code08 凍結⑭
「立樹」
混乱していた。
自分の体が、勝手に起き上がっていたが。
「大丈夫か、立樹」
声は聞き取れるのに――。
視界がぼやけてハッキリしなかった。
二の腕に、左右の腕に。
知っている、温もりが伝わって。
慣れた香りが。目の前の、その声が。
視界が晴れ……焦点が、合った。
「……高桐さん……」
「間に合ったか、どこも……」
「高桐さん……」
意識はまだ遠く、接続できていなかった。
自分の手が、両腕を掴み返している。
そのことにすら気づけていなかった。
「あ、よかった……来てくれて……よかったです……」
うなだれて、目を逸らしてしまって。
大量の涙と、体中の震えが。
それに気づいた時。
一瞬の感覚だけで……唇が、離れていた。
「悪い……」
どたどたどた、と。
休憩室に人の駆け込む気配がした。
「高桐! 立樹君は」
「……ええ」
立ち上がって、平然と答えている。
「間に合ったようです。何とか」
「そうか……堀口! お前!! ……いや、いまは立樹君だな。三井君」
「医務室へお連れします」
三井巡査に肩を支えてもらい。
かろうじて少しふり返ったが。
すでに堀口の対応に入っていて。
目を合わせることは、なかった――。
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