code01 起点②
空港に着くと、女の人が待っていた。
30歳くらい?もっと若いかも。
ちょっと見たことないような、
とてつもなく綺麗な人で。
まちがいなく、望の母、だった。
「時間通りだったわね」
「ああ。待たせなくて済んで、良かったよ」
「後が大変だものね」
ふふ、と笑う。
望の笑顔を浮かべて、遺伝子を感じた。
「千秋。この子が」
「ええ、三朝ちゃん、よね」
ちゃんと顔を見て言ってくれた。
「佐木沢千秋です。この人の妻で、望の母の。
望が迷惑かけなかったかしら。すごく慕ってるみたいでね」
やわらかく笑ってくれる。
あまり壁を感じない人だった。
「これからも面倒見てやってもらえると、嬉しいわ」
「あ、はい……」
「そうよね、めんどうな挨拶は抜きにしましょ。
苦手だから、そういうの。無理しなくて大丈夫だから。
すぐに慣れろってのも難しいし。最初は堅苦しくて当たり前。
知らない家だもの。住んでるうちにね、自分の家になるのよ」
「…………」
「自分の家。これだけ忘れないでくれればね」
大丈夫よ、と。
笑って荷物をひとつ持ってくれた。
一生忘れないだろうなという気がした。
「おかあさん」
望が下から見上げている。
「みささ、こわがっちゃうよ」
「何言ってんの。最初が肝心なのよ。
堅苦しい挨拶なんかして、かえって威圧的でしょ。
かといって愛想笑いなんかで迎えられる?
あんたのお姉ちゃんでしょ? 大事な娘になる子なのよ」
「あ、なんだ。そうなんだね」
同じ顔で笑いあう母子を、遠く見て。
背後に伯父の気配を感じた。
「ま、こんな奴だから。
なんでも頼ってやってくれたら、喜ぶと思う」
「……はい」
「千秋の言うとおり、いまから行くのは『自分の家』だからな。
――いや、帰る、か。
心配しなくていい。自然と慣れるまで、そのまま居ればいいから」
出発空港とはケタ違いの。
人も店も通路も溢れるこの空港で。
三朝は”家族”を遠巻きに見ながら。
……多分、来て正解、だと思う。
という自分のジャッジを。
どこか奥底から、ちゃんと聞いていた。
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