第二十二話:席に座る者
株分けは、地味だ。
庭師の僕が言うのだから間違いない。根を掘り上げて、割って、別の土に植える。それだけの作業を、前世で何百株やったか覚えていない。
覚える気も起きないくらい、地味なのだ。
……と、思っていた。今朝までは。
「ユーリ様! 見てください! 徹夜しました!」
朝、食堂の戸を開けた瞬間、ペトラが紙の束を抱えて突っ込んできた。三つ編みが跳ねている。目の下に隈があるのに、目だけは異様にぎらぎらしていた。商人は寝なくても動く生き物なのかもしれない。
「槽の古堆肥、種として分けられるのは一割まで。それ以上抜くと、母槽の分解が追いつかない。ユーリ様、そう言ってましたよね」
「言いましたね」
「だから、あげない。貸すんです! 支所は一割を借りて、育てて、増えたぶんを返す。返った堆肥は、また次の支所へ。利息は堆肥で!」
……発酵は、複利。
口の中で転がして、自分で鳥肌が立つ。
これすごいぞ。
堆肥は放っておいても増える。一を借りて三に育てて、二を返しても、手元に一が残る。借り手が損をしない利息。踏み倒す理由のない貸借だ。
しかも「返す」という名目が、支所と本庭を繋ぐ綱になる。
「……天才ですか」
「商人です!」
その日、僕は人生で初めて、堆肥の話で人を拝みかけた。
第一支所は、庭の東、一つ目の道標のそばの旧牧草地に決まった。先日、水場を掘っておいたのが効いた。出先で撒いた小さな親切が、あとから利息をつけて返ってくる。ペトラの前で言うと調子に乗るので、黙っておく。
溝を掘る段になって、フィオナがぴたりと足を止めた。
「ユーリ、そこ、掘らないで」
地面に耳を当てた彼女が、眉を寄せる。
「下に水が走ってる。深いけど、陣の溝をあと三尺掘ったら抜けるわ。灰の溶けたのが、そのまま水脈に落ちる」
僕の鑑定は、地面の下の水までは教えてくれない。庭師が土の数字ばかり見て水を殺すなんて、笑い話にもならない。
「助かった。僕の目より速いな」
「でしょう?」
彼女は得意そうな顔を一瞬だけ見せて、すぐに引っ込めた。見逃さなかったけどね。こういうのを隠しがちなのもフィオナの愛おしい所だ。
「あ、じゃあフィオナさんは測量係ですね! いいお耳で! そういう地味な係って、大事ですよね!」
ペトラさんが、ぱんと手を叩いた。悪気は、たぶんない。たぶん、というのが怖いところである。
フィオナは「ええ、ありがとうございます」ときれいに笑った。左手の親指だけが、拳の中に引っ込んだ。
あとは、掘って運んで植える。一度目の陣には図面がなくて、二度目には図面がある。造園も、たぶん建国もそこだけは同じだ。
夕暮れまでに八十人が根の形の溝を掘り上げて、荷車で運んだ母槽の古堆肥が、新しい槽に流し込まれた。
夕暮れ。第一支所の溝に、最初の水が通った。
フィオナが溝の中心に立って、八十人ぶんの魔力を束ねている。
目は閉じたまま。もう川は見ないかわりに、八十の足音と呼吸を聞き分けて、「そこ、半拍遅い」「あなたは力みすぎ」と一人ずつ呼んで整えていく。声が、凛としていた。
槽が、ごぼり、と鳴る。黒い粉が、ほろりと土に変わる。数字が落ちる。歓声が上がって、誰かが泣いて、決まりの五に従って全員がばらばらにバケツを叩いた。
「……通った」フィオナが、荷車の梶棒にすとんと腰を落とした。額に汗の粒。外套の裾を握って、ふにゃりと笑う。この顔を見るために今日一日、全員で土をいじっていたような気さえする。
「ユーリ様!」そんな時、算盤を抱えたペトラが、駆け寄ってきた。今はフィオナとの時間を……まあいっか。ペトラも頑張っていたしな。
