サラへのご褒美
「・・・・・・・それじゃあ、行ってくる」
「頑張れよ、サラ」
「あ、あの・・・・・・・・・・・お願いがあるんだけど、良い?」
「お願い?」
「・・・・・・・・・・・も、もしね。 勝てたら、私とデートして欲しいの!」
「デート? 」
「うん、私ね。 入学してから、今日の相手に勝てたことないんだ。 ここまでランキングを上げたのは、他の人に勝てるようになったから。 だからね、これは私の1つの課題というか、壁なの」
「・・・・・・・・・・・わかった。 デートでもなんでもしてやる、だから、頑張れ」
「うん!」
サラはくしゃっと笑うと、胸に手を当てて、小さく深呼吸をした。
「それでは、両者入場!」
アナウンス共に、サラは入場する。
反対側からは、対戦相手の少女が現れた。
「・・・・・・・久しぶりだね、エミリア」
「ええ」
「・・・・・・・・・もう体調は回復したのの?」
「流石に無理はできないかな。 もし、代表に選ばれても、本戦には出られないから辞退するつもり」
「そっか」
「あっ、聞いたよ? サラってランキング5位まで上げたんだよね? 半年前は13位だったっけ?」
「うん、エミリアの3位にはリエラがいて、アルジオが13位に上げたよ」
「半年の間に、みんな強くなったんだね、負けられないな」
「それでは、ランキング5位 サラ・リズワーナ対ランキング7位 エミリア・マーガレット、両者構え!」
サラは武器を手にとる。
エミリアは靴で地面をコンコンと叩いた。
「試合開始!」
「行くよ! エミリア!」
サラは開始早々、エミリアの懐へと飛び込んだ。
「確かに成長してるみたいね、でも、これならどう? 解放・・・・・・・・アイスウォール!!」
エミリアが地面を強く踏むと、巨大な氷の壁が、サラの行く手を阻む。
「流石ですわね、エミリアは。 半年のブランクがあるとは思えませんわ。 解放してからの技の使用の速さは随一ですわね」
「なあ、リエラ」
「なんですの?」
「模擬戦のルールは武器を取り上げるか、戦闘不能になるかだったはずだ。 エミリアの武器というか、戦闘方法が足技なら、サラはエミリアを戦闘不能にするしかないのか」
「まぁ、そいうことになりますわね。 ただ、エミリアは病み上がりですし、長期戦になれば、サラの勝ちですわよ」
「エミリアは入院してたのか」
「ええ、彼女、もともと体は強くないみたいなのですけど、入学してすぐに、リズベット、ルティア、エミリアの3人は先輩方をごぼう抜きにして行って、みるみると順位を上げていきましたわ。 こんな凄い天才が3人も入ったなんて奇跡だとまで言われていましたわね」
「他のメンバーはどうだったんだ?」
「私は31位、サラは49位、ネリーに至っては、編入生でしたから、最初はランキングも仮のランキング順位でしたわ」
「仮?」
「ハヤトさんみたいに、空いてるランキングがあればそこに入ります。 ランキングが空く場合は、そのランキングの人が特殊な事情で、譲る時しかないですわ、ジョンもそうでしたし」
「そうだったな」
視線をリエラから、互いの武器をぶつけ合っている二人を見つめる。
特訓の甲斐もあったのか、サラの動きはさらに良くなっている。
踏み込む際の迷いは一切なくなり、剣筋もさらに鋭くなっているのが、遠目からでも良くわかった。
「はっ!」
「・・・・・・・・・本当に、成長したね、サラ」
鋭い金属音が、キーンと響き、闘技場に響いた。
「・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・やっぱり、リハビリ足りなかったかな」
試合はサラが優勢だった。 エミリアは肩で深呼吸を繰り返し、サラの攻撃に対する対処の仕方や集中力が散漫になっていた。
「・・・・・・・ごめんね、サラ。 今の私にはこれが限界みたい」
そう言って、審判に向かって、敗北を認めたサインを送り、そのまま試合は終了した。
何があったのかわからない生徒たちはざわついていたが、エミリアのことを知っているメンバーはしょうがないといった表情を浮かべている者たちもいた。
「試合終了!」
コールを聞いた生徒たちは、次の自分たちの授業や用事の準備のために、足早く会場を後にしていく。
「・・・・・・エミリア」
「ごめんね、本当に」
「エミリアが戻ってきたんだから、歓迎会しないとね」
「全く、あなたは無理し過ぎよ、エミリア」
「ごめんなさい。 でも、お医者さんの許可は貰いました」
「だとしても、解放までして良いなんて言われたかしら?」
「それは・・・・・・・・・」
「学園長、知っていて止めなかった私にも責任はあります。 怒るのであれば、私にも」
リズベットはエミリアを庇うように、二人の間に割って入る。
「リズは悪くないわ」
「今日はあなたが主役なのよ、少しくらい私に甘えなさい」
「もう、しょうがないわね」
「学園長の許可も下りたことだし、それでは、エミリアの退院祝いの歓迎会を始めます!」
サラの提案で、ハヤトたちは空いている会議室を借り、料理が得意なメンバーで、食材を集め、調理を行った。
「このエビフライ美味しいわね」
「それは俺の自信作だよ、リズベット」
「あなたとこうして話すのは初めてかしら?」
「そうだな、そもそもリズベットが学園にいるのを見た記憶があまりないな」
「ランキング1位として、貴族の当主の方たちに、挨拶とかしたりしないといけないから」
リズベットは疲れているのか、豊満な胸を腕で支えつつ、壁にもたれかかるようにして食事をしている。
「椅子座るか?」
「ありがとう、でもお気持ちだけで嬉しいわ。 それよりも、向こうで不満そうにしているサラの元へ行ってあげなさい」
「サラ?」
「・・・・・・・・うー」
子供っぽく、コップを両手で持ちながら、水を飲んでいるサラは、ハヤトのことを恨めしい瞳で見つめていた。
「サラ、どうした?」
「あ、あの・・・・・・・・や、約束覚えてる?」
「約束・・・・・・・・・・・サラとデートするって話か?」
「うんっ!」
ハヤトの発言は正解だったようで、サラは甘えるペットのように、ぴょんぴょんと跳ねている。
もし、彼女が獣人であれば、尻尾がパタパタと揺れていたことだろう。
「明日にするか?」
「うんっ! 街を歩きたいなっ」
ここ数日のサラの頑張りを褒めるのもあって、ハヤトはサラの頭をいつもよりも優しく撫でた。




