code01 起点①
「めちゃくちゃ、ないてたねー」
「……そうだね」
「みささのこと、だいじ、なんだね」
すっかり”みささ”呼びが定着して。
従弟の望が、足をぷらぷらさせる。
手はしっかり、三朝の袖を掴んだまま。
『ジャパン・コード・ライン、
東京行き、10時51分発、309便は、
ただいま搭乗手続きをご案内中でございます。
東京行き、309便――』
昼前の、空港ロビーだった。
平日だが、夏休み中なので、
そこそこ家族連れなどで混んでいる。
「しょうがないよね。
赤ちゃん、いるから。かわいかったね」
「うん、可愛いよ。それはもう……」
「あえなくなるね」
「そうだね」
「つぎあうときは、ぼくみたい、かもしれないね」
ふふふ、と。
従弟の笑う顔は。
齢6歳、小学1年にして完成されている。
A級ホラー映画の美しい子役のように。
身体を屈めて、ちょっと覗き込んだ。
「だったら、綺麗な子になるね」
「え? ……ふふ」
わかっているのか、いないのか。
心に映える、笑顔を残す。
「おとうさん、おそいね」
「どこまで行ったんだろうね。電話って言ってたけど」
「まだ、じかんあるのかな」
「うん、それは大丈夫だけど」
「ぼく、ちょっと、おなかもすいたなあ」
「朝、食べられなかったもんね」
「うん」
この小さい子供の朝食を抜く。
それは非常に酷な事で、
伯父もそれを気にして席を外した。
ついでに電話してくる――と。
もう20分。
「あ」
従弟が急に立ち上がって。
「かえってきたーーーっ」
非常に子供らしい仕草と口調で。
遠くから近づいてくる自分の父を。
”子供”として迎えている。
「おとうさん、おそいよー」
「悪い。コンビニが混んでてな。ほら」
「あ、わーい。おなかすいて、たいへんだったんだー」
「適当に買ってあるから。好きなの食べていい」
「うんっ」
「三朝にも渡してあげて」
親子はすでに。
そろって『三朝』と呼んでくれている。
まだ会って、1か月と経たないのに。
1か月と経たないのに。
家族になる。
今日から。
「お母さんに電話してきたから。
空港へ来てくれるって。お祖父ちゃんに車を借りて」
「あー、それはよかったー。
かえりも電車じゃ、つかれるなっておもってたんだ」
「そうだろ。荷物も多いし。羽田から遠いからな」
「みささ、どれがいい?
パンとかサンドイッチとか、あるよ」
コンビニの袋を見せてくれる。
伯父が隣に座った。
「どれでも、食べるといい。昼食はまた空港で。
伯母の千秋が来てくれるから、三朝のな」
伯母。
それこそ、今日、初対面だ。
「構えなくていい。気さくな……拍子抜けするような奴だから」
ちょっと温かい顔になる伯父を見る。
妻の紹介として『拍子抜け』って合ってる?
「ねえ、どれにする?」
「望が好きなの取ってからでいいよ」
「え、ほんと?!」
やったー、とガサガサはじめた。
笑顔がすごく嬉しそうだ。
もうホラーテイストじゃない。
望、と呼ぶと、なぜか喜んでいるような。
気のせいかも知れなかったが。
「じゃ、ぼく、これにする。おとうさんは?」
「いや、いい。2人で分けて食べなさい」
「はーい。じゃ、これ、みささのね」
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