第34章:故郷
群衆が散り、大会が正式に終わった後、
主催者たちはアレンを闘技場の中央へ導いた。
審判が再び告げる。
――大会の覇者には金、古代の秘宝、そして魔族領遠征への参加権が与えられる!
黄金の詰まった宝箱と、大陸の遺跡から回収された古代の品々が彼の前に置かれた。
アレンは静かにそれを受け取った。
彼にとって重要なのは名声でも金でもなかった。
式が終わると、彼は闘技場を去った。
その夜、宿へ戻る。
部屋の扉を開けると、レッドとブルーが待っていた。
彼を見た瞬間、立ち上がり叫んだ。
――師匠!
――勝ったんですね!
二人の瞳は尊敬に満ちていた。
アレンは剣を脇に置き、腰を下ろす。
――難しかった…
そして静かに続けた。
――だが不可能ではなかった。
兄妹は微笑んだ。
彼らにとってアレンはすでに伝説の存在だった。
だがアレンは真剣な眼差しで言った。
――言わねばならないことがある。
二人は耳を傾けた。
――お前たちは魔族領へは来られない。
――行くには大会で優勝しなければならない。
ブルーは視線を落とした。
――では…その間どうすれば?
アレンは静かに答えた。
――心配するな。
――私の家族のもとへ連れて行く。
二人は驚いた。
翌日、旅が始まった。
森を抜け、土の道を進み、小さな村を通り、
二日かけてようやく辿り着いた。
そこは街から離れた静かな場所だった。
家に近づいた時、アレンは足を止めた。
剣の音が聞こえたのだ。
庭で、幼い少年が木剣を振っていた。
ライアン。
まだ五歳にも満たないが、真剣に鍛錬していた。
アレンは微笑んだ。
さらに小さな足音。
庭を歩く少女。
エリラ。
もうしっかり歩けるようになり、三歳を迎えようとしていた。
アレンの胸は熱く満たされた。
ライアンが最初に気づいた。
――父さん!
駆け寄り、アレンは膝をついて抱きしめた。
そしてエリラを腕に抱き上げた。
――大きくなったな…。
その時、エレナが現れた。
静かな気配。
柔らかな息遣い。
アレンにとって彼女は変わらず美しかった。
――戻ってきたのね。
アレンはうなずいた。
――ああ。
――会いたかった。
そして弟子たちを紹介した。
――彼はレッド、十五歳。
――彼女はブルー、十五歳。
――兄妹で…エルフだ。
二人は礼を尽くした。
だが驚いていた。
アレンは十八歳。
それなのにすでに子を持ち、妻エレナは二十八歳。
ブルーが小声で言った。
――師匠は本当にすごい…。
アレンは家を見渡した。
小さすぎた。
皆で暮らすには狭すぎる。
そこで彼は働き始めた。
力と技を使い、家を改築した。
壁を広げ、二階を建て、部屋を増やした。
一人ひとりのための部屋。
家は大きくなり、真の「故郷」となった。
その夜――
静けさの中、アレンは部屋へ入った。
エレナが待っていた。
柔らかな微笑み。
――会いたかった。
アレンは近づいた。
――俺もだ。
長い別れを経て、二人は語り、思い出を分かち合い、抱き合った。
アレンは知っていた。
すぐに魔族領へ旅立たねばならない。
危険な場所。
だからこそ、このひとときを大切にした。
家族と過ごす静かな夜。
――故郷にて。




