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世界人口・524288


芳香剤の匂いが充満してる。

教室だけでなく廊下もだ。洗顔を済ませて、ひとまずみんな集まってる。


「引っ越すのはいいとして、どこに行くか決まってないよね~」

「例えば市役所とか、集会所とか?」

「この学校より不便かな、仕方ないのかな」



女子たちも、引っ越しには納得してくれてる。

やっぱりクサイのは困るよな。


秀治が提案する。


「僕の案は、まず物流センターに移動して、そこを中継点として探索してみる事だ」


「妥当なプランだね。僕も悪臭から逃れるなら、まずあそこで一泊しようと思ってた」

「そうだな、シャッターがあるし安全も確保できるゼ」


「あの倉庫って、食べ物もいっぱいだよね」

「ああ、カップ麺みたいな保存食なら、幾らでも補給できるね」

「すると、食糧は持たなくても平気かな?」

「軽くて済むほうが、ラクじゃな~い?」


「ツトムンガー、発電機だけは、できるだけ運びたいんだ」

「お安い御用だゼ。ただガソリンを全部となると、ちっとばかし骨が折れるな」



発電燃料に使ってるガソリンは、まだ大量に残ってる。

全部もち歩くのは、たぶん7人がかりでも重労働だ。


しかし、だ。

俺には100万ゴールドという切り札があるんだよな。

ここはアピールしておくか。ポケットから札束を出す。


「ガソリンなんて現地調達すればいいじゃない?ほら、いつでも買えるよ?」

「ナヲキ、また無駄遣いする気なの?」



ムツミに叱られた。


「学校にガソリンを放置するのは反対だ。消防法に抵触したままなのは良くない」



秀治に真面目な反論をくらった。

これには俺も凹んでしまう。


「だってさ、ちょっとでも軽くした方がイイと思ったからさ……」


「それじゃ、リヤカーを使っていく?」

「おうムツミ、リヤカーがありゃ全部はこべるゼ。でも何処にある?」

「たしか、部室棟の脇にあったと思う」

「へ~、これで解決じゃ~ん」



ムツミが丸くおさめてしまった。

俺は札束を、そっとポケットにしまう。



__________________________________




玄関前に、リヤカーを移動してきた。

全員でガソリン容器を運んで、荷台に並べた。


「これなら軽い軽い。おう、もっと色々積もうゼ」

「なら、発電機を止めて積んでしまおうか」


「それって、もう出発するってこと~?」

「仕度できたら、もう行こうよ」



校舎の外に出ると、悪臭はごまかしが効かない。

ミラノと莉々は、ハンカチで口元を押さえてる。


「みんな私物をまとめて、それから交代でシャワーも使おう」

「次はいつ水浴びできるか、判んねーからな」


「わたし、厨房に行ってくるよ」



ムツミはすぐ、校舎へ入っていく。

調味料とかを持ち出す気かな。

俺はどうしようかな。リヤカーの前で思案する。


アイトが莉々に、紙みたいな物を手渡してる。


「莉々、これ伝票にまとめてきたよ。不本意だけどね」

「道楽者」



莉々ちゃんに、なにやら罵られてる。

たぶんNゲージの模型の事だろう。オモチャ屋から大量に持ち込んでたからな。


俺はアイトに、ちょっかいを出したくなる。


「おいアイト、例のジオラマ、無駄になっちゃったな」

「仕方ないさ。教室ごと持っていくわけにもいかないし」


「けっこうな大作だったのにな」

「ジオラマは、ああしたいこうしたいって妄想してる時が最高に楽しいんだ。もう堪能したさ」


「そう?俺には負け惜しみにしか、聞こえないけどな」

「うるさいよナヲキ。僕はまだ野望を捨ててないからね?」


「ふーん、それじゃアイト先生の次回作にご期待!だな」

「そうさ、僕の戦いはこれからだ!」



ダメそうな雰囲気しかない。

でもこれで、アイトも少しは懲りただろう。



「おう、おう、こいつも持っていこうゼ」



ツトムンガーは、小型の冷蔵庫を担いできた。

宿直室にあったやつか。


「パワーだけはご立派。便利なオトコだよね~」


「……おうミラノ、こっちに来い」

「は?何いってんの」

「後ろだ」



ミラノが振り向く。俺もそっちを見る。

校門から犬が入り込んでる。


この間の、大きめな犬だ。

1匹だけど、噛まれたらシャレにならない。


◆シベリアンハスキーが現れた!

◆ミラノはすくみあがっている!

◆ツトムンガーの!冷蔵庫アタックの構え!


