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ヴァルハイム・プロトコル ―神代湊は平穏に生きられない―  作者: かたろーしゅ
第一章 再び響く角笛

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2話 ブリーフィング2

 ブリーフィングが終了する。


 モニターが消えた。


 エマは資料を閉じる。


「神代」


「はい」


「装備の受領を」


「分かりました」


 湊は立ち上がった。


 迅も同時に席を立つ。


「俺も同行する」


「監視か」


「ああ」


 短いやり取りだった。


 その時。


「あら♡」


 聞き慣れた声が響く。


「私も行くわ♡」


 全員の視線が集まる。


 霧島蓮司だった。


 当然のように立ち上がっている。


 真琴が額に手を当てた。


「隊長」


「なぁに♡」


「何故ですか」


 蓮は不思議そうに首を傾げる。


「駄目?」


「駄目です」


「つれないこと言わないで♡」


 即答だった。


 真琴は深いため息を吐く。


 ひまりが小声で呟く。


「いつもあんな感じですぅ」


「そうか」


 湊は納得した。


 迅は納得できなかった。


「霧島隊長」


「なぁに♡」


「同行する理由が見当たりません」


「あるわよ♡」


 蓮は胸を張った。


「湊ちゃんの銃が見たいの♡」


 室内が静まり返る。


「二千メートル撃つんでしょ?」


「興味あるじゃない♡」


 迅が黙る。


 論理的な理由が一切なかった。


 しかし本人は至って真面目だった。


「隊長」


 真琴が再び呼ぶ。


「仕事はどうするんですか」


「真琴ちゃんがいるでしょ♡」


「そういう問題ではありません」


「お願い♡」


「駄目です」


「冷たい♡」


「普通です」


 漫才だった。


 エマは既に諦めたように肩を竦める。


「好きにしなさい」


「やった♡」


 蓮は満面の笑みを浮かべた。


 真琴は四度目のため息を吐く。


「副隊長は来ないのか」


 迅が尋ねる。


「行きません」


 真琴は即答した。


「私は現場準備があります」


 そして蓮を見る。


「隊長の分も」


「ごめんね♡」


「本当にそう思うなら仕事してください」


「思ってるわよ♡」


 全く説得力がなかった。


 結局。


 武器庫へ向かうことになったのは。


 神代湊。


 九条迅。


 小鳥遊ひまり。


 そして。


 本来同行する必要が全くないSAT隊長、霧島蓮司だった。


 会議室を出る。


 廊下を歩きながら。


 迅が隣の蓮へ視線を向けた。


「本当に何故ついてくるんですか」


「あら♡」


 蓮は楽しそうに笑う。


「つれないこと言わないで♡」


「答えになっていません」


「ちゃんと答えたじゃない♡」


 全く答えていなかった。


 ひまりがくすりと笑う。


「でも霧島さんなら言いそうですぅ」


「でしょう♡」


 蓮は満足そうに頷いた。


 そして湊へ顔を向ける。


「湊ちゃん」


「何ですか」


「楽しみにしてるわ♡」


 湊は少しだけ首を傾げた。


「何をですか」


「二千メートルの世界よ♡」


 蓮の笑みは消えない。


 その瞳だけが。


 ほんの僅かに真剣だった。

ご拝読ありがとうございます。

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