表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァルハイム・プロトコル ―神代湊は平穏に生きられない―  作者: かたろーしゅ
第一章 再び響く角笛

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/46

2話 最終ブリーフィング

作戦前日


 内閣情報調査室本部 地下会議室


 普段使用される会議室とは規模が違った、長机を囲むように各機関の責任者達が着席している。

 神奈川県警、警察庁警備局、海上保安庁、税関、そしてSAT。

 各責任者の背後には補佐官が控えており、会議室全体に緊張感が漂う。

 今回の作戦が国家規模である事を示していた。

 その中央、内閣情報調査室国際情報部長、立花エマが立ち背後には小鳥遊ひまりがスクリーン操作と資料管理を担当している。

 会議室の下座、出入口付近には、神城湊と九条迅だけが立ったままだった。

「それでは最終ブリーフィングを開始します」

 エマの声が響きスクリーンに港湾地区の航空写真が表示された。

「作戦目標は三つ、第一目標。黒龍会幹部、李文龍の確保」

 画面に男の写真が表示される。

「第二目標。黒龍会構成員の拘束。第三目標、密輸ルートの解明」

 各責任者が資料へ目を落とした。

「敵戦力は約八十名」

 会議室が僅かにざわつく。

「内訳は黒龍会構成員約七十名、李文龍直属戦力十名、うち側近と思われる幹部が四名」

 画面が切り替わり港湾地区全体図を映す。

「敵は取引終了後、コンテナヤード中央を徒歩で移動。その瞬間を狙います」

 赤いラインが表示された。

「狙撃班はこちら」

 建設中の高層ビル、コンテナヤードから約2,000m

「周囲の地形、射線、敵警戒状況を考慮した結果、この地点以外に有効な狙撃ポイントは存在しません」

 神奈川県警の責任者が手を挙げる。

「質問を」

「どうぞ」

「なぜその地点なのですか」

 エマはひまりに視線をおくり資料を切り替わる。

「他候補地点は三箇所、いずれも敵との距離が近く、発見リスクが高いうえ、突入部隊到着まで時間を要します」

 次のスライド。

「今回の目的は排除ではなく確保です。狙撃後、SATが速やかに突入し拘束する必要があります。よって本地点が唯一の選択肢となります」

 責任者は納得したように頷いた。

 エマは続ける。

「狙撃後、SATが突入し警察は周辺道路封鎖。海上保安庁は港湾海域封鎖を行い、税関は押収物管理及び証拠保全を。以上が基本計画です」

 会議は順調に進んでいた。

 だが、一人の責任者が資料から顔を上げる。

「失礼ですが、一点確認したい」

「どうぞ」

 その視線が会議室後方へ向いた。

 神城湊。

「今回の狙撃担当についてです」

 会議室の視線が集まる。

「本当に彼に任せるのですか」

 静寂、しかし、エマも。迅も。蓮も。真琴も。

 誰一人表情を変えなかった。

「理由を伺っても?」

「失礼ながら学生に見える。国家規模作戦です。2,000mの長距離狙撃など前例がありません。より経験豊富な射手を起用すべきでは」

 当然の疑問だった。

 エマはひまりへ視線を送り、再びスクリーンが切り替わる。

 表示されたのは一枚の資料。

 だが、その大半は黒塗りだった。

 所属、経歴、任務履歴。

 ほとんど閲覧不可、残されている情報だけが映る。

 神城湊、十八歳

 海外特殊部隊所属経験あり。

 長距離狙撃任務従事。

 対テロ作戦参加。


 最長確認狙撃記録…‥2300m


 成功。


 会議室の空気が変わった。

「2300……?」

 誰かが呟く。

 エマは淡々と続ける。

「記録当時十七歳。風速七・八メートル。小雨。気温4℃。視界不良。移動目標に対し一発で命中しています」

 誰も言葉を発しなかった。

 責任者達が再び資料を見る、そして…

「所属していた特殊部隊は」