◆シベリアンハスキーは様子を見ている

◆シベリアンハスキーは耳を動かした

◆シベリアンハスキーは首をかしげた


◆シベリアンハスキーは身構えた

◆シベリアンハスキーは逃げ出した!

◆ツトムンガーの冷蔵庫アタック!しかし相手がいなかった!



戦闘はすぐ終わった。ツトムンガーの活躍で、みんな無事だ。

でも、1回攻撃してる間に、犬が5回くらい行動してたな。


「まずいな、校内まで入ってきやがったゼ」

「犬も、何か食べたいのかな~」

「食ベ物の匂いにつられて、他の犬も侵入してるかもね」



アイトが、他人事のように呟く。

それを聞いて、ゾクッとする。もし校舎の中まで入ってたら……


「俺、ちょっと見てくる」



玄関に入る。歩いてられない。廊下を走る。

まっすぐ厨房へ向かう。



「ムツミ」


「あっナヲキ、炊飯器もって行ってよ」

「えっ、うん」



良かった、厨房に犬は来てなかった。


「調味料も箱詰めできたし、こんなもんかな」

「喉かわいた。ジュース冷えてるかな」


「ちょっとナヲキ、こんな時くらいしっかり働きなさいよ」

「……いやあ、申し訳ないですね」


業務用冷蔵庫から、半分凍った缶ジュースを出す。ぐいぐい飲む。

ムツミに腹を突っつかれて、ちょっとむせる。



炊飯器を持って玄関へ向かう。

ムツミは段ボールを抱えて、一緒に歩いてる。


「これで学校暮らしも、おしまいだね」

「うん、そうかもな」


「先生も、見つからなかったね」

「……」



ムツミは、ぽつぽつと話しかけてくる。

こんな雰囲気に、俺は慣れちゃったかもしれない。

以前なら耐えられなかったけど。なんでだろうな。


「これから探しに行こうぜ、外に」

「外に?」


「うん、学校に居ないなら、どこか別の場所かもしれないだろ」

「……そうだね、そうだよねきっと」


「行こうぜ、ムツミさん」

「なんで、急にさん付けになるのよ」


ムツミは段ボールを抱えたまま、俺にちょこっとぶつかってきた。

ムツミの表情をチラっと見る。大丈夫だ、シャキッとしてる。



_________________________________




リヤカーの荷物はかなり増えた。


◇発電機とガソリン

◇ミニ冷蔵庫・炊飯器・電気ポット・延長ケーブル

◇毛布や枕が数組

◇調味料・台所用品・食器・救急箱・飲料水など


だいたいこんな物品が、山積みになってる。

あとは各々がリュックなどに、着替えや私物を詰め込んでる。

ミラノはフルートを持ってきてる。



これで引っ越しの準備は、整った。

ツトムンガーは軍手を嵌めて、リヤカーを引く体勢になってる。


「おっし行くか、せーの」



掛け声に合わせて、俺とアイトが後方からリヤカーを押す。

ツトムンガーが引く。動き出した。


いったん動くと、ツトムンガーはいとも簡単に前進していく。

あとは手伝う必要もないくらいだ。


「それじゃ僕たちは、物流センターに先行するよ。何かあったら知らせに戻る」

「おう、了解だゼ」



秀治とムツミ・ミラノ・莉々は、自転車に乗って先を進む。4人が自転車チームだ。


ツトムンガーはリヤカーを牽引するので、徒歩チーム。

アイトは自転車に乗れないので、徒歩チーム。

俺は、アイトに付き合って徒歩チーム。


こんなかんじで、2組に分かれて進む。



出発して数分も経たないうちに、秀治が戻ってくる。


「おうどうした、秀治」

「もっと道路の左側を進んでくれよ、リヤカーは軽自動車扱いだから、左側通行なんだ」



それだけ伝えて、自転車をこいで先へ行く。

俺とツトムンガーは顔を見合わせて、笑った。

広いバス通りは無人。俺らを見咎(みとが)める人なんて、どこにも見当たらない。



かなり歩いて、物流センターへ無事到着した。

自転車チームの4人も待っていた。


陽はもう傾きかけている。でもツトムンガーは平然としてる。

リヤカーを置いて、無造作にシャッターを開ける。


「倉庫の中も、特に変わってないね」

「ああ、今日はみんなお疲れ様。とりあえず食べて休もう」



シャッターを閉め切ると、ほぼ真っ暗になる。

懐中電灯やローソクで、最低限の明かりを灯す。

食べ物は豊富にある。莉々が立ち会ってパンや団子など、簡単な物を集めて食べる。


そのまま倉庫内で寄り集まって、眠る。


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