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ザルドとミルカ

「・・・・・・・・勝手な行動をして、しかも負けたのか、情け無い」


「うるせえ! リミッターさえ外せれば、俺にだって、あんな奴ら倒せたんだ」


「リミッター外さないと勝てないなら、あんたに伸びしろはないわよ」


暗がりの中、灯りは数本のろうそくしかない部屋で、ザルドは審問にかけられていた。



「ネローナ、お前の能力はあいつらと相性悪いっての! お前なんか勝てるわけねえだろ」


「私はそんな奴らに、能力を使おうとすら思わないけどね、素手で充分だし。 私は武器なんか必要ないもの」


「私も同感です。 ただの魔導士に武器なんか穢れるだけですからね。 まぁ、素手でも使うのは嫌ですが、汚れた血で、私の服が汚れるというのは我慢なりません」


勢いよく扉が開いた。


そこには、大柄な筋肉質の男が、一般的な斧の数十倍はあるのではないかというほどの大きさの斧を軽々と担いでいる。


隣には、男の腰くらいの小柄な少女が立っている。


少女右手は、重症患者のように、白い包帯が、グルグルと巻かれている。



「おうおう、みんないるじゃねか、おっ、ザルド。 聞いたぜ、お前負けたんだろ? ただの人間に」


「うるせえな、手加減したんだよ」


「本当のこと言いなさいな、負けたんだって、まぁ、これであんたか、私たちの中で最弱だということは明らかになったわよね。 偵察すらまともにできないなんて、情けないわ」


「ドジャー、アルドラ、君たちも帰ってきたのかい。 ドジャーの機嫌の良さを見ても、らなかなか楽しい戦闘をしたみたいだね」


「まあな、いい魔導士はいたぜ。ただ、なかなか良い精霊は見つかんなかったな、雑魚ばかりだ、ってザルドどこ行くんだ?」



「審問は終わりだろ? 俺は行くぜ」


ザルドは部屋を出ると、右腕に魔力を込めて、庭に生えた大木へと波動を放つ。


バキバキと音を立て、大木は真っ二つに折れる。


「・・・・・・・・・・・・・力が弱くなってるわけじゃない。 それなのに、俺はあの男に手も足も出なかった。 あいつは何者なんだ」


ザルドの怪力は、常人の力を余裕に超える。


それこそ、魔力のこもっていない武器であれば、素手でへし折れるほどだ。



「おはようございます、ザルドさん♡」


黒いローブを羽織った小柄な幼女は、満面の笑みを浮かべて、ザルドへ近寄る。


ザルドはその分、一歩だけ距離をとった。


「ミルカか」


「落ち込んでますよね? ミルカが慰めてあげちゃいます、きゃはっ♡ あ〜〜〜、ザルドさんかっこいいです〜〜」


「・・・・・・・・・何しに来たんだ、また俺の監視か」


「監視なんてひどいですよぉ〜〜、ミルカはー、ザルドさんのこと応援してるんですよお、頑張れ頑張れ、ザルドさーーーーん!!」


甘えた声で、ミルカはザルドを褒めるが、ザルドは攻撃的な視線で、ミルカを睨んだ。


「クエトの奴に言われたんだろ? 俺の監視をよ、お前はあいつの犬だもんな」


「・・・・・・・・・・バレちゃいましたか。 つまんないなあ〜、ザルドさ、私のこと舐めてない? 私さ、あんたより強いんだけどおー」


「試してみるか? ランキングが全てじゃねえんだよ!」


ザルドは腰の剣を抜く、ミルカはニヤリと笑って、短刀を取りだした。


「私の能力は、再生能力があるザルドも耐えられないと思うけど」


「どうだろうな」



「例えザルドであろうと、アルドラやドジャー達であろうと、クエト様の批判をするなら、ブチ殺すから」


「やってみな」


ミルカはニヤリと笑うと、彼女の身体を漆黒の闇が包み込む。


「・・・・・・・・・ちっ、面倒くさい能力だぜ」


姿を消したミルカの気配をザルドは感じ取ることが出来ていない。


「闇に紛れて気配を消し、刺し殺すか、暗殺者らしいぜ・・・・・・・ここか!」


「ハーズレー、誰が地面からしか攻撃できないなんて言いましたかー、バーカ」


「お前がやりそうなことなんて、わかってんだよ」


「ちっ」


不意をついたつもりの攻撃を簡単に見破られ、ミルカは見た目に似合わない舌打ちをする。


「勘だけは鋭い奴」


「俺は弱くねえ、最強になるんだ」


「私に勝ててから言いなさいよ!」


二人の刃が再び交わりそうになった瞬間、赤いローブの人物が、二人の攻撃を受け止めた。


「・・・・・・・・・何をしている、お前たち」


「クエト様!?」


「・・・・・・・・・何しに来たんだよ、てめえは」


「騒がしいと思ってきてみれば、これか。 全く、簡単に逃げ帰ってきておいて、好き勝手されては困るぞ、ザルド。 お前には言ったはずだ。 サラ・リズワーナ、ルティア・シェール、リエラ・アルミット、ネリー・ザスティナ、リズベット・ワグナリアの誰でもいい。 始末しろとな」


「邪魔が入っただけだっての! それに、流石にワグナリアの女には勝てる気しねえって」


「あら、さっきの威勢は何処へやら」


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・申し訳ありません、クエト様」


クエトに睨まれたミルカは借りてきた猫のように、小さくなる。


「・・・・・・・・・まぁ良い、ミルカ、お前にも奴らを潰して貰わないといけないからな。 精霊は好きなのを連れて行け、必要なら金もいくらでも用意する」


「かしこまりました。 あなた様の意志のままに」


クエトの登場に、ミルカは膝をつき、忠誠のポーズをとる。


「(あの男、次は必ずぶっ倒す)」


ザルドは立ち去りながら、力強く拳を握り締めた。


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