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世界人口・4294967296


遠くで、でかい音がしてる。

まだ夜中だろ。眠い。


サイレンの音がする。うるさい……



朝が来た。いまいち良く寝れなかった。

学校いかなくちゃ。面倒だな。


起きて着替えて歯みがいて。

朝めしは、親が用意してくれてる。

レンジで温めなおして……おいレンジが動かないぞ。


このままでいいか、冷めてても食えるし。

朝食は黙々と済ます。



玄関を出てカギをかける。

学校まで歩く、いつも通り。


道を歩きだしたら、犬が飛び出してきた。

おっ出たな。


◆ポメラニアンが現れた!



昨日のゲームを思い出しちゃうね。

すると、もう一匹でてきた。

チワワか。可愛いなあ。


ちびっこい犬が、追いかけあって走り去る。

微笑ましいじゃねーか。


なんか静かで、やたら犬だけ見かける。

いつもは、誰かがリードつけて散歩してるけどな。


川っぺりの土手まで来た。土手をずーっと歩けば高校だ。

土手下の路地で、車が事故って止まってる。


ああ、昨夜のでかい音は、こいつか。

お巡りさんが、自転車を停めて人と話し合ってる。


早く車をどかせばいいのに、変だよな。

でも、俺が首をつっこむ事でもない。



高校の正面玄関に来た。

そこで俺は、重大なことに気付いた。


今日って、祝日だったかも。

だって周りに人がいない。静かすぎる。


ひょっとして俺、取り返しのつかない過ちを犯した?

休みなのに登校するとか、ムダの王様じゃねーか。


とりあえず教室まで行ってみる。

無人だったら、俺の悪い予感が的中した事になる。

ちょっとドキドキして、教室へ。


……4人だけいる。

ていうか4人しかいない。


クラス委員長の秀治。

ルックス系女子のミラノと、一緒にいる莉々。

あと名前を忘れそうな、ええとムツミか。


アイトが居ない。あいつ欠席か。


「お前も来たのかナヲキ、大変な事になったな」

「は?」



秀治は俺に声をかけてきた。

教室の真ん中でスマホ片手に、備品のPCも操作してる。


「まだ状況が把握できない。もっと調べないと」



忙しそうにPCの画面をスクロールさせてる。

モニターに映った文字が、ちょっとだけ見える。


◆同時多発交通事故、対応不可能

◆深夜に起こった謎の人間消失!?

◆病院に来ないで・医療スタッフ大量失踪



ああ、やな感じのニュースばかりだ。

知りたくもない。


「バスで来れたけど~?えっ電車止まってるの?大変じゃ~ん」



呑気なかんじで喋ってるのは、ミラノだ。

机の上に腰掛けて、スマホで通話してる。

すぐ隣に莉々ちゃんが立ってる。


「行方不明って、アヤノも言ってた。うんお父さんだって~」



なんだか知らないけど、秀治よりもミラノの方が、情報に強そうだな。

女子のネットワークで何でも判りそうだ。


「もう電池やば~い、それでさ、もしもし?ああもう切れちゃったよ。機種変したばっかなのに使えな~い。停電してるんだっけ?もう充電できないじゃん」


「これ」



莉々ちゃんがミラノに、自分のスマホを渡そうとしてる。

可愛いなあ。


「どうやら、本来なら緊急事態宣言が出されるはずだったようだ」

「え~緊急事態~?」

「うん、しかし首相が既に失踪してる。防衛相や主要閣僚の大半も」



秀治が説明してる。何のことやら、さっぱりだ。


「全容は把握できないけど、自衛隊、警察、保安隊が臨時体制にシフトしてる。海外からの攻撃を想定してるみたいだ。一斉上陸や長距離ドローンのような攻撃だね」

「それって、戦争になるって事?」

「それじゃ、今日は休みなのか」


「おいナヲキ、クラスのほとんどが登校どころじゃないんだよ。人が消えてるんだ」

「ナヲキ君って、何にも考えないタイプ~?」

「まあね」



わかんないけど、全国が超パニックになっても動じない。

俺って、カッコイイ。


「ただ、戦争は起こらないはずだから安心して、ミラノ」

「ホント?」


「欧米やアジア、中東などの主要国の反応をざっとリサーチしてみた。どこも日本と同様に混乱してる。つまり人が消える異変は、世界中で無差別に起こってる」


「無差別テロって怖くな~い?」

「うん、うん」


「いや莉々ちゃんも安心して。これほどの規模で一斉にテロ活動ができる組織なんて、存在する訳がない。それに暗殺とかじゃなく、人が消失してるんだ。これは戦争ではない、また自然災害だとも考えにくい。交通事故ばかり起こる事に説明がつかないから」