「三支所ぶんの貸借台帳、全部、頭に入りました! 母槽の返済計画も、私が回せます! 実績、出ましたよね! そしてお隣に相応しいのは、役に立つ人。ここまでは、ご同意いただけますよね!」「それは、まあ、役に立つ人は、ありがたいですけど」「でしたら、庭の『頭』は、ユーリ様と私で、もう足りちゃうんです! ですので、お気を悪くなさらずに聞いてくださいね!」
彼女は声を落とした。落としたつもりらしかった。梶棒までの距離は、三歩。
「フィオナさんの席のことです」
席。
「川が見えなくなった今、お隣に置く理由は『情』だけでしょう? 情は大事です! 商売でも情は上乗せします! でも帳簿の上では、含み損です。ユーリ様ほどの株が、含み損を抱えて走るのはもったいない。ここは一度、評価替えを……あ、捨てろとは言ってませんよ! 担当替えです! 後方でお茶を淹れていただくとか! お似合いですし!」
「…………」
「フィオナさんも、気を悪くなさらないでくださいね! 事実ですから! 私、正直なのだけが取り柄なので!」
朗らかだった。本当に、朗らかだった。親切のつもりなのか?周りも空いた口が塞がらない、と言った感じだ。
梶棒の上で、フィオナは動かなかった。笑顔のまま。ただ、右手が、左の手首へ伸びた。鈴を押さえるときの癖だ。外したのだから、そこには何もない。空を握った指が、少し迷って、ほどけた。
……ああ。これは、駄目なやつだ。
我慢しかねる。
僕は、怒鳴らなかった。怒鳴るほどの労力をかける価値も感じられない。喉の奥が、ひどく静かだった。
スコップを荷車に立てかけて、ゆっくり息を吸う。
「ペトラさん。三十秒、いただけますか。怒鳴りたくないので、数えながら話します」
「え? あ、はい! 数えるの、得意です!」
そこは、得意でなくていいのに。
「まず、お礼を。貸借の案は本当に助かりました。発酵は複利、僕一人なら一生思いつかなかった。これは事実です。——その上で、間違いを数えます。四つ」
「ひとつ。『役に立つ』と『隣にいてほしい』を、同じ帳簿に書いている。感謝と、隣に立ってほしい気持ちは、勘定科目が違います。昔、有能な後輩は何人もいました。全員、心から尊敬した。でも、誰を隣に置きたいかは、一度もそれで決まらなかった」
「ふたつ。フィオナを『含み損』と呼んだ。人を資産と負債に仕分けて、本人の前で値下げした。商人なら分かるはずです。取引先をけなして自分を高く見せるあなたは、いつか僕の値も下げる。その時点で、あなたは僕にとっても、信用の置けない取引先です」
ペトラさんの笑顔が、固まった。
「あ、あの、それは」
「みっつ。事実が違う。川が見えなくなったのは本当です。でも今日、八十人の魔力を束ねて陣を通したのは誰ですか。水脈を聞き分けて、僕の溝が井戸を殺すのを止めたのは。あの柄の輪っか——ノズルを、頭の中の設計図から組んだのは。あなたの台帳に、その行はありますか。帳簿に書けない仕事を、ゼロと記帳した。百戦錬磨の商人の、大きな書き漏らしです」
「で、でも、目の力は、実際——」
「よっつ」
遮った。自分でも驚くほど、静かな声が出た。
「昨日の朝、あなたは言いました。愛は後から付いてくる、付いてこなかったら返品する、と。面白い冗談だと思って聞き流した。冗談じゃなかったんですね。返品される側にも朝があって夜があって、好きな食べ物があって、眠れない夜があることを、あなたは一回も考えなかった」
息を、ひとつ。
