2話 ガンスミス1
武器庫へ向かう廊下。
迅は先頭を歩いていた。
その隣を蓮が歩く。
嫌な予感しかしなかった。
「迅ちゃん♡」
早速だった。
「何ですか、蓮隊長」
「あらぁ♡」
蓮が大袈裟に頬へ手を当てる。
「やぁだぁ♡」
「部下じゃないんだから隊長なんて呼ばないでよぉ〜♡」
迅の眉が僅かに動いた。
「では何と呼べば」
蓮は満面の笑みを浮かべる。
「お姉ちゃん♡」
沈黙。
「昔みたいに♡」
追撃だった。
迅は無言で前を向く。
ひまりの肩が小さく震えた。
「本当に呼んでたんですかぁ?」
「呼んでいません」
即答だった。
「呼んでたわよ♡」
蓮も即答する。
「嘘です」
「嘘じゃないもの♡」
楽しそうに笑う。
「小さい頃なんて本気で私のこと女の人だと思ってたじゃない♡」
迅が額を押さえた。
珍しく本気で嫌そうな顔だった。
「本当なんですか」
湊が聞く。
「聞くな」
即座に返ってくる。
「可愛かったのよぉ♡」
蓮は止まらない。
「蓮お姉ちゃんって後ろついて回って♡」
「やめてください」
「迷子になると私探して泣いてたし♡」
「やめてください」
「警察庁の廊下で抱きついて――」
「やめてください」
食い気味だった。
ひまりが遂に吹き出す。
「ふふっ……」
迅が振り返る。
ひまりは慌てて口元を押さえた。
「すみませんですぅ」
「笑ってるだろう」
「笑ってないですぅ」
全く説得力がなかった。
蓮は更に楽しそうになる。
「でもねぇ♡」
蓮は懐かしそうに笑った。
「迅ちゃん、昔から真面目だったのよ♡」
「余計なことは言わなくて結構です」
「お勉強も頑張るし♡」
「隊長」
「礼儀正しいし♡」
「隊長」
「でも可愛げは無かったわね♡」
「隊長」
低い声だった。
蓮は満足そうに笑う。
完全に面白がっていた。
湊は少し考える。
そして結論を出した。
「仲が良いんだな」
「良くありません」
迅は即答した。
「良いわよ♡」
蓮も即答した。
見事に割れた。
だが。
そのやり取りを見ていると。
二人が長い付き合いなのはよく分かった。
「迅ちゃん♡」
「何ですか」
「今でもお姉ちゃんって呼んでいいのよ♡」
「呼びません」
「一回だけ♡」
「断ります」
「ケチ♡」
迅は深いため息を吐いた。
その表情は。
学校や会議室で見せるものより少しだけ年相応だった。
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