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ヴァルハイム・プロトコル ―神代湊は平穏に生きられない―  作者: かたろーしゅ
第一章 再び響く角笛

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1話 カーチェイス5

ハイエースが倉庫街へ飛び込んだ。


 タイヤが甲高い悲鳴を上げる。


 急制動。


 車体が大きく揺れ、そのまま倉庫前で停止した。


 運転席のドアが開く。


 男が転がるように飛び出した。


 額には大量の汗。


 肩が激しく上下している。


 まるで何かから逃げ切ったばかりのようだった。


「おい!」


 待機していた男たちが駆け寄る。


「何があった!?」


「他の車はどうした!?」


「ブラボーは!?」


 矢継ぎ早の質問。


 だが運転手は答えない。


 首都高の方向を見たまま固まっていた。


「……やられた」


 掠れた声。


「は?」


「やられたんだよ……」


 男が顔を上げる。


 その表情を見て、周囲の人間が思わず黙る。


 本気で怯えていた。


「全部やられた!!」


 突然の怒鳴り声。


「チャーリー2も!」


「ブラボーも!」


「チャーリー1もだ!!」


 呼吸が乱れる。


 言葉がまとまらない。


「みんな消えたんだよ!!」


「落ち着け!」


「落ち着いてられるか!!」


 肩を掴まれても振り払う。


 手が震えている。


「追ってきたんだよ!!」


「誰が?」


「黒いWRXだ!!」


 一瞬の沈黙。


 そして。


「……一台で?」


 誰かが呆れたように言う。


「そんなわけねぇだろ」


「高速で事故ったんじゃねぇのか?」


「違う!!」


 運転手が叫ぶ。


「俺も意味分かんねぇよ!!」


 声が裏返る。


「でもいたんだ!!」


「気付いたら後ろにいて!」


「気付いたら横にいて!」


「気付いたら誰かが消えてるんだよ!!」


 周囲は顔を見合わせる。


 状況は分からない。


 だが少なくとも正常ではない。


 そんな空気が広がる。


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