code02 進学①
もともと住んでいた団地の部屋。
与えられた邸宅の2階部屋。
場所も向きも全然ちがうのに。
自分の家具が先に来ているというだけで、
安心感があったのは、ありがたかった。
伯父が先回りして、手配してくれる。
伯母が気がついて、整えてくれる。
望が察して、手を繋いでくれる。
そうして1年、2年と過ぎて。
高校3年の、初夏を迎えた。
※※※
弦の音がひびく。
交互に――すぱんっと、小気味いい音。
間隔をあけて、続いていく。
東京都・高等学校総合体育大会。
通称、高校総体。6月開催。
弓道の部、最終日。
女子個人戦、決勝戦――。
弓道競技の個人戦は、予選10人。
5人ずつの2チームに分かれて並び。
先頭から順に、まず1射目、次2射目と。
外したものから退場する勝ち抜き方式。
つまり、最後まで当て続けた者が優勝。
なのだが――。
一射、終わって、待っていた三朝に。
背後から、つかつかつか、と。
審判員の、他校の先生が寄って来た。
「名前と学校名は?」
え……。
なぜ、いまそれを訊く……?
「時田谷高、立樹です……」
「優勝は! 都立時田谷高校! 立樹!」
わーーーーーーっと。
同輩、後輩が沸き上がった。
的場の外、嬉しそうな皆を呆然と見る。
……優勝?
優勝だって!?
見ると、看的盤=試合結果のボードは、
三朝の「1」が「⭕」以外は。
なんと全員「✖」が並び。
うそだろ……そんなことある……?
「じゃ、退場して」
小さく言われ、残りの矢を持って立った。
すごすごと退場する。
「立樹!! おまえ、やったじゃないか!!!!」
ばんばんばんばん、と。
顧問の先生が、遠慮なく背中を叩く。
いつにない笑顔にも応えられなかった。
今日を限り、
引退できると思ったのに……。
表彰式にいたっても。
本人だけが喜べていなかった。
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