交通事故か、そういえば土手で見かけた。

あの事故って、人が消えたから起こったのか。


「人が消えて、無人になった車がぶつかって、交通事故になったのか」

「ああ、ナヲキも理解できたようだね」

「運転手さん消えたらバス走らないし、困るんだけど~」

「うん、うん」



理解できた、とは思えない。

人が消えるってのが意味不明だ。何の実感もない。


ただ、教室は閑散としてる。

来るはずだったクラスメイトがいない。


来てるのは秀治とミラノ、莉々。

あと……


「さて、職員室にいかないと。僕の無遅刻無欠席を確約させないとね」

「秀治クンってマジメだね~。あたし学食にいかないとお昼ないの。莉々も行く?」

「うん」



3人は教室から出ていく。

こうなってしまうと俺も、ここに残ってる意味はない。


でも、教室の片隅に、ムツミが座ったままだ。

どうしても気になってしまう。


なんだか塞ぎこんでるみたいだ。

昨日、見かけた時とはずいぶん違う。

たぶん、誰かが消えたんだろうな。


「ムツミ、どうしたの?」


「なんでもない」



俺の方を見ようともしない。

机に、視線を落としたまんま。手をぐっと握りしめている。


しまった、と思った。

秀治たちと少し喋ったから、調子に乗ってた。


人に話しかけるのって、俺は苦手だ。

こんな雰囲気になるのがイヤだから、会話を避けてるんだ。


たぶんムツミは、身近な人が消えて、悲しんでるな。

何と言えばいいのか。


「あの、大変だよね」

「……」



もう言葉が出てこない。

俺はそのまま、教室を後にした。



___________________________




学校の廊下を、うろついてみた。

他に誰かいないのか?居ないね。


「大変だよねえ……」



独り言をつぶやく。

ああ独り言って楽しい。誰も傷つけない、俺も傷つかない。


これ以上、学校に居ても仕方ない。帰ろう。



登校してきた道を、そのまんま戻る。

すると確かに、いつもとは違う気もする。


いつもなら開いてるパン屋が、シャッター閉めたままだ。

通りを走ってる車が、やけに少ない。


土手の事故車が、まだ片付いてない。


犬が走ってる。まだ走ってる。

ポメラニアンとチワワがイチャコラしてる。お前ら元気だな。



帰宅する。

両親は、まだ帰って来ない時間だ。

でも何となく、不穏な気分になってくる。


念のため、職場に電話してみようかな。

何の気なしに家の電話を使おうとする。


おっ使えない。液晶表示も切れてる。

そういえば停電とか言ってたな。


これは不便だ。後でシャワー使うつもりだけど、お湯も出ないか。

電子レンジも使えない。ふつーのパンでも食べるか。


まあ、今は電話だ。スマホで親の職場に……

ええと電話番号を手打ちしないと。面倒だな。

操作しようと思ったら、着信が来てた。アイトからだ。


つい、そっちに電話してしまう。


「待ってたよナヲキ、何度もかけたんだよ」

「どうした?学校に来なかったな」


「両親が消えてね」


「……アイトの所もかよ」

「うん。捜索依頼だの親戚に連絡だの、雑事に追われたよ。僕こういうの大嫌い」


「そうか、大変だな」

「それよりナヲキ、これはチャンスだよ」


「は?なに言ってんだよ」

「その言葉、そのまま君に返すよ。チャンス以外の何物でもないよ」


「わかんねーよ」

「わかんないなら説明しよう。まだ僕は用事があるから、明日でどう?」


「明日って」

「学校で会おうか。校門前なら事態がどう転んでも間違いないね。それじゃ」



言うだけ言って、電話を切った。

なんなんだよ。



アイトが言った事は、まるで判らない。

でも人が消えるって事が、実際に起きてるんだな。


改めて、両親の職場に電話してみる。


……つながらない。

回線がどうとか、機械みたいな音声でずっと流されてる。


あれこれやってたら、部屋は暗くなってきた。

照明もつかない、スマホも充電できない。


うーん、とりあえず寝て待つか。

夜中になれば帰ってくるだろう。


アイトの言葉も気になる。

明日も学校、行ってみるか。


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