#2 愛だから云えない 人目を引く Pimple
神をやっていて良かったと思うのは、常時健康体であることだ。
神としての任期が終わるまでは一切老いることもなく、病を患うこともなく、怪我をすることもなく健康に過ごせる。生前は病気がちだった身からすると、毎日元気に暮らせることがありがたい。
あと、もうひとつ良かったと思うことがある。
美容関連でも何の憂いもなく過ごせることだ。肌も髪もツルツルで、厄介なムダ毛だって生えてこない。乾燥、テカリ、余計な皮脂などとも無縁。
おまけに神としての私の姿は、どれだけ高めに見積もっても十代半ば。
しかも、天界に住んでいる他国の神たちもほとんどが十代に見える少女ばかりなので、メイクをしなくても浮かない。
すると、私の生活はどれだけ明るくなることか!
朝起きてスムーズに布団から起き上がり、心身ともに憂いなく健康的に活動開始できることに歓喜し、スキンケアやメイクといった面倒な行程を全てすっ飛ばして、自由気ままに散歩などしながら朝の空気を浴びてリフレッシュできる!
こんなに素晴らしい生活が他にあるだろうか。
いや、絶対にない!(反語)
というわけで日課の散歩を終え、結愛が作ってくれる朝ご飯の時間までに帰宅し、さて今日の主菜はなんだろうかとキッチンを覗いてみた。
「環おはよー」
「ん、おはよ」
「二人ともおはよう」
結愛がフライパンを振るう。智乃はトースターで食パンを焼いている。
洋食の日のよくある光景。
なのだが、
「じー…………」
「…………」
なぜか二人が手を止めて、私の顔を見ている。
結愛に至っては「じー」と擬音を発しながら。
何かおかしなことをしただろうか。
心当たりがない。
「…………」
「…………」
「え、二人ともどうしたの?」
「…………」
「…………」
「その、何か言いたいことがあるなら言ってよ」
「…………」
「…………」
「そこまで黙られると困るのだけど」
二人は困ったように顔を見合わせて、「結愛が言えよ」「やだよ智乃が言って」なんて小声で言い争いをしている。そんなに言いたくないことなのだろうか。不安が募る。
「あのさ、はっきり言ってもらわないと私もわからないのだけど」
「……結愛、言えよ」
「…………わかったよ、はあ……」
結愛が私の目を真っすぐ見て、覚悟を決めたように口を開く。
いや、正確には私の右の頬を凝視して――
「環、でっかいニキビできてる」
…………え?
結愛が凝視してる場所を指で触って、確かに何か膨らんでいるものがあって、ご飯粒ではないし、明らかに自分の肌というか、え、ちょっと待って、結愛が差し出してきた手鏡の中に大きめのニキビが鎮座してていやいや待ってこれはちょっとその
「ぎゃああぁぁぁああああああぁぁぁぁあっっっ――――!!!!!」
「ほーら。こうなるからオレは言いたくなかったんだよ」
「環、スキンケアサボりまくってたもんねえ」
うそウソ嘘こんなの嘘でしょじゃあ私はさっきまでこの恥ずかしすぎるニキビを晒しながら悠々と散歩して隣国のあの子とか仲の良いあの子とかに挨拶してたってこと!? いいいいい一体どんな目で見られてたの怖い怖い助けて無理死ぬ完全死でしかない神だから死ねないがガチで無理なんですけど無理無理死死死!!!
「あ、そうだ。環。もう一個良いこと教えてやるよ」
「…………ひっ、な、なに……?」
妙にニヤついた智乃が、私の耳元に口を寄せてきて――
「お前みたいな年齢の奴はな、ニキビじゃなくて吹き出物って言うんだよ」
「…………ひっ、い、いやぁぁああぁぁぁっっっ―――!!!」
も、もう嫌だ…………神辞めたい…………




