932、ガラン王の歩く城
ミラル王妃は馬車でガランのスパイ組織スパイダーズのリーダーで変身師のドラゴン・トキオと共にガランの歩く城に到着した。
歩く城の前に馬車を止めたトキオは言う。
「この歩く城に入るには、足から入らねばならない。足が地面についたときがチャンスだ」
実際に前足が地面についた時を狙って御者は馬車を走らせ、足の外側にある洞窟のような穴に馬車を駆け込ませた。
中は洞窟のようだったが、なんとエレベーターがあった。そこの床にある丸い文様の中に馬車が入ると、その丸い床はウィーーーーンと上に上がった。途中横にスライドしたようにミラル王妃は感じたが、それは膝を通ったのだと、トキオは教えた。
広い部屋に着いた。そこには馬車がいくつも停まっていた。
トキオは言う。
「ここは下から登ってくる場合の玄関だ。まあ、俺たちドラゴンは翼があるから、空中用の出入り口から通常出るがな。さあ、足の縄を解いてやる。降りろ、ガラン様の元まで案内する」
ミラル王妃は手は縛られたまま馬車から降りて、トキオに従い、洞窟のような廊下を歩いた。廊下には等間隔に灯が灯されてある。
すると、トキオはまたミラルを連れて、丸い線の描かれた床の上に立った。
床はまたエレベーターのように上に上がった。
すると広い場所に出た。
そこから少し廊下を歩くと、岩の扉があった。
トキオはその前に立つと言った。
「ガラン様、ガンダリア王妃ミラルを連れて参りました」
すると岩の扉は自動ドアのようにスライドして開いた。
そして、奥の暗闇から、「入れ」と低い声が聞こえた。
そこからしばらく廊下を歩くと、また広間に出た。
正面の壁は全面ガラス張りだった。いや、ガラスではない特殊な素材のような透明な板だった。
それを見ていたミラルの頭上から恐ろしい声がした。
「来たな?」
見上げると、ミラルの右側に巨大な石の椅子に座ったドラゴンが、牙を剥いて、彼女を見下ろしていた。
「おまえがガンダリアの王妃か?」
ミラルは毅然と答えた。
「そうです。あなたは誰です」
巨大なドラゴンは笑った。
「がはははは、俺に名を名乗れか?さすがだ。俺はガランだ。魔王ともドラゴンの王とも言われている。この世を人間の世からドラゴンの世に変えるためにドラゴンの秘宝を探している。一説に寄れば、ガンダリアにそれはあるそうだな?」
ミラルは答える。
「私は知りません」
「ふふふ、まあ、そう言うだろうな。だからおまえを誘拐させた。ガンダリア王に秘宝探しを手伝わせるためにな」
「ドーミ王はおまえに手を貸したりはしません」
「王妃が人質になっていてもか?」
「彼は私を助けるため軍勢を率いてこの城まで攻めてくるでしょう」
「ぐはははは、そんなことをしたら、おまえを殺すと脅してやるよ。王がおまえを愛しているならば、必ず従うだろう。万が一攻めてきても、おまえを殺してガンダリア軍を全滅させる力はこちらにはある。だが、そのあとの秘宝探しが面倒だがな」
ミラル王妃は言う。
「私を人質にしている限り、ドーミ王は秘宝探しはしないでしょう?」
「何だ?政治か?俺と外交交渉をしようと言うのか?どうせ、おまえを帰しても秘宝探しはしないのだろう?だが、俺は面倒でも人間の力を借りずドラゴンだけで秘宝を探すという選択肢もあるのだ」
「では、なぜ、私を攫うなどという姑息な手段に出たのです?」
「ふふふ、俺も男だ。妻が欲しくてな。人間の王妃を妻にするのも一興かと思ったのだ」
ミラルは恐怖で震えた。政治的な態度では毅然と対応できたが、巨大なドラゴンに犯されるかもしれないと思うと、恐ろしくて堪らなくなった。
「ふふふ、震えているな。かわいい奴め。だが、安心しろ、俺は女に手荒なことはしない。ただ、おまえには自分で服を脱いでもらう。俺はおまえが脱ぐのを待つ。いや、いずれ脱ぐさ。俺こそが世界の王だからな。がっはっは。おい、アンジよ、王妃を部屋に案内しろ」
アンジと呼ばれた小柄な老ドラゴンは答えた。
「かしこまりました」
アンジは兵士のドラゴンに言う。
「おい、王妃をお連れしろ」
「はっ」
ミラル王妃はアンジと兵士ふたりのドラゴンに連れられ、王の間を出た。




