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パラサイトマッスル  作者: Aju


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38/44

38 Kチーム

 アラームが鳴って、光太郎は顔をしかめる。

 まだ目の前の患者の治療が半ばだ。


「樋山さん、出動です!」

 イヤホンから井出猟助の声が聞こえた。


「この患者の治療を終えたらすぐ行きます。あと1分くらい。」

 光太郎が返す。途中でやめたら、体内のPMの捕捉が難しくなってしまう。

 長森先生は別の患者の治療中で、木蓮はこの時間、高校に行っている。

 なるほど。これがこのチームに駆除者が2人いる理由か——と光太郎は思うが、しかし‥‥‥


 一応、光太郎が昼間、木蓮が夜、というシフトになってはいるのだが‥‥‥

 相談から()()に回されてくるステージ1〜2の患者も、筋肉の異常な膨張と暴力の暴走を起こすステージ3〜4の患者もなぜか昼間が多い。

 夜は待機しているだけの暇な時間が多く、木蓮はつまらなさそうにゲームばかりやっている。


「勉強でもすれば? 大学行かないの?」


「はあ‥‥。ここ給料いいし。別に大学行かなくてもいいかなーって。」

 そう言いながらもやっぱり不安もあるのか渋々参考書を開く木蓮だったが、30分もしないうちに爆睡してそのまま朝まで寝ている。


 畢竟、光太郎ばかりに負担が大きい。




 捕獲班の3人、金吾と悟と猟助は出動時例の黒い戦闘服姿である。ただ金吾はヘルメットをかぶらないことが多い。「見えにくい」からだそうだ。

 光太郎もリーダーとして一応「危ないよ?」と言ってはみたが、あまり聞いてはもらえない。

 そもそも光太郎自身が白衣のままなのだ。


 一応光太郎にも黒い戦闘服(人体の主要な部分を衝撃から防護できる)は支給されているが‥‥、ただ状況からして着替える時間がない。

 黒い戦闘服のままでステージ1〜2の患者に対応したら、怖がられてしまいそうだからだ。光太郎は戦闘には加わらないし、彼らが取り押さえてからが光太郎の仕事だから白衣のままでいい——ということにした。(勝手に)


 現場に着くと、男が1人暴れ回っていた。盛り上がった筋肉に破れたスーツの残骸をまとわりつかせている。

 急激に筋肉が膨張したのだろう。最近よくあるパターンだ。

 何かを叫びながら車を持ち上げてはひっくり返し、振り回しては別の車にぶつけている。

 燃料タンクに穴が開いたのか、あたりの空気にガソリンの匂いがした。


「警備班! 清掃班! ガソリンが漏れているようなので処置をお願いします! 紗枝内くんと小林くんは待機。井出さん、あいつの足は止められますか?」

 光太郎は矢継ぎ早に指示を出した。


 最初はチームリーダーという慣れない仕事に戸惑った光太郎も、最近は少し慣れてきている。それどころか‥‥‥

 自分の指示ひとつで大勢の隊員がテキパキと動くというのはけっこう快感だな——と思い始めてもいる。


「猟助でいいって言ったでしょ?」

 そんなことを言いながら、狙撃役の猟助は捕獲銃を構える。

 すぐには発砲しない。暴れ回る男の下半身を静かに銃口で追ってタイミングを計る。


 男の叫んでいる言葉が少しだけ判別できた。

「車を壊すぅ! 壊せばぁ——」ガッシャアン!

 後ろの方は車がぶつかる音でかき消されたが、「‥‥‥るぅ」と言ったように光太郎には聞こえた。


 次の車を持ち上げるため、男の足が一瞬止まった。その隙を逃さず猟助が引き金を引く。

 猟助の腕は見事なもので、捕獲弾は暴れている男の太腿のあたりに当たってはじけた。

 白いどろりとした液体が膝から足首まで流れ伝ってアスファルトの路面に達し、あっという間に発泡して膨れ上がるとそのまま男の片足を路面に固定してしまう。


「がああああっ!」


 その状況を見計らって清掃班が、ガソリンの揮発と引火を抑制する処理材を撒く。


「紗枝内くん、小林くん。押さえ込んでくれ。金属をぶつけて火花を出さないよう気をつけて。」


「金吾でいいって言ったっしょ?」

 金吾が光太郎に向かって親指を立てて言ってみせる。

(真似すんなよ)


 金吾が獲物に襲いかかる虎のようにして男の左腕に飛びかかった。いや、黒いドーベルマンか。

 男は突然足を拘束してしまった白いゴム状のものをむしり取ろうと躍起になっていたが、それから手を放し、左腕を押さえにかかった金吾を殴ろうと右手を振り上げた。

 その右腕に、固定された男の足を回り込むようにして悟が取り付く。


 男の両腕の筋肉がさらに、ごぼり、と盛り上がったが、金吾はそれをしっかりと押さえ込んだ。

 悟がやや力負けしているが、なんとか頑張っている。

 そこに光太郎が白衣を翻して飛びかかり、その筋肉の化け物と化した男の頭を両手で挟んだ。


「ごあああっ!」


 一声叫んだあと、男の顔がだらしなく表情を失ってぶよぶよになる。

 光太郎はさらに手を滑らせて、首、肩、胸、腕‥‥‥とPMを追い込んで潰してゆく。

 男の体はほんの2分ほどで、ぶよぶよの水風船のようになった。


「PM削除終わり!」


 光太郎のその声と共に、医療チームの医師2人と清掃班が動き出す。

 清掃班がアスファルトと男の脚に付着した拘束ゴムを溶かして除去し、医師2人が膨れ上がった男の皮下からPMの死骸(アミノ酸を含む液体だ)を吸引して救急車に運び込む。

 光太郎は帰りはその救急車に同乗する。


 そんな出動ももう何回目だろう。

 メンバーもずいぶん手慣れて手際がよくなってきた。



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― 新着の感想 ―
カッコいい! 光太郎さん、頑張れ! PMに対して、ほとんどチートですね。 ……どうやるのかはわかりませんけど、相手に対策取られそうで怖い、と思うのは私だけでしょうか?
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