933、峠の朝
日の出前、加須はテントより這い出て、岩に向かって小便をした。朝立ちしていたので、野外をいいことに、一物の立ったまま、放尿した。尿は勢いよく上に噴き上がり、加須の身長くらいの高さまで岩を濡らした。
加須はついでにオナニーをしようと思った。
アリシアが眠っているテントを見た。
それからふと東から日が上がるのを見て、なぜかやめて一物をパンツにしまった。
他のテントからポルトスが出てきた。
「ああ、おはよう、ポルトス」
「おお、加須か、早いな」
ポルトスも岩に向かって放尿した。
ポルトスは放尿しながら言う。
「今朝は寒いから、温かいスープを作るよ」
加須は喜んだ。
「それはありがたい」
そのあと、ひとり、またひとりと、テントから出てきた。
アリシアとラーニャとオーリはみんなから離れた岩陰に行って、放尿した。いや、ウンコもしたかもしれなかった。
一同は揃って、ポルトスの作ったスープを飲みパンを食べた。
テントを畳み馬に積むと出発した。
ユリトスは、ラミナから預かった二羽のカラスのうち一羽に手紙を括り付け、飛ばした。
オーリは訊いた。
「何を書いたんです?」
ユリトスは答えた。
「うむ、三日目で峠を越えたことの報告だ。奴らにどの程度の日程でガンダリアに着けるか知らせておくのも大事だろうと思ったのだ」
オーリは言う。
「そういえば、もう、ラミナ以外魔法使いは、私の回復魔法と九頭の聖剣あるいは加須とアリシアの歌を魔法と見做せば、それしかありませんね」
「そうだな。ナナシスなどは思えば役に立つ男だったな」
「そうですね」
オーリはナナシスを思い出し、悲しい気持ちになった。この旅は出会いと別れの旅だ。そして、オーリからすれば、最初からいた五味たちが去ることは信じられないことで、それがこの旅の終わりのような気がした。ガランの野望を阻止するなどは、おまけに過ぎないような気さえした。それが人間の世界を救うという重要なことであるにも関わらず。
一行は下り道を下った。
樹林帯に入り、目指すガンダリアは、木に隠れて見えなくなった。
それでも少しずつガンダリアに近づいていることは確かだった。