「三日かけて、柵越しに僕を見積もった。その三日で、僕に一度でも聞きましたか。誰に隣にいてほしいか。聞かないで答えを決めて、見積書を出す。ある所ではそれを押し売りと呼びました。……ついでに言うと、昨日の『検討します』は、遠回しなお断りです。通じてなかったなら、いま言い直します」
カシアンが、干し杏を口に入れたまま固まっていた。
「僕は非売品です。でも、それ以前に、フィオナも、あなたも、非売品なんです。いや、そもそも品ではありません。人に値札を付けた時点で、商売も、恋も、そこで終わる。
——全部、間違ってる。ひとつも、拾えるところがない。
ですからあなたが他より数字ができるくらいで他人を貶めていい理由にはなりません。
少々……いえ、少々などではなく思い上がりすぎではないですか? 不愉快です」
言い終えたとき、広場は水を打ったように静まり返っていた。少し言い過ぎたか。
「ユーリ」袖が、きゅっと引かれた。
———
私——フィオナは、彼の袖を握っていた。
止めたかったのか、縋りたかったのか、自分でも分からない。
ただ、これ以上は、心臓が持たない。うるさい。私の鼓動なのに、私より先に、三十歩先まで聞こえていそう。
だって、ずっと怖かったのだ。川が見えなくなってから、毎朝、指を折って数えていた。ユーリの隣にいる理由。耳がある。ノズルが作れる。鈴を鳴らせる。——数えるたびに、減っていく気がして。
あの人の言ったことは、ひどかった。でも、いちばん刺さったのは、ひどかったからじゃない。私が毎朝、自分に言い聞かせていたことと、同じだったからだ。
それを、ユーリが、全部数えて、全部間違いだと言った。大声でもなく、やたら丁寧な言葉で。この人は、怒るほど敬語が整っていく人なのだと、今日初めて知った。
……かっこいい、が、先に来てしまった。ごめんなさい、ペトラさん。いまだけは。
不思議と、怒りは湧かなかった。怒る分は、ユーリが全部、使ってしまったから。
「ごめん。勝手に、怒った」
彼が振り返って、いつもの顔に戻りかけて、戻りきれなかった。「その、席がどうとか言われて、だから、つまり、僕の隣は——いや、席っていうか、その、君が——」
右眉が、ぴんと上がった。
嘘じゃない。ただ、恥ずかしいだけ。この人は、本当のことを言うときほど、眉が嘘をつく。
「……あ」
何か気づいたような小さな声が、ペトラさんから漏れた。
「なんですか?まだ何か言いたいことが?」
ユーリが眉をひそめながら言うと肩が少しびくっとしてずっと一定だった彼女の鼓動がばらけた。
「あ……ええと、失言でした。撤回します。謝罪は、頭が整理できてから、ちゃんと。……今日は、帳簿を閉じます」
深く一礼して、彼女は背を向けた。
「……俺、今日の夕飯、味がしないと思う」カシアンが、そっと呟いた。
作業が散って、人の声が遠くなってから、私は荷車の上で膝を抱えた。「杭が、百四十二本……」「フィオナ?」「いま、数えてるの。顔、見ないで。とても見せられない顔をしてるから」
隣に、ユーリが座る気配がした。「さっきの、勢いだった」「勢いだけ?」「全部、本気」
……ずるいよ……もう
膝に、顔を埋めた。耳まで熱い。
もう杭をどこまで数えたか分からない。喉まで言葉が来てるのに、出てってくれない。
ユーリも周りを眺めていたから、しばらく二人とも黙っていた。
「私ね、毎朝、数えてたの」やっと話せた。いつもはもっとスラスラ言葉が出てくるのに、こと恋愛ではなんでこんなに情けなくなってしまうのだろう。
「ユーリの隣にいる理由。減っていく気がして、怖かった。……あの人が傷つけたんじゃないの。私が、思ってたことを、そのまま言われたから」「理由?」
