code05 起動⑩
「ところでな」
「はい」
「この春から、うちの娘も入庁することになった」
ああ、そうですか。
とは言えず、ここは頭を下げておいた。
「おめでとうございます」
「うん……でな。いずれ初任科研修があると思うが」
「7月からですね」
「いまの調整では、高桐君の所へお願いしようかと思っている」
和やかなようで。
ひたと見つめる視線で告げた。
わずかに驚き、同時に、腑に落ちていた。
だから、わざわざ呼び出したのか――。
「高桐君の元なら娘も何かと学べるだろう。
いずれ新組織にも加担させようとは思っているが」
「ああ、そうなんですね」
再来年に新設予定の捜査機関――JPO。
自分も配属予定である事を予告されている。
「言うことをきかんやつだから、
素直に受けるかは分からんがな」
「ご一緒するかもしれないんですね」
「そのつもりだ。その時は、また高桐君の下に……」
わずかに険しかった表情を。
警視監は、また窓の外へやり。
言葉を何か、飲み込んだように見えた。
「東京でも世話になると思う。
苦労を掛けるだろうが、よろしく頼む」
部屋を辞して歩きながら――。
そういうことで、いいんだろうな。
と思い返していた。
上層部がらみの女子職員を、
若手職員に引き合わせる。
わりと行われている『人事』だった。
手近だから、押し付ける、のではない。
上層部関係者なら身元調査不要。
だからだった。
警察職員の結婚相手には、
そうした身元の確かさが求められた。
正直。
自分にもそういう話が来るとは。
同時に安堵もあった。
話の出所が他ならぬ佐木沢警視監。
他の幹部ならいざ知らず。
先が思いやられる事はないだろう。
職務で会うなら気兼ねもない。
めったな事で断れる話じゃないからな。
ただ違和感というか疑問もあった。
佐木沢には、同居している『姪』がいる。
かなり綺麗な子で、庁舎にも来た事がある。
有名な話だった。
残念ながら、人柄までは聴こえてなかったが。
だが。
佐木沢は『娘』と、はっきり言った。
同居の姪ではなく『娘』。
様子も心なしか重く、神妙にすら見えた。
住まわせているだけなら『娘』とは言わない。
何かあるんだろうか――。
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