直室にシャワーがあるんだよ」

「……えっ、初耳なんですけど」


「あたしたち使ってたんだよね~。内緒で」

「そこは情報共有したかったよ?なんで女子専用なの?」


「覗き」

「覗かないから、そんな事しないから」


「じゃあ、時間帯を決めて僕たちも使おう。このままじゃ不衛生だし」



思わぬきっかけで、俺ら男子も交代でシャワーを使える事になった。


それからの時間は、プラモデルを作ってのんびり過ごす。

プラモの手触り、接着剤の匂いを懐かしむ。

シャワーの順番待ちのついでだ。水だけでも浴びればスッキリできそうだ。


女子たちは、キャッキャウフフしてる。

教室に漂う風船が、だんだん数を増やしてる。

ミニプールに水が張られ、そこにもミニ風船がぷかぷか浮かんでる。


すっかり遊び場になった教室で、夕食をとる。

温めなおしたカレー、これがまた旨い。


チーズやサラミをつまみ、腹が膨れたらジュースを凍らせたシャーベットを食べる。

秀治が調達した缶ジュースを、冷蔵庫で凍らせたものだ。



食後、ローソクを並べて灯した教室。

女子たちはパジャマに着替えてる。


「このゲーム、ちょっと遊んでみないか」



アイトが提案する。持ち出したのは、アレだ。


「昭和の特急ルーレット・日本縦断ぶらり旅DX……」


「ぶらり旅って、面白そう」

「寝る前だし、軽~くやってみる?」



女子の反応が良さげだ、ゲーム盤やコマを広げてみる。

日本列島をスゴロク形式で巡るようだ。


「みんな東京から出発するの?」

「東京一極集中か、歪んだルール設計だな」

「おいおい、時代性も考慮してくれよ秀治。昭和だよ?」



ルーレットを酷使して、順番を決めて、1番手になった莉々がルーレットを酷使する。


「あっ、あっ、莉々、そーっと回して」

「何いってんだアイト、ルーレットは豪快に回すモンだゼ」

「超特急」



2番手になった俺も、調子に乗ってルーレットを酷使する。


「はああっ完品が、完品が」



さらに全員で酷使して、東京からコマを移動させた。


「あたし長野だ。莉々も一緒だね~」

「うんうん」

「俺も秀治も長野か。おうルーレット壊れてねーか?」


「そこで、ライバルカードを引くんだよ」

「このカードか。おりゃ」



◆長野にいないプレイヤーは、神戸までひとっ飛び!


「なんだこりゃ。お前ら瞬間移動かよ」

「ねえ、これ特急要素、薄くな~い?」

「昭和だからね、仕方ないよ、昭和だから」



アイトがいろいろ必死で、面白い。

これが文化祭と言えるかは、わからん。


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