第9章:古き書物
数時間後、アレンは目を覚ました。
体の疲れは少し取れていたが、記憶はすぐに戻った。
ランク8の狼。
追跡。
落下。
そして――石の扉。
アレンは洞窟の壁にもたれ、考え込んだ。
――「この先には何がある?」
最初は無視しようとした。
だが問題があった。
彼はまだ十四歳。
冷静で分析的な心を持っていても、好奇心は強かった。
ため息をつき、呟いた。
――「少しだけ……見てみよう。」
扉に手を当てる。
厚く、重い。
押しても動かない。
そこで思い出した。
炎。
狼との戦いで試した技。
剣を掲げ、掌に炎を灯す。
刃を炎で包み、深く息を吸う。
そして――斬撃。
――バキッ。
石に亀裂が走る。
再び斬る。
何度も。
ついに扉は崩れ、隙間ができた。
アレンは慎重に中へ進んだ。
恐怖はなかった。
だが警戒は強かった。
音。
空気の流れ。
すべてを感覚で探る。
だが怪物はいない。
罠もない。
ただ静寂。
やがて手が奇妙なものに触れた。
机。
そして――箱。
さらに探索を続けると、理解した。
ここは隠された宝の場所。
金貨。
金属の装飾品。
腕輪。
指輪。
鎖。
そして――本。
数多くの本。
アレンは微かに笑った。
――「これは……役に立つかもしれない。」
彼は文字を読めなかった。
だが本の価値は知っていた。
いくつかを手に取り、装飾品や金貨も持ち帰ることにした。
洞窟を後にし、長い道を戻る。
やがて木の家に帰り着いた。
扉が開く音に、エレナは駆け寄った。
――「アレン!」
――「どこに行っていたの?」
声には心配が満ちていた。
――「何日も……何かあったと思ったわ。」
アレンは落ち着いて答えた。
――「森で少し問題があった。」
そして全てを語った。
狼。
落下。
洞窟。
扉。
宝。
エレナは黙って聞き、最後に安堵の息をついた。
――「戻ってきてくれてよかった。」
彼女は持ち帰った本を見た。
――「その本は?」
アレンは一冊を持ち上げた。
――「内容を知りたい。読んでくれる?」
エレナは微笑んだ。
――「もちろん。母が子供の頃に読み方を教えてくれたの。」
二人は木の机に座り、古い本を開いた。
紙は古く、ページは音を立ててめくれた。
エレナは声に出して読んだ。
――「この場所を見つけた者は……森の試練を生き延びた者である。」
アレンは集中して聞いた。
――「この隠れ家は、剣の達人であり古き炎の継承者――アークテルのものである。」
アレンは顔を上げた。
――古き炎。
エレナは続けた。
――「ここには剣術の知識……そして炎の真の力が眠っている。」
アレンの心臓は高鳴った。
この洞窟はただの宝ではない。
もっと大きな何かの始まりだった。