顔を上げて頷くと、彼は驚いた顔をした。
「そんなことを考えてたのか」
「ペトラさんが襟を直した時からは特に」
「そっか……ごめん。僕のせいだ。
あの時きっぱりと、自分の隣にはフィオナがいて、愛している。理由なんか関係ないって言うべきだった」
「じゃあ、今」
「君だけを愛してる」
即答……
ああ……なんてかっこいいんだろう。
距離が近くて彼の整った顔がよく見える。
ふ、と息が漏れた。笑ってしまった。私は変な空回りをしていただけだったのかな。
空っぽの左手首を、また右手が探す。そこへ、大きな手が先に来た。鈴のあった場所を、そっと握られる。
「鈴の代わり。……嫌なら、離すけど」「離さないで」
———
三日で、庭は四つになった。
本庭、第一、第二、第三。ペトラの貸借台帳は、翌朝、ゲルトさんの机に「ご査収ください」の一枚と一緒に置かれていた。
字は、きれいに整っていた。本人の姿は、なかった。ゲルトさんが鼻を鳴らして「仕事は、きちんとしとる」と呟いたのが、評価のすべてらしい。
数字は、こうなった。本庭が三百四十一人、第一支所が百二十、第二が八十五、第三が七十五。合計、六百二十一。千まで、あと三百七十九。
四つ目の庭が根づいた夜、食堂に、また全員が集まった。決まりの紙の八行目の下には、まだ余白がある。何を書くかが、今夜の議題だった。別に書かなくてもいいんだけどね。
「まず、数字だ」ゲルトさんが、紙を広げる。「来る人間は、日ごとに減っとる。この一週間で九十七人。前の週は百六十。歩ける者が、もうそう残っとらんのだ。この減り方なら、千に届くのは早くて三月先。いや、千に届くこともないかもしれない」「向こうが、数え直さなければ、の話だ」とクルト。
「数える目は、こちらが潰した。次の目を差し込むまでが、窓だ」
「ミロが、思い出した」
ハンスが、腕を組んだまま言った。言いにくそうだった。「糸を切ってから、頭がすっきりしたらしい。数を聞かれたあと、二回に一回、別のことを聞かれてたそうだ。『娘は息災か』って」
食堂の空気が、動いた。誰も、フィオナを見なかった。全員が、見ないようにしていた。
「それだけじゃないの」
フィオナが、小さく手を挙げた。
「糸の向こうから、声がしてたの。若い女の人が『今の騒音は何』って。そのあと、男の人が『鍋であります』って」
一拍。「……鍋であります」「そう」「魔族に鍋で説明が通じたのか」
カシアンが、咳き込みながら笑った。
「人類史上初だ。いや、魔族史上かもしれん」
笑いが、広がった。不思議な話だ。敵だと思っていた相手に、こちらと同じ種類の騒がしさがある。鍋に驚いて、部下に怒鳴って、それでも命令書には三重丸を書く。
「それとね」フィオナが、笑いを引っ込めた。
「向こうの端は、丘じゃなかった。石の、広い部屋の響き方。糸を束ねて、一本ずつ数える場所。……首都だと思う」
「命令書の一行目が、要る」
「『ゆえに』の前。あの隊長は、読みたがってた。つまり向こうの兵隊も、読ませてもらえてない。理由を知ってる人間は、首都にいる。千が誰の数で、何が起きる数なのか。分からないまま株分けを続けても、的外れになる」
「首都の旧王城の地下に、帝室種苗庫がある」
ゲルトさんが、ぼそりと言った。
「帝国が三百年かけて、世界中から集めた種だ。麦だけでは、庭はそう遠くまで広がらん。灰に強い種が残っとるなら、そこだ」
種。聞いた途端、庭師の血が、勝手に騒いだ。「首都までは、馬でひと月半。往復で三月。……ぎりぎりだな」「ぎりぎりは、僕の得意分野です」「胸を張るところではない」とクルトが言った。
