934、ベランとネズミのドラゴンの策
ガンダリアの王城が五芒星の結界に包まれた夜、王城内にいたスパイたちの変身師は魔法が解かれドラゴンになった。彼らはすぐに王城内の兵士らによって殺された。変身師たちはスパイ能力はあったが戦闘力はない者が多かった。
朝になると事件の噂は王国内にすぐに広がった。
「王妃様が攫われたんだって?」
「おお、恐ろしいわ」
「ガランとかいう、ドラゴンの王が攻めてきたんだよ」
「戦争になるのか?」
「嫌だねえ」
「王妃様が攫われたってどうやって?」
「ドラゴンたちの変身師がたくさん兵士に化けて王城内にいたんだと」
「いつからいたんだろう?」
「まさか、あんたもドラゴンじゃないだろうね?」
「俺が?まさか」
「三十年連れ添った旦那がドラゴンだったとかいうのもあるのかね?」
「それも怖いね」
そんな噂は王国の南側にある森の中まで届いた。
そこにはロンガからやって来た、ドラゴン・ベランと、その十勇士、いや、ニャントスがいなくなったため九勇士と言った方がいい、一味が潜んでいた。
九勇士のうち、ネズミのドラゴンが森の近くの農家から、情報を仕入れてきた。
ネズミのドラゴンはベランの手に乗り言った。
「ベラン様、どうします?」
ベランは言った。
「ガンダリアにはドラゴンやドラゴンナイトはいないのか?」
「さあ、どうでしょう?いないはずはないでしょうが、いたとしても奴隷なのではないでしょうか?」
「バトシアと同じということか?」
「そのようですね」
ベランは言う。
「どうする?ガランに先んじるには、俺たちがドラゴンの秘宝か、三王子を連れていけば願いを叶えてくれるというドラゴンを先に見つける必要があるな。しかし、願いの方は三王子を連れていかねばならない。どうする?」
ネズミのドラゴンは言った。
「これは俺が前々から考えていた策ですが・・・」
「言ってみろ」
「ユリトス共と組むのです」
「なに?」
「奴らはこちらに向かっているはずです。奴らの仲間になれば、ドラゴンの我々も堂々とガンダリアの王都に入れるでしょう。それより何より、三人の王子が願いを叶えてくれるドラゴンに出会ったところに立ち会えるチャンスは奴らの仲間になるのが一番の得策です」
「得策には違いないが、あいつらが仲間になってくれるかな?」
「なにか奴らが魅力を感じるものをこちらが持っていればいいのでは?」
ベランは腕組みをした。
「あいつらになくて、俺たちにあるものか?」
ベランは自分の手を見た。
「この爪はどうだ?」
ネズミのドラゴンは首を横に振る。
「いえいえ、奴らは剣を持っています」
「そうなると・・・」
ベランは目を丸くして言った。
「これだ!」
「どれだ?」
部下の失礼な言葉使いも無視してベランは言う。
「翼だよ。俺たちは全員飛べる。だが、奴らに空を飛べる者はひとりもいない」
「それは名案ですね」
ベランは他の九勇士に対して言う。
「俺たちは三王子の連中の翼になるぞ。屈辱的だが、生き残るにはそれしかない。そして、俺たちの願いを叶え、ドラゴンの秘宝もガランより先に手に入れるのだ」
「おおー!」
「よし、ドラゴン街道に出て、奴らが来るのを待つぞ」
「おおー!」




