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誰のためのデミグラス
「ねえお母さん、来週の日曜、友達二人連れてきていい?
部活のあと。お母さんのオムライス食べたいんだって」
「いいわよ」
「やった!」
「俺は日曜もゴルフだな」と隆が笑う。
「デミグラス、ちゃんと作ろうかな。ソースから」
そう言ってから、美由紀は頭の中で段取りを組んだ。
牛すじを下茹でして、赤ワインを煮詰めて、野菜を炒めて、二日。
中学生三人のために、そこまでやる必要があるだろうか。
そのとき、ひとつの顔が浮かんだ。
真央でも、その友達でもなかった。
『デミグラスから作ったオムライスって、一回食べてみたいんですよね』
先々週、翔太がソファでそう言ったのだ。
美由紀は、フォークを持ったまま動けなくなった。
二日かけるつもりのソースは、まず翔太に出す。味を整えて、
その残りを、日曜に真央の友達に出す。無意識のうちに、
そういう順番で考えていた。
「お母さん? どうしたの」
「ううん。ソースの隠し味、何にしようかなって」
真央は「ふうん」と言って、レタスにドレッシングをかけ足した。




