流行病(5)
女神様。噂で、こうしてお手紙を女神像にお供えすると、お願いが届くと聞きました。ぜひ、お力をお貸しください。
この町では、今、恐ろしい病が流行しています。体中の穴から出血する、出血病です。看病する者は感染しやすく、増える一方です。
でも、早く薬を飲めば大丈夫だと聞いていますが、問題は、薬が足りないことです。この町だけでなく、近隣の町の冒険者からも薬草を届けてもらい、ギルドで全力で調合しているにもかかわらず、足りないのです。
それで、救護院でも収容しきれず、家で寝ているしかない状態です。それで、ますます患者が増えています。
でも、私は知っています。薬師ギルドではたくさんの薬を作り、こっそりとギルド長と町長で隠し持っているのです。自分たちや家族の分を確保できたら、残りを高額で売り始める計画だと聞きました。お金が足りない人は、経済奴隷として売るつもりです。
でも、その前にたくさんの人が死んでしまいます。そして、薬のために奴隷になった人は、家族と別れなければなりません。
どうか、助けてください。私は町長の家でメイドとしてお仕えしていますが、この話を立ち聞きして、目の前が真っ暗になりました。誰に訴えればいいのか、見当もつきません。どうか、女神様。お願いします。
その手紙を読んで、深くため息をついた。
「どこにでも悪い奴らはいるもんだわね」
「まったく。許せないね」
「その薬をどうにかして表に出させたらいいんだけどお」
どうしたものかと考え込む。
「そいつらを罪には問えないのかね?」
「あの町のトップたちが手を組んでいるんでしょう? それより偉い人って……誰かしら」
「王様とかじゃないの?」
こちらに呼び出され、町へ放り出せと言っていた男を、全員思い出して、シロまでもが同時に言った。
「あれはだめだ」
上前をはねるだろうという想像しか思い浮かばない。
「とにかく、ご飯にしよう」
「そうだね。まずは頭にも栄養だよ」
「今日のご飯はなんだ」
「炊き込みご飯よお。それと焼き魚と菜っ葉のおひたしにお味噌汁よお」
私たちは食卓に着き、いただきますと言ってから箸を取った。
食べている間は薬のことは話題にしなかったが、皆、どうすればいいかと考えていたのだった。
食べ終え、片付けまでして、よっこらしょと座る。
「さて、どうしたもんかねえ」
「やっぱり、打ち壊しじゃないか?」
「米騒動ならぬ薬騒動ってところかしらあ」
お茶をすすりながら言っていると、シロも毛繕いをしながら話し合いに参加した。
「正面から乗り込むのか? 警備の騎士もいるし、ただの狼藉者として捕まるだけだと思うね」
まあ、それはそうだ。
「となると、やっぱり」
「アレかね」
「アレね」
私たちは頷き合うとにやりとし、いそいそと立ち上がった。
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