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世界人口・67108864


朝おきると、身体がバキバキになってる。

筋肉痛ってやつか。スプレーかけたんだけどな。


教室を出て、廊下の水道にいく。

洗顔とか歯磨きとかは、ここで済ませてる。


「おはよ~」

「おう、おはよ」



ミラノが来る。パジャマを着こなしてる。

その後ろからムツミも来る。パジャマ姿だ。

さらに莉々も来る。ぶかぶかのパジャマ姿だ。

女子3人も顔を洗いだす。


俺の隣りでムツミが洗顔してる。

顔をタオルで拭って、声をかけてきた。


「ナヲキ、調子はどう?」

「腕の筋肉が痛っ、いや、まずまずの調子かな」



するとムツミは、にっこり笑ってる。


「筋肉痛は、パワーアップした証拠だよ」


「そういうもんかな?」

「うん。だから自分を褒めてあげないと」

「ふうん、その発想は無かった」

「先輩の受け売りだけどね」



ムツミはほんの少し、寂しそうな顔になる。

でもすぐ、シャキッとしてる。


俺は歯磨きを済ませ、先に教室へ戻る。

それにしても筋肉痛を喜ぶ文化もあるのか。帰宅部の俺にはプチ驚きだった。



教室で6人が集まる。

女子たちも各々着替えが済んでる。簡単な朝食。


さて、今日はどんな活動をするのか。

相談しようかって時、教室に男が入ってくる。


「……ッ!」



俺はびっくり、みんなもびっくり。

男はいかつい体格で、Tシャツの上にポケットだらけのジャケットを着てる。


片手には、工事現場にあるような発電機をぶら下げてる。

その異様な姿、とても高校生には見えない。

でも、顔は覚えてる。


「ツトムンガーじゃないか」



秀治が言うと、男は不愛想な顔を、ちょっとだけ歪める。


「その呼ばれ方、好きだゼ?」



_________________________________




教室の、出入口の近く。

机にどっかりと腰掛け、ツトムンガーは俺たちを見渡す。


「まさか6人も残ってるとは、意外だったゼ」


「ツトムンガー、今まで何してたんだ?」

「自宅待機ってやつだ。だが今朝、俺は天涯孤独になった」



家族が消えてしまったのか。


「だから良かったら、俺も仲間に加えて欲しい」

「それは勿論、歓迎するよ」



元はと言えばクラスメイトだし、俺も特に文句はない。

でもやっぱり、異様なフンイキだよな。アイトも女子たちも、その場で(すく)んでる。


「ところで手に持ってるそれ、インバーター式の発電機だね?」

「おうコレか、持ち主が居なかったから、拾ってきた」


「見せてくれないか、たぶんガソリン燃料で動くと思う」

「うーん、燃料はカラッポみてえだが」



ツトムンガーはその機械を振ってる。30kg以上はありそうだけど。


「チャポチャポ言ってやがる。少しなら動くかもな」

「……閃いたよ。早速だけどツトムンガー、手を貸してくれないか」

「ああ、いいゼ?」


「みんなも出かける仕度をしてくれ。うまくいけば人手が必要になる」

「なに思いついたの~、秀治クン」


「これを持っていけば、タッチパネルを復旧させてガソリンが買えるかもしれない」

「え、灯油が欲しいんじゃなかった?」


「作戦変更だよナヲキ、ガソリン発電なら格段に効率が良くなる。つまり」

「つまり?」


「本当に稼働できるかもしれないよ、冷蔵庫」



冷蔵庫と聞けば、俺たちも興味が湧く。

秀治とツトムンガーは教室を出る。みんなで後を付いていく。



7人パーティーになった。

校門を出てしばらく歩くと、目的地に着く。ガソリンスタンドだ。


秀治は給油設備の周りを調べる。

電源コードを伝っていって、接続部から引っこ抜く。

ツトムンガーの発電機に、接続し直してる。


「プラグの規格は合ってる。これならいけそうだ」

「ほう、面白れえこと考えたな」



ツトムンガーは発電機を作動させる。

ブルルルッと騒音が鳴りだす。


「あっ、ランプついたよ~」

「ほんとだ」


「急ごう、燃料は僅かしか残ってない」

「え~、何を急ぐの~?」


「ガソリンを買うんだよ、今しかチャンスないんだよ!」

「へ~そうなんだ~。あたし、お金もってないけど~」

「僕も、一文無しなんだけど」



ツトムンガーが、みんなの前でドンッと手を開く。


「300円だ。使っていいゼ?」



その茶番を眺め、俺は余裕の態度だ。

なにしろ俺の所持金は、100万ゴールド以上だからな。


こんな事もあろうかと、服のポケットに入れてある。

札束から紙幣を抜きだす。使える時に使ってしまおう。

みんなに見せる。見せびらかす。


「ま、キャッシュで3万ゴールドもあれば、足りるかな君たち?」


(うっわーナヲキ君ってリッチなんだね!)



