第二十八話 支柱がなければ折れるのは当然
「今日の面談、午後の部はどうなってる?」
「えっと……あ、キャンセルがひとつ……いえ、もうお一人いらっしゃるみたいです!」
カララン、と扉が開く。
現れたのは、質素な旅装の青年。
年齢は二十代半ば。体格は悪くないが、どこか“気配の薄さ”を感じさせる。
「……求人、見させていただいても、よろしいでしょうか」
声もまた、目立たぬように、静かだった。
「もちろんです。えっと……失礼ですが、お名前を──」
「リド=カルナー、と申します」
提出された経歴書。
その欄には、目立つ実績こそないものの、多岐にわたる業務記録が並んでいた。
物資管理、宿営設営、移動ルート調整、書類作成、体調管理、連絡補助、雑務一式──
すべて、冒険者パーティでの“裏方”としての仕事だった。
「えっと……もしかして、全部お一人で?」
「はい。元々、六人パーティでしたが……最後は、私と前衛の方だけになりまして。
その方も、怪我で引退されて……」
「じゃあ、リドさんは……」
「抜けました。……さすがに、限界だったので」
ミーナが言葉を詰まらせる。
「……すみません。なんというか、もっと早く、誰かが……」
「誰かが気づいてくれていれば、違ったかもしれませんね」
リドは、自嘲気味に笑った。
「“支える役割”って、目立たないから、誰も見ていないんですよ」
その言葉に、ゴルザンが小さくうなずいた。
「支柱がなきゃ、折れるのは当然だ」
「……え?」
「誰も褒めねぇし、報酬もつかねぇ。でも、支えてるやつがいなきゃ、パーティなんざ成立しねぇ。
……お前は、ずっと支えてたんだろ」
リドの目が、わずかに揺れる。
「今、管理局のほうで、“小規模パーティ支援チーム”の人員募集がある。
ギルド側のサポートってやつだ。今度は、裏方じゃなく“支えることが役割の部署”だ」
「……俺に、務まりますかね」
「務まるさ。お前は、散々やってきたじゃねぇか」
ミーナが、笑顔で資料を差し出した。
「“ありがとう”って、ちゃんと届く場所で働いてください!」
──数日後。
リド=カルナーは、ラストリーフの隣町にあるギルド支援課に配属された。
彼の業務日誌には、こう記されているという。
『連絡調整済。補給指示完了。新規パーティ登録補佐も完了。……上司に“助かる”と言われた』
その最後の一文だけ、他より少しだけ文字が濃かった。




