2話 ガンスミス3
武器庫の裏手。
地下試射場。
一般的な射撃場とは違う。
特殊部隊用に作られた施設だった。
「500m」
真壁が言う。
「ここじゃそれが限界だ」
湊は何も言わない。
伏射姿勢を取る。
AXMCを構えた。
静かだった。
先ほどまで騒がしかった蓮も口を閉じている。
ボルトを閉鎖。
呼吸を整える。
引き金を引く。
轟音。
数秒後。
遠方のターゲットへ着弾。
中心。
ど真ん中だった。
もう一発。
再び中心。
さらに一発。
また中心。
「へぇ♡」
蓮が小さく声を漏らす。
湊はライフルを下ろした。
「重心を2mm後ろ」
真壁を見る。
「ストックを3mm上げてください」
「レールは1mm右へ」
蓮が瞬きをする。
ひまりも首を傾げた。
「分かるんですかぁ?」
湊は答えない。
真壁だけが反応した。
「理由は」
「伏射時に左肩へ逃げる」
湊は即答した。
「……」
真壁は数秒だけ湊を見る。
そして。
「貸せ」
ライフルを受け取った。
工具箱を開く。
カチ。
カチ。
カチ。
微かな音だけが響いた。
数分後。
再びライフルが返される。
「撃て」
湊は構えた。
呼吸。
照準。
発砲。
着弾。
中心。
もう一発。
中心。
さらに一発。
中心。
湊は僅かに頷いた。
「いい」
「そうか」
真壁はそれ以上何も言わない。
だが。
それで十分だった。
今度は真壁が奥へ向かう。
棚から何かを取り出した。
小さな金属板。
掌ほどのサイズしかない。
それを500m先へ設置する。
さらに。
横風が吹き始めていた。
試射場の環境としては最悪だった。
蓮が笑う。
「嫌な的ねぇ♡」
湊は再び伏せる。
スコープを覗く。
風。
距離。
揺れ。
全てを計算する。
引き金。
発砲。
数秒後。
遠くで乾いた金属音が響いた。
命中。
ひまりが目を丸くする。
「すごいんですかぁ?」
蓮が笑う。
「すごいなんてもんじゃないわよ♡」
ひまりはよく分かっていない顔だった。
今度はさらに小さいターゲットが設置される。
もはや肉眼では点にしか見えない。
迅が静かに腕を組んだ。
湊は構える。
呼吸。
静止。
発砲。
甲高い金属音。
再び命中。
その瞬間。
蓮の表情から笑みが消えた。
初めてだった。
SAT隊長としての顔。
霧島蓮司の目だった。
「2,000m」
静かな声。
「本当に撃てるのね」
湊はスコープから目を離した。
「ああ」
短く答える。
数秒。
沈黙が流れた。
そして。
蓮は再び笑った。
「楽しみだわ♡」
その視線の先には。
二日後の戦場があった。
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