メンバーは、あっさり決まった。というか、僕が勝手に決めた。僕、カシアンさん、冒険者の二人。馬は三頭に荷馬車一台、前回と同じ編成。残るのは、ハンス、クルトさん、ゲルトさん、領主様、そしてフィオナ。
作業小屋で荷物表を書き終えたとき、背中に声が刺さった。「ユーリ。名簿に、私の名前がないんだけど?」
荷物表の紙を、彼女が持っていた。人数は四人。その中に、フィオナ・エルゼルトは、いない。「……ああそれは」「理由、聞かせて」
「首都は巣だ。敵が欲しがってる目を、巣のど真ん中に連れていく馬鹿はいない。『娘は息災か』って聞かれてるんだぞ。それに留守を守る人も、必要で——」「それ、半分、言い訳でしょう」
ばれている。計算の九割は本当で、残りの一割が、ただの我儘だ。
「欲しがられてるなら、庭に残るほうが危ないわ。ユーリのいない庭へ、向こうは好きなときに、好きな形で来られる。門の署名も、決まりの紙も、私の耳には追いつけない」「それは——」「それに」
彼女は、荷物表を机に置いた。「前の、種と道標の旅のとき、私、四日間、門の足音ばかり数えてたの。鈴が聞こえてからも、食堂の前で三十七歩ぶん、待ったのよ」「……数えてたのか」「待ってるあいだは、手が余るから。決まりの六行目も、私が書いたでしょう。ユーリは必ず帰ってくる、って。あのとき、ペンが折れるかと思った。強がりの字は、きれいに書けるのよ」
胸の真ん中に、まっすぐ入ってきた。
「ノズルを作ったのは、ユーリが無事に帰ってくる確率を上げたかったから。でも、『私が行かなくても大丈夫』にするためじゃなかった。
……守られるのが嫌なんじゃないの。守られるだけの席に、座らされるのが嫌」
彼女は、小さく息を吸った。「あなたが言ってくれたでしょう。人に値札は付けられないって。だったら席は、置いていかれる場所じゃない。一緒に、座る場所よ」
……自分で言った台詞に、足を踏まれた。しかも、的確に。「却下したいんだけど、さっきの僕が、反対側から押さえてくる」
「でしょう?」
フィオナは、にっこり笑って、小屋の隅の布を剥いだ。そこには、見覚えのない荷が、きちんと一人分、結わえてあった。ご丁寧に、僕の靴下まで繕って入っている。
負けた。完敗だ。
「……条件がある」
「席の?」
「僕より先に寝ること」
「それ、お願いでしょう」
「お願いです」
「聞くわ。ユーリが、私より先に寝たらね」
ほう、興味深いことを言いなさる。さらさら聞くつもりはないのだろう。
そして僕は、眠れる気がしない。
———
出発の朝、門の左右には、ハンスとクルト。昨日までなら絶対に揃わなかった立ち位置が、今朝は鏡みたいに揃っていた。
「ひと月半で、着け」とクルト。「ひと月半で、戻れ」とハンス。
「欲張りだな」
「「だからなんだ」」
今回は、二人とも、嫌な顔をしなかった。
年配の女性が、フィオナに小さな包みを渡して、僕には何も渡さなかった。扱いの差が激しい。
門を出てすぐ、一つ目の道標に着く。黄色い花の隣に、第一支所の旗が立っていた。庭が、もう、庭の外にある。
帳簿の端、北西の丘に、ぽっかりとした空白がひとつ。じっと、こちらを向いていた。見ているのだろう。
見晴らし台は、くれてやらない。
まあ見物席ならいくらでも。どうぞ、ゆっくり。
そうして、僕たちは首都へと歩みを進める。
庭は四つ。株は、もう分けてある。僕らは、「ゆえに」の前の一行を、拾いに行く。千の、本当の意味と一緒に。
柄尻で、鈴が、りん、と鳴った。隣でフィオナが、その音に耳を澄ませて、満足そうに笑った。




