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第二章 丸文字の便せん

クラスメイトの生徒会長から、手紙が届く。そこには、学校の近況がぎっしり書き込まれていた。

最初の手紙は、いつ届いたのか覚えていない。

気づいたときには、病室の机の上にあった。

白い封筒。


差出人の名前は、見なくても分かった。

丸刈りで小柄な生徒会長だ。


開ける前に、少しだけ時間がかかった。

手紙というものが、まだ現実のものとして扱えなかった。

封を切ると、紙の匂いがした。


病院の匂いとは違う、少しだけ乾いた匂いだった。

便せんには、文字がびっしりと並んでいた。

丸い字だった。


一文字一文字が、少し急いでいるように見えた。

でも急いでいるわりに、線は乱れていなかった。

行間は狭く、余白はほとんどなかった。

紙の端まで、文字が押し込まれていた。


内容は、最初はどうでもいいことだった。

教室のこと。

誰かが黒板を消し忘れたこと。

給食の話。

先生の口癖。

そんなことが続いていた。


読んでいるうちに、それが「学校そのもの」なのだと気づいた。

病室の外で、確かに流れている時間の断片だった。

そこには、自分の名前はあまり出てこない。


それでも、不思議と置いていかれている感じはしなかった。

むしろ、その逆だった。


ページをめくる指が、一度だけ止まった。

「早く戻ってこいよ」


その言葉だけ、少し浮いて見えた。

他の文字より、重かった。


手紙を読み終えたあとも、しばらく便せんを見ていた。

文字の並び方が、頭の中に残る。


その夜、消灯後の病室で、もう一度封筒を開けた。

同じ内容なのに、最初よりも少し近く感じた。


学校は、遠くにあるものではない。

ただ、自分がそこにいないだけ。

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