第16章:ルンセラへの道
ライアンの誕生日が過ぎ、家は再び静けさを取り戻した。
だがアレンは悟っていた。
ここでの時は終わりに近づいていると。
長年鍛錬を積み、家族を築き、アークテルの書から学べることをほぼすべて得た。
だがさらに進むためには――再び世界へ出なければならなかった。
ある朝、アレンはエレナに告げた。
――「街へ行く必要がある。」
エレナはすでに知っていた。
数週間、彼の心の揺らぎを感じていたからだ。
――「どこへ?」
――「ルンセラ。」
かつて行こうとした街。
だが運命は別の道を示した。
今こそ、その時だった。
アレンは近くの村へ行き、必要な物を整えた。
新しい剣士の衣服。
丈夫で、軽く動きやすい服。
そして重要なもの――新しい黒い布。
古い布は長年の鍛錬で擦り切れていた。
準備を終え、家に戻った夜、再びエレナに語った。
――「強くなるために行かなければならない。世界は広く、まだ理解できないことが多い。」
エレナは静かに答えた。
――「分かっている。あなたに出会った日から、いつかまた旅立つと知っていた。」
アレンは頭を下げた。
――「だが必ず戻る。何度でも。」
エレナは微笑んだ。
――「なら、私たちは待っている。」
出発前、エレナは地図を渡した。
アレンには見えなかったが、彼女は丁寧に説明した。
――「ここから北の森を抜け、川を渡り、道を進めばルンセラに着く。」
アレンは全てを記憶した。
別れの時、ライアンが父を抱きしめた。
――「お父さん……戻ってくる?」
アレンは頭に手を置いた。
――「もちろんだ。強く成長しておけ。」
ライアンは真剣に頷いた。
黒い狼は傍らに座り、理解しているかのようだった。
エリラも父の足に抱きつき、エレナはただ見つめていた。
その瞬間、アレンは家族の絆を感じた。
幼き日に祖母から受けた温もりと同じ。
言葉では表せないが、確かな力。
ついにアレンは剣を取り、新しい黒布を結び、地図を収め、歩み始めた。
森の道は彼にとって難しくなかった。
自然の音、風の変化、空気の流れ――すべてが彼に道を示した。
獣が現れても、彼の剣は一瞬で道を切り開いた。
数日後、アレンは目的地に辿り着いた。
ルンセラの街。
音は森とは全く違った。
荷車。
人々の足音。
商人の声。
鎧の音。
数百の声が混ざり合う。
目では見えなくとも、アレンは理解した。
――この街は巨大だ。
彼が訪れたどの場所よりも。
久しぶりに心から驚いた。
――「これが……世界か。」
その瞬間――
アレンの本当の物語が始まった。
外の世界での剣士としての物語が。