女子たちの歓声が、もう脳内で再生されてる。うん気持ちイイ!


「諭吉」



あっ、莉々ちゃんも万札を出してる。

ヘソクリ持ってたのか。


「へ~これ旧札じゃん。ちょっとレアじゃない?」

「ナヲキも莉々も助かるよ。ツトムンガーもな」



……秀治が、話と現金を、まとめてる。

なんか俺の活躍度、薄まってないか?


それはともかく、タッチパネルが点灯してる。

集めた現金を投入する。これはいける。


「ガソリン容器を持ってきて!その辺にあるだろ」



給油、給油、給油。

見る間にガソリン満タンの容器が、ずらっと並ぶ。


「すげーな。これだけありゃ、いつでもガソリンが買えるゼ?」

「ガソリン買うための、ガソリンなの?」

「世の中ってそんなもんだよね。発電にも電力が必要だったりするし」


アイトが言うと、ツトムンガーは豪快に笑ってる。

アイトはその大声で、首をすくめてる。



大量の容器を、手分けして往復して持ち帰る。

学校の近くで良かった。ガソリン容器は、管理棟の脇にまとめて置く。


秀治は深刻な顔になる。


「ガソリン、本来なら消防法違反なんだよ」


「何いってるんだい秀治。違反だからって、もう取り締まる人も居ないだろ」

「俺らも非常事態だ。誰にも文句は言わせねーゼ」


「それより冷蔵庫だろ?秀治」

「ああ……この形勢なら試してみるか、業務用冷蔵庫」



俺としては冷蔵庫を使えるのが、えらく楽しみだ。

学食の厨房に行ってみる。そしてお目当ての、銀色のでかい冷蔵庫を開ける。


「ぶあっ」



詳細は、伏せておこう。

ホースを用意して、惨状になってた業務用冷蔵庫を掃除する。

ついでに購買部で放置してた生モノを、一斉に処分する。


手がガソリンくさいので、念入りに手洗いもしておく。

女子たちは、部室棟に洗濯機があるとか騒いでる。


ツトムンガー持参の発電機をメインに切り替える。

配線を、厨房にも部室棟にも延長する。

やる事はたくさんあった。7人全員でかかりきりだ。



_______________________________




ムツミ達が夕食を仕度してくれた。

だいぶ手間取ったので、ひとまず食べて寝る流れだ。


「業務用冷蔵庫は稼働できる。燃料もたっぷり確保できた」

「でもさ、ジュースくらいしか入れる物ないんだけど~」


「マヨネーズ」

「調味料が冷やせるよね、助かるよ」


「ハコを用意したんなら、次は中身か?」

「食い物、増やしたいよな」



ツトムンガーは大食らいだ。食べっぷりを見てすぐ判る。

食糧が底をついたら困る。すると次の目的は、だいたい定まってる。



「校内でアンドゥー先生も、探したいけどな」

「それは、そうだけど……」


「よう、消えた奴の心配か?」

「ツトムンガー、そんな言い方しないでくれ」


「誰かが消えたからって、ガタガタ言ってられるのか?」

「おい!」


「だってよ、消えてない俺らだって、もう終わってるかも知れないゼ?」



ツトムンガーは表情を歪める。たぶん、笑ってる。


「何が言いたいんだよ」

「原発だ」


「……」



イヤな気分になる。

俺はそんな話、聞きたくもない。


「お前らも大体、判るだろ?原子炉が暴走してたら周辺一帯、もう終わってる」

「それは僕も考えた。原子炉の停止作業は通常運転よりも、人手がかかる」

「そうだろ。急に兵隊が消えれば、どこも対応不能だ。違うか?」


「どこもって、どこの原発が危ないの~?」

「国内だけで、海沿い中心に何十か所もある原発群、全部だ」


「やめてよ、そんな話」

「ムツミの言う通りだ、もう止めよう。原発に関しては楽観的に考えるしかないよ」



珍しく、アイトが仲裁に入ってる。


「仮に無人でも、自動停止システムが作動してると信じよう。彼らもそこまで愚かじゃないだろ」

「僕もそう信じる事にした。それが結論だ」

「そうか、騒がせて済まねえな」



ツトムンガーは、さっきより崩れた表情だ。やっぱり笑ってる。


「俺だって同じ考えだ。まあよろしく頼むゼ?」


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