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パラサイトマッスル  作者: Aju


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46 冴え打ち

 猟助は最も動きの少ない魔沙鬼の腹を狙って発砲した。

 人間の動きはどんな格闘家でもアスリートでも、下腹を中心にして動く。だから腹を狙えば外れる確率は低い。


 だが魔沙鬼は左手にくっついた相手の体を振り回してそれを弾除けに使った。とんでもない体幹と力だ。

 猟助の撃った拘束弾は、そいつの背中ではじけただけになった。


「くそ!」

 相手の体が邪魔で、魔沙鬼に狙いがつけられない。


 すると魔沙鬼が意外な行動に出た。

 近くにあった車の車体を変形した右腕で叩きつぶしたのである。

 魔沙鬼の一撃で車体は大きく歪み、鉄板が鋭利な形でめくれ上がった。


 ほぼ身動きのできなくなっている相手の右二の腕を魔沙鬼の変形した右手でつかみ、その肘から上の部分をめくれ上がった鉄板に叩きつける。


 ザグッ!

 と嫌な音がして、相手の腕が拘束剤のかかっていない部分で切れた。


 血が吹き出す。


 ちぎれた相手の腕を左手にぶら下げたまま、魔沙鬼が脱兎のごとく走り出した。

 その先に遠巻きにスマホを構えている人々がいる。

 猟助は2発目が撃てない。


 魔沙鬼はそのままビルの角を曲がって、光太郎たちの前から姿を消した。


「魔沙鬼はいい! それより医療班! もう一人の患者の止血だ!」

 光太郎が叫び、医療班が動き出そうとするが、そいつはまだ足が動く。

 尻餅をついて背中に当たった拘束剤がアスファルトとそいつの尻をくっつけてはいるが、動く両足を振り回して抵抗している。


 木蓮がそいつの尻の近くに走り込んだ。足を振り回していても、付け根の股関節付近は大きく動くわけではない。

 さらにその近辺のPMから破壊してしまえば、その先の足は振り回せなくなって危険はなくなるだろう。

 いい目の付け所だった。


「ピィンクバスターストォーム!」

 余裕出てきたようだね、木蓮。。(^^;)


 光太郎が白衣を翻して飛び込んでゆき、頭の方からPMを殺してゆく。

「止血! 誰か腕の止血を!」


 金吾がヘルメットを取ってその顎紐を伸ばし、患者の切られた腕を縛り上げた。いや、縛るほどの長さがないから、両手で持って傷口を締めつけているだけである。足りない部分は指の力だけで押さえた。

 それでも金吾の力をもってすれば、十分にその肥大化した腕を締め上げて出血を止めることができている。


 光太郎が手を滑らせてその傷口までのPMを退治した。患者の腕が水ぶくれになる。

 止血する前に血と一緒に飛び出したPMが、路面の血だまりの中でスコップで切られたミミズのようにのたくっていた。

 金吾がそれを靴で踏みつける。

 蟲は一瞬苦しそうに体を捻じ曲げ、それからどろっと溶けて路面の血の中に混じってしまった。


 清掃班が薬液を使って拘束剤を溶かしてゆくと、それを追いかけるように光太郎と木蓮が患者の体を水ぶくれにしてゆく。

 ようやく近づくことのできた医療班が、患者の水ぶくれから皮下に溜まったPMの死体を吸い出してゆく。手慣れたものだ。


「止血代わります。」

 医療班の1人が医療用の止血バンドを持って、金吾と交代した。


「木蓮。全部踏みつぶすなよ。」

 光太郎が血だまりの中でのたうつPMに向かおうとする木蓮を止めた。

「1匹2匹は実験用に生きたまま捕らえて持ち帰りたい。」



 スマホで撮られた動画は、その日のうちにネット上に拡散した。

 特に、あのとんでもない2体の怪物に突っ込んでいった2人の黒ずくめはヒーロー扱いだった。


『すげー! 特対すげー!』

『めちゃカッコいい!』

『特にあのメット取って止血したやつ、鳥肌もの』

『殺陣師が「いい太刀筋」って言ってるってよ』

『情報回ってきた。サエウチっていうらしいぜ。中学生だってよ?』

『あのガタイでか?』


 そのSNSはかつての同級生たちも見ていた。もちろん、億田も丹馬も‥‥。


「これ、ほんとにあのサエナイ金吾なのかよ?」

「あいつ、剣道なんてできたのか?」

「俺は教えてねぇ。顔似てても別人なんじゃねーの?」

「だけど、化け物みたいになったあいつが魔沙鬼とやり合った後、あの黒ずくめどもに連れていかれたのを俺たちは見てるじゃんよ。」


 SNSに『冴え打ち』の文字が現れると、さらに拡散速度は速まっていった。


「紗枝内クン、カッコいいー!」

「もっと親切にしておけばよかったー。(泣)」

「誰か連絡先、知らないの?」


 女子たちがざわついている。


 もちろん、そんなこと金吾は知らない。あのクラスにはいい思い出なんかないのだ。



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