第23話:風のエルフの里で伝承を聞きました。
――日が落ちてから気が付いたが……
濡れた服は風魔法と火魔法で乾かせばアッと言う間だった。
焚き火を挟んで横になり朝を迎えた。
床は硬かったがのびのび寝れたのは久しぶりな気がする。
寝顔を遠目に覗いているとセラティアさんも目を覚ました。
「おはようございますセラティアさん」
「う~ん……あなた起きるの早いんね」
「前は牛達と生活してたりもしたので」
「へ~ぇ意外ね、もっとこうダラッとしてはるかと……」
「そうですか? これでも世界樹の麓で生活してた時もちゃんとしてましたよ」
「せやかて…………何でもないわぁ」
「じゃあ用意して出発しましょうか」
「川で顔を洗ってくるわぁ」
セラティアさんが顔を洗いに行ってる間に準備と言う程のものでもないが出発の準備を整えた。
戻って来て早速出発だ。
天気は雲一つ無い快晴で昨日に比べトロルンにも大分慣れたが、川を越えてから道のりが少し険しくなり徐々に標高を上げて行く。
段々と緑も増え風は弱いが空気が少し湿り気を帯びており霧がかってきた。
少し肌寒く感じつつもトロルンはマイペースに進んでいく、途中で野宿しつつ樹林帯に差し掛かった。
「ウチが聞いてた話やと樹林帯が見えたら風のエルフの領域て……」
周りから視線を感じる。
完全に樹林帯に入ったわけではないが数人に囲まれているようだ。
次の瞬間、一人のエルフが目の前に姿を現した。
「ここは風のエルフの里。何用か!?」
「ウチは海のエルフの巫女でセラティア。こっちは同行してもらった……」
「華房将生です。」
「して何用か」
「沿岸都市アクアロンデが光焔槍を持ち白鳥の羽衣を纏ったヴァルキューレの襲撃を受けて、修道長が風のエルフの族長様に伝えるようにとウチに」
「一つ付け加えさせて頂くと沿岸都市アクアロンデだけでなく、世界樹や周辺含めアールヴヘイムがです」
「分かった案内する」
しばらく進むとウッドデッキのような木でできた回廊が現われ、その奥には樹木の合間に家が建てられているのが見える。
なかなかに大きい建物のようだ。
内部へと案内され二階に進むと部屋の奥に族長と思わしき年配の男性が座していた。
「ほっほっほ、儂が風のエルフの族長じゃ。 おおよその事はそやつに聞いた」
「はじめましてウチはセラティア。お会いできて光栄です」
「俺は華房将生です。」
「儂ら風のエルフは上位には成れんかったがのぉ
人達に持てる知識で理を教えて説いてきた。
教え子となった者達は、ある者はエルフの街で店を持ち、ある者は村を作り、ある者は行商や旅人となり各地を渡り歩きと様々な事をしておる。
入ってくる情報はどのエルフより多いと自負できるのぉ」
「それは凄いですね」
「ウチの修道長のところにも行商人がよく来てたけど……」
「よく文を交わしたものじゃよ
そして、もしもの時には伝えて欲しいと頼まれておった、代々風に伝わりし予言の言葉があるのじゃ」
◇◇◇
トネリコの樹が立っていた。
それは世界樹と呼ばれ
高い樹、輝く土壌、露が垂れ、
谷に流れ落ち、ウルズの泉に永遠の新緑
彼女は最初の戦争を止めようとした。
彼女は光りし槍によって突き刺され、
彼女は三度焼かれ、
彼女は三度生き返り、
彼女は今も生きている。
美しき者は予言する巫女だった。
彼女は口寄せを知り、
彼女は魔法がよくでき、
魔法を用いた。
人々の間へと槍を放った。
それが戦争であった
世界で初めての
樹の壁は破れた。
光の子の街に戦争の魔法を紡ぎ、
それは地を歩いた。
怒りに膨れあがり
□□□は撃って出た
誓いには誓い
言葉と誓い
誓言の全てに重み
彼女は知っている
輝く樹の下
聖なる樹の下
彼女は見ている
一筋の流れ
豊かな流れ
◇◇◇
「何となく思い当たる節が……」
(彼女は口寄せを知り、魔法がよくでき、魔法を用いた……)




