第22話:トロルンに乗って旅に出ました。
――俺は出会ったばかりではあるが、セラティアさんの強いお願いで、次の目的地を風のエルフが住む村”ウェントゥスウィークス”にした。
高原地のウェントゥスウィークスまでの足として、赤角炎駒よりスピードは落ちるが、安く積載量がある”トロルン”と言う鹿の角が生えた牛を一頭購入した。
安いとは言っても銀貨二十七枚で日本円にすると八万千円ってとこだろうか?
懐には金貨十枚程度しか持っていないので無駄遣いできないが、トロルンに二人で跨ってウェントゥスウィークスまでの旅路に就く。
ミズドガルドで最初に着いた港”オリエンスポルトゥス”から出てすぐの辺りは、ゴツゴツした岩が彼方此方に転がっている。
トロルンはモフモフ感ゼロに等しいが力強く歩を進め適度な振動が心地よい。
俺の後ろに座ってしがみ付いているセラティアさんも最初はかなり緊張して固まっていたが、次第にトロルンに身を任せ揺られている。
ちなみに、時々背中にあたるハリがあるのに柔らかい感触で癒され幸せを感じているのは内緒だ。
夜を港で明かし早朝出発してから太陽が大分上がり岩場地帯を過ぎて草木が広がりだしていた。
そんな中で河川が見えてきた。
「あの河川で休憩しましょうか」
「揺れは心地よかったけどお尻がいたかったん、助かるわぁ……できれば……」
「できれば?」
「……水浴びしても構わない?」
そう言えば、俺も埃まみれで船に押し込まれ、ずっと風呂に入れていない。
俺も体を綺麗にしておくべきか
「じゃあ俺も水浴びたいので先にどうぞ、その間に火を熾しておきますね」
「ありがとう、じゃあ先頂くわぁ」
そう言うと、セラティアさんは大きな岩陰の後ろに消えて行った。
少しだけ覗きたいと言う悪魔の囁きを払いのけ、枯れ枝を集めて火を熾す。
ついでに光の矢で魚も捕まえ、師匠と出会って魔法を教えて貰いだした頃を少し思い出しつつ焼いて行く。
そうこうしていると濡れた薄水色のクロークを羽織っているが、フードを下ろしたセラティアさんが帰って来た。
手には中に着ていたであろう濡れた服を持っている。
「あぁ気持ちええわぁ……水に入れて生き返ったわぁ。」
濡れたクロークが肌に吸い付き、胸とお尻の膨らみのシルエットが露わになりエロい事になっているよ……
ついついジッと見てしまいそうになるが堪える
セラティアさんは頬を赤らめて腕で体を隠す仕草をして
「恥ずかしいからあまり見んといてなっ……それで魚炊いてくれたん?」
「ええ、乾かす間に火にあたりながら食べていて下さい、俺も浴びて来ます。」
俺はそそくさと服のまま川に飛び込んだ。
改めてアールヴヘイムからミズドガルドまでの事が頭の中に蘇える。
全身サッパリし頭をクールダウンするとセラティアさんと出会って、新たな道が示されたのは良かったのかもしれないと思えた。
師匠やリリーナ、シャルさんや子供達の事も気になり心配だが、なぜヴァルキューレが襲ってきたのかも知りたい。
その上で戦闘経験の乏しい俺に何が出来るのか……
俺が戻るとセラティアさんは中に着ていた服を大きな岩に並べ、魚を口に運びながら炎を見つめていた。
「おかえり。この魚、えらい味が薄いなぁ」
「塩とか無いのでただ焼いてしまいました……申し訳ない」
ボーッとしていて頭が働いていなかった。
調味料とか何も買っていないので味付けができていない。
「しゃあないなぁ」
そう言うと、セラティアさんは側に生えていた宝石のように光り輝く草を採り、草の表面についているキラキラ光る物を集めた。
「これなぁ、アイスプラントって言う草で表面のキラキラは塩なんよぉ」
「ほう!?」
このあたりの荒野はまだ海から近く、風や雨に塩分が含まれているために、草が吸い上げた水分の中から塩分を自分で隔離するのだとか
「セラティアさん詳しいですね」
「昔、アクアロンデに来ていた風のエルフに聞いたん気がするわぁ、小さい頃だったので詳しい事は忘れちゃった……」
ちょいちょい関西弁みたいな言葉が混ざるセラティアさん。
そう言えば、髪の色が薄黒くさが抜けて水色になった?
謎な部分が実に多いが聞いてしまって良いものか悩む。
休憩のつもりで立ち寄った河川だが、何だかんだ時間が過ぎ服も乾ききってないので、このままここで夜を明かすのもよいかもしれない。
幸いトロルンもその辺に生えている草をモシャモシャ食べていると言うか、光っているアイスプラントをペロペロ舐めているようだ。