 質問。

 エマは即答した。

「回答できません、神城湊に関する経歴情報の一部は国家特A級秘匿情報です。閲覧権限がありません」

 ざわつき。

 だがそれも一瞬、責任者達は理解する。

 聞いてはいけない相手なのだと。

 神城湊本人は、何も言わない。ただ静かに立っていた。

「他に質問は」

 沈黙。

 やがて、誰も手を挙げなかった。

 エマは頷く。

「それでは各機関、最終確認に移ります」

 エマの言葉に各責任者が頷く。

 まず口を開いたのはSAT隊長の霧島蓮司だった。

「SATは予定通り突入を担当するわ♡」

 口調こそ軽い。

 だが、会議室にいる誰もがその実力を知っている。

「狙撃成功後、五分以内に現場制圧を開始して李文龍の確保を最優先とするわ♡」

 隣に立つ真琴が資料を確認する。

「突入班は三班編成です。第一班が李文龍の確保、第二班が周辺制圧、第三班が逃走経路の封鎖を担当します」

 警察庁側の責任者が続く。

「周辺道路の封鎖は問題ありません。港湾地区周辺主要道路を全て規制します」

 海上保安庁も同様だった。

「巡視艇三隻を配置済みです。海上からの逃走は困難でしょう」

 順調だった…計画上は。

 だが。

「補足があります」

 静かな声。

 会議室の視線が集まる。

 九条迅だった。

 壁際から一歩前へ出てスクリーンに新たな資料が映し出される。

「本作戦には前提があります」

 迅は淡々と説明する。

「敵が想定通りに動くこと。想定外の車両を保有していないこと。側近戦力が予想を超えないこと」

 画面に港湾地区の地図が表示された。

「今回、警察と海保による封鎖網は極めて強固です…しかし」

 一拍。

「完璧ではありません」

 責任者達の表情が引き締まる。

「敵は長年密輸を行ってきた犯罪組織です。我々が把握していない逃走手段を保有している可能性があります」

 会議室が静まり返る。

「また」

 次の資料。

 李文龍の写真。

「この人物は単なる犯罪者ではありません。白兵戦能力も高い。加えて側近四名の詳細は未判明です」

 SAT側の席。

 蓮が小さく笑う。

「つまり♡簡単には捕まらないってことね♡」

「その通りです」

 迅は即答した。

「成功率を上げるための作戦です。成功を保証する作戦ではありません」

 誰も反論しなかった。

 現場を知る人間ほど理解している。

 計画通りに進む作戦など存在しない。


 沈黙。


 その空気を破ったのは蓮だった。

「大丈夫よ♡」

 全員の視線が集まり、蓮は笑っていた。

「そういう時のために私達がいるんだから♡」

 真琴が小さくため息を吐く。

「隊長」

「なによ♡」

「真面目な会議です」

「お・お・ま・じ・め・よ♡」


 エマは時計を見る。

 予定時刻。全ての確認が終わった。

「質問はありますか」

 誰も手を挙げない。作戦は決まった。

 あとは実行するだけだった。

 エマはゆっくり頷く。

「作戦開始は明日二二○○。各員、準備をお願いします」

 椅子が引かれる音、責任者達が立ち上がる。

 会議終了、国家規模の合同作戦が動き始める。

 その時だった。

「湊ちゃん♡」

 会議室を出ようとしていた湊が足を止めた。

「明日は外さないでね♡」

 会議室が静まる。

 全員の視線が集まる。

 湊は一瞬だけ蓮を見る。

「外さない」

 短い返答。

 それだけ、その言葉に迷いはなかった。

 蓮は満足そうに笑う。

「頼もしいわねぇ♡」

 そのまま会議室の扉が開く。

 いよいよ、明日。横浜港での作戦が始まる。

友人に「携帯小説みたい」と言われました。

変に納得してしまったので以降の文を修正していきます。

読みづらかったら感想で指摘してください!



ご拝読ありがとうございます。

感想やコメント、リアクションをいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