code07 指導⑤
『ターゲット逃走! 高桐!』
別の二課の刑事の声だった。
同時に、視界の奥。
人を分けて走ってくる中年男の姿が。
やっぱりそうだった。
追われながら、勢いよく近づいてくる。
「高桐警部」
言ったのより前に、警部は動いていた。
すっと通りに進み出て。
ちょうど駆け込んだ中年男の足をかけ。
左腕とシャツの襟ぐりを一緒に引いて、
一瞬で地面に制圧してしまった。
道行く人が、何事かと立ち止まっている。
「ターゲット確保」
難なく制して、涼しい顔で告げている。
すぐに応援が駆けつけて。
中年男はあっさりと連行されていった。
消耗なく立ち上がった高桐警部に、
インカムの刑事が駆け寄った。
「助かった。すまん、高桐」
「いえ、大丈夫です」
平然と答えている。
「悪い。ちょっとヘマしてな」
二課の刑事が笑っている。
高桐警部がこちらをふり返る。
「今みたいに
相手の勢いから浮かせて押さえればいい。
力で負けることもあるけどな」
すぐには返答できなかった。
鮮やかすぎた。
「なにせ礼を言う、高桐。今夜は上がってくれ」
お疲れと去って行った刑事を見送って。
高桐警部が言った。
「下の川沿いから撤収するか」
ようやく「はい」とだけ返して、
警部の背中について行った。
そこでドドーンと大きな音がして。
あたりが一気に明るくなった。
「はじまったな」
花火を見上げた高桐警部と、
同じように空を仰いだ。
夜空に花開いた、いくつもの放射線。
白く輝いてすうっと消えた。
久々に見る大輪は、やはり綺麗だった。
しばし見入って、はたと気づく。
やがて高桐警部が「行くか」と言って。
背を向けて歩きはじめた。
短く「……はい」とだけ答えて。
二歩遅れて、警部に続いた。
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