メッセージ
その日の帰り
天音
(はぁ…)
今日はやらかしてしまった…
来客にお茶を持って行ったのだが
テーブルにつまづき…
派手にこぼしてしまった
お客様のスーツに…思い切り…
部長に怒られたのはもちろんだけど…
「もう入社して5年だよ?本当使えないよね…」
「新入社員の方がよっぽどできるんじゃない?笑」
女性社員の声の方が胸に突き刺さっていた…
使えない人…そう言われても言い返す言葉もない
電車の窓に映った自分の顔…
なんて情けない顔してるんだろう
こんな私、嫌いだ…
気づいたら目から涙が溢れていた
慌ててハンカチを出そうとした時
「天音ちゃんっ」
まだ聞き慣れない声がした
(え?水瀬さん…?)
慌てて涙を拭く
祐希
「同じ電車だったんだね、おつかれ!
って、どうした?」
天音
「いえ、なんでもないです」
(ごまかせた…かな…)
祐希
「何でもないって顔じゃないけど… 」
「あ、そうだ
せっかくだからさ
電車降りたらちょっとコーヒー飲んで行かない?」
天音
「すみません…今日は…ごめんなさい」
祐希
「そっか…大丈夫だよ
また行こう
でも、俺、聞き上手だよ?」
そういうと天音の頭にポンッと手を乗せた
天音はまた涙が溢れそうになっていた
こういう時、いつも部屋に篭り一人で泣いていた
麻央にも…話を聞いてもらうことはなかった
仕事で失敗して
陰口言われたからって
泣くなんて…恥ずかしい
こんなとこ誰にも見られたくない
祐希
「天音ちゃん…
泣いたっていいし
悲しい時は悲しい
辛い時は辛いって言ったっていい
我慢しなくていいんだよ」
堪えていた涙がまた頬を伝った
天音はすんっと少し鼻をすすり…
「…大丈夫です」
そういうとさっとハンカチを取り出し
ほおを拭った
電車を降りると
「お疲れ様でした…」
それだけ言って、一人足早に帰宅した
玄関に入ると
カバンを投げ出し
ソファに突っ伏した
(私何やってんだろう…もうほんとにダメだ)
。
。
。
(ピンポン)
しばらくして玄関のチャイムがなった
インターホン越しに映るのは水瀬だった
天音
「はい…」
祐希
「天音ちゃん、コーヒーここ置いとくから後で飲んで」
………。
(コーヒー…?)
天音は少しして玄関のドアを開けてみた
そこにはコーヒーが置かれていた
紙のカップには
『今日もお疲れさま
頑張ったね 』
そう手書きで書かれていた
甘いキャラメルの香りが
天音のポッカリ空いた心の隙間に
優しく染み込んでいった
天音
「水瀬さん……」
天音は飲み終えたカップを洗い
靴箱の上に置いた
仕事から帰ってきた時に
1番にこのメッセージが目に入るように…
天音の気持ちはゆっくりと鎮まり
朝までぐっすりと眠ることができた
。
。
。
祐希
「…キザ過ぎた?かもな…汗
俺が…こんなことするなんて…笑
相当天音ちゃんにハマってるかもな…」
自分の行動が自分でも信じられない祐希だった




