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第5話

 気付いたら眠っていたようだ。

 急激な喉の渇きに耐えかね、俺は勝手知ったる顔で優太の家の冷蔵庫を開ける。

「うわ、空っぽじゃん。ジュースの一つもないのかよ」

 冷蔵庫の中には食材や飲み物はおろか、調味料の類いまでごっそりなかった。節約のため普段は自炊をしているという優太のことだから、作り置きの一つでもあると思っていたんだが……。

 俺は冷蔵庫を閉め仕方なく蛇口からの水をグラスにそそぐ。塩素風味の水をちびちび飲みながら、俺の目線はふとゴミ箱の横に積まれた漫画雑誌の束に向けられる。

「あれ、これ優太が中学生の頃からハマってる月刊ガッツじゃん。昨日発売されたばかりの新刊もある。断捨離でもすんのか?」

 5、6冊の束が8つもある。かなりの量だ。一人暮らしを初めてからもずっと買い続けていたようだ。しかし昨日発売された新刊もまとめて処分するなんて何かあったのだろうか。今月号は優太のお気に召さないものだったのだろうか。

 そうつらつら考えていたらあくびが止まらなくなった。残っていた水を一気に飲み干し、俺はおとなしく眠気に従いこたつに戻ることにする。

 優太は大きないびきをかいており、絶賛夢の中だった。

 こたつの上を見やると食い散らかした残骸が嫌でも目に入る。そしてよく見ると、その中に埋もれるようにして例のハムスターが倒れていた。

 俺が以前何の気なしにあげたハムスター型録音機は、今では優太にとっては大切な宝物になっている。

 俺は今更ながら食事の残骸で埋もれたハムスターを救出し、ティッシュペーパーで身体を拭いてやる。

 並んでいた料理の9割が中華料理だったからか、ハムスターの身体は油でべとべとだった。なかなかとれない油汚れにムキになっていると、ふいに手から滑り落ちてしまった。

『ゆうくん、大好きだよ』

 どうやら落ちた拍子に再生ボタンが押されてしまったようだ。

 聞こえてきた鈴が転がるような声に嘆息しながらハムスターを拾い上げたところで、俺は思わず動きを止める。

 録音された内容を最後まで聞いた俺は、今日ずっと感じていた違和感の正体をやっと掴むことができた。

「起きたか?」

「うーん……英介か。あれ……今何時?」

「まだ4時」

「そっか……。俺、あれから寝ちゃったんだね。……英介は寝ないの?」

「ああ。俺は寝ない」

「どうして? 具合でも悪いのか?」

「見張ってないといけないから。優太、お前が……死なないように」

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