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第一章 白い天井

どうして、今の状況が訪れたのか、少年には、わからなかった。


目が覚めたとき、まず匂いがあった。


消毒液の匂いだった。


鼻の奥に残るその匂いは、朝というより「状態」のようだった。


時間が動いているのかどうか、よく分からない場所だった。


天井は白かった。

どこを見ても、同じ白さだった。


しばらくして、自分が学校にいないことを思い出した。

正確には、学校から離れているのではなく、学校の外側に置かれている、という感覚だった。


中学一年の春から夏にかけてのどこかで、体がうまく動かなくなった。


熱が続き、咳が止まらず、検査が続いた。


気づいたときには、「肺結核」という言葉が自分の名前より先に呼ばれていた。


それが、少しだけ不思議だった。


病気は自分の中にあるはずなのに、

周りのほうが先にそれを理解しているようだった。


看護師の足音が廊下を通るたびに、時間が区切られる。

朝と昼と夜は、光ではなく音で分かれた。


学校では、今ごろ何をしているのだろうと思った。

授業。部活。昼休み。そういうものが、どこか別の世界で進んでいる。


自分だけが、そこから外れていた。


外れているのに、完全には切れていない気がした。

細い糸のようなものが、まだどこかに残っているような。

ただ、その糸が何なのかは分からなかった。


夜になると、病室はさらに静かになった。

音が減ると、逆に自分の呼吸が大きく感じられた。


吸って、吐く。

それだけのことが、少しだけ難しかった。


窓の外は暗く、何も見えなかった。

見えないものが多すぎて、考えるのをやめるしかなかった。


そのうち、時間の感覚が薄れていった。

今日が何日かは分からない。


でも、まだ終わっていないことだけは分かった。


白い天井は、変わらなかった。

自分の体験をもとに、書きました。地味ですが、青春の断面を切り取りました。

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― 新着の感想 ―
「音が減ると、逆に自分の呼吸が大きく感じられた」 やけにリアルだなと思ったら、体験談でしたか。 こういう文章は伝わります。
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