第三十一話 大陸全土調査隊
「……ゴルザンさん、なんか最近、妙に“導かれてる”気がしません?」
ミーナが朝の帳簿整理をしながら、ふと呟く。
「導かれてる……?」
「偶然にしては、タイミングが良すぎたり、ちょっとスピってる依頼が続いてるというか……」
「……まさか、お前、またゼンの影響受けてねぇか?」
「うっ……いや、ないとは言い切れませんけど! あの残留思念、妙に印象深かったので……」
「またわけわからん水持ってこられても困るだろ、普通」
「そりゃまあ、そうですけど……」
そんな会話の最中──
カララン、と扉の鈴が鳴った。
「失礼します。本日、面談の予約をしておりました」
現れたのは、柔らかな表情をした30代くらいの女性。
服装は旅人のような、少し動きやすそうなラフさと、どこか漂う“神秘感”。
「ルナ=アルケイラと申します。営業職を辞めて、次の仕事を探しています」
「ようこそラストリーフ支部へ。では、さっそくご相談を──」
ミーナが案内しつつ、登録資料に目を通す。
「履歴には……えっと、営業職が7年。その後は……“各地の遺跡や秘境を巡っていた”?」
「あ、はい! 趣味で全国の不思議スポットを巡ってまして。遺跡とか、伝承の残る場所とか──夢があって、いいですよね」
「すごく楽しそうですけど、それって……お仕事だったんですか?」
「完全に趣味です。貯金でまわってました」
「……」
「……そろそろ働かないとまずいなって気づいて、ここに来ました」
「めちゃくちゃ正直!!」
「いや、まあ……楽しかったんですけど、お金は減りますからね」
ミーナは苦笑しつつも、どこかゼンのときに感じた“既視感”を覚えていた。
「でも、旅先で得た知識とか、地図の読み方とか、土地勘にはちょっと自信あります」
「ふむ……」
ゴルザンが腕を組み、少し考える。
「行動力もあって、現場慣れしてて、話もできる……だったら、“現地調査員”ってのはどうだ」
「えっ」
「遺跡とか伝承を特集してる出版ギルド、現地に詳しい外注スタッフ探してたんだよ。写真撮って、レポート書いて、場合によっては現地の案内もする──」
「……それ、めっちゃやりたいです」
ルナの目がキラキラと輝いた。
「ふっ、ロマン追いかけて職にするってのも、悪くねぇな」
「……ゼンの霊圧、また感じてませんか?」
「感じてる。完全に感じてる」
──数日後。
ルナ=アルケイラは、紀行記を発行している出版ギルドと契約し、
現地取材スタッフとして新たな旅路へと出発した。
ミーナが渡した最初の紹介状の宛名には、こう書かれていた。
“この者、ロマンと現実のはざまで輝ける逸材なり──導かれてきました”




