表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/62

第三十二話 ブランクは埋められないけれど

「ゴルザンさんって、育児経験あるんですか?」




「ねぇな。たぶん想像以上にすげぇぞ、あれは」




「何を根拠に……」




「昔、一日だけ甥っ子預かったんだよ。半日で俺のメンタルが半壊した」




「それは、うん……育児の凄さ、ちょっとわかった気がします」




カララン、と鈴の音が会話を遮った。




「失礼します。本日、面談の予約をしていた者です」




現れたのは、穏やかな雰囲気をまとった女性。

年の頃は40代前半、落ち着いた目元に、少しだけ緊張の色が見えた。




「エリナ=ベレッタと申します。医療受付をしていたのですが、子育てのために10年ほど離れていまして……そろそろ、復職を考えていて……」




ミーナは丁寧にうなずきながら、履歴書に目を通す。




「受付歴も長いですね。患者対応から、スケジュール管理、書類作成まで──」




「はい。ただ……正直、医療の現場は日々変化していますし、ブランクが長いと、もう追いつけないかもしれません」




「でも、子育ても長く続けてこられたんですよね?」




「ええ。二人、下の子も今年から大学です」




「それって、すごいことだと思います」




「……でも、何か役に立つんでしょうか」




そこで口を挟んだのはゴルザンだった。




「立つさ。子育てで鍛えられるスキルってのは、現場の実務以上に“人を見る目”と“根気”が養われる。特に、今の若いのを導くにはうってつけだ」




「導く……?」




「ある施設から、子どもの生活支援員を探してるって話が来ててな。養護福祉施設の仕事だ。医療的な理解も必要で、親代わりに接することも多い」




ミーナがパッと顔を上げた。




「まさに、エリナさんにぴったりじゃないですか!」




「え……でも、私にできるんでしょうか……?」




「できますよ! 子どもを育てたお母さんが、他の子にも手を差し伸べる。すっごく素敵だと思います」




エリナは少し戸惑いながらも、目元がゆるんで、静かに笑った。







──数日後。




養護福祉施設にて、彼女はすでに子どもたちに囲まれていた。




「ブランクがあるからって、すべてがゼロになるわけじゃないんですね」




報告書を読み上げながら、ミーナが呟く。




「むしろ、積み上げてたからこそ、今の自分になれたってことだな」




「……なんか今日、ゴルザンさんがちゃんとしてます」




「言い方に棘があんぞ、ミーナ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