光の討伐劇
後ろから声が聞こえる。慶斗は驚き、後ろを向いた。そこには、慶斗が今倒したばかりの人影と全く同じ人物だった。同じく暗いからか身体全体が真っ黒で見ずらい。
「またお前か。何だ、復活したとでもいうんか?」
慶斗は質問を投げかける。そして、
「そーだなァ……」
もう一人の人影はそう言い、地面を向いた。両腕をブランと下げ、脱力したように立った。すると――。
「「「俺「たち」は永遠に不滅というかァ、不死身っつーかァなあァ……」」」
影の至る所から、また瓜二つの人影が現れた。
「分身系の能力か、めんどくせーなあ」
(影から出てきたよな……。何体まで出せるとかの制限とかあるんかな。もしなかったらキツイ、てか終わる)
「最強」ってヤツなんだよなアアアッ!」
「久しぶりに面白そうなニンゲン……、しかしただのガキとは、これはこれは……。ワタシタチも舐められたものですねえ!」
「ハッハハハハハァ!やっと暴れられる!思う存分!」
それぞれの人影が叫ぶ。「久しぶり」、「やっと」、どれも別の人影として生きているのだろうか。別人格なのか、それとも全て能力により生きているだけなのか。
「はいはい、じゃみんなさよならな」
ザシュッ。ザッ。
慶斗は人影を次から次へと斬り倒していく。斬られた人影はみな瞬時に灰のようになり崩れる。しかし、
「聞こえなかったか?俺たちは永遠に不滅、不死身のカラダだ!お前がどれだけ斬ろうと無駄!」
一人の人影はとてつもないスピードで慶斗に向かった。
「チッ」
慶斗は路地裏から出て、街灯の下へ行った。するとその人影は慶斗に向かう足を止めた。
「やっぱり影から分身体作ってんのか」
慶斗は再び「影獣」を出そうとする。その時だった。
(ッ!?なんだ?気配!)
慶斗は慌てて横へ体を投げる。次の瞬間、人影が背後から慶斗の頭を狙って飛びかかった。
「ナニ?ヨケタカ。ヤハリタダノガキデハナイナ」
「フハハ!俺たちは確かに、影から生まれる。だが!されど影なんだぜ?」
直後、大量の人影が慶斗へ押し寄せた。慶斗は身をよじって躱す。
だがその人影は突如姿を消した。そして、さっきと同じように慶斗の背後から現れた。人影は爪を立てて慶斗の首元へ腕を伸ばした。今度は体勢が悪い
「影を移動できんのはおめェらだけじゃねえんだぜ!」
慶斗は影の中へ引きずり込まれるように入っていった。少し離れた場所からまた飛び出し、作戦を練る。しかし……、
「ハァッ。本当にムカつく野郎だな」
慶斗のうなじに浅く切り込みがあり、血がポタポタと垂れる。
「このスピードなら追いつけんだろう!そろそろ終いにでもしようか!!」
人影が叫ぶと、辺りの影から一斉に人影が出現する!今の押し寄せてきた大軍とは比べ物にならない程の量だ。
「クソッ……!「幻影 ブラック――」
刹那、先程までいた大波のような人影たちがほとんど消滅した。延々と続く闇を手にしていた慶斗は、すぐその闇を収束させた。
「何だ……?まだなんかあんのか……」
ハアハアと息を切らす慶斗の肩になにか当たる。手だ。誰かの手だ。慶斗はその方を見向きもせず、腕を振り払った。しかし、その手の正体は人影ではなかった。
白と金に輝くキラキラとしたジャケット、水色のジーンズに赤の帽子、おまけに向きは逆だ。
「お前っ……。光哉……!!」
「なんだよ、そんな驚いて。てかさ……」
光哉は何も無い所から白色に光るバットを手にした。バットはまるでミラーボールのように輝き、先端には星の形をしたものが浮いて付いている。バットの先端から星まで、少し隙間が出来ている。
「クッ……眩しい……!」
顔の前に腕を持ってくる人影はそっちのけ、光哉はバットを人影の方へ向けた。ホームラン予告だ。
「なにこんな陰キャみてーに暗えヤツに追い込まれてんだよ。よっしゃあ!この天才様に任せな!」
光哉は早速バットを振った。振られた空間からは光が生まれ、小さな星の欠片のように四方に散った。散った光が人影に命中する。
「ギャッ!なんて光だ……!消滅しかけるところだった……」
人影たちは後ろに素早く下がる。
「光哉!コイツらは一体でもいれば無限に影から出てくる!」
「ゴキかよ。だったらさ……」
光哉はバットを天に掲げ叫んだ。
「この辺り、全部キラッキラにすれば解決だな!」
「……どうやって?」
慶斗は意味が分からなかった。元々光哉の語彙力はほぼ皆無と言っても過言では無いのだが、今回は本当にミスることは出来ない。一度避けられてしまったら、ヤツらはその攻撃を覚えられてしまう。そうしたら今度こそ終わりだ。
「ッ……。なんナンダ……オマエハッ!」
「スターライト」
光哉がそう言うと、バットの先からまた光が出現した。人影らは身構えたが、その時にはもう遅かった。人影の大半は声も出せず消滅していた。
「な!?なぜ……。……ガキだからと、調子に乗るなよ……」
「光哉……」
慶斗は心配そうに光哉を見る。人影はまた影から分身体を出し、全員姿を消した。また来る……!
「気をつけろ!」
慶斗が叫ぶ。
「分かってる。安心しろって。だって……。「スターライト」はこれからの大技の前座!コイツだけでギャーギャー言って消滅してるようじゃ即死だぜ?」
「グッ……!黙れ!」
人影の大軍がまた光哉たちに押し寄せる。しかし――。
「よーし!早速この暗い路地裏に一粒の光を!「スターライト ミラーボール」!」
光哉はバットを人影に向かって振りかざした。同時に人影は咄嗟に周囲を見渡す。
「バーカ。ミラーボールが道路から生えてくっかよッ!」
人影らは驚き上を向く。空には、月のような眩しい球体が浮かんでいる。
「マズイ……間に合わナ――」
球体が撒き散らす閃光のごとく発せられる白い光は次々と人影を襲う。
「クソッ……クソォッ!」
最後の一体が光哉の背後に飛び出す。人影は拳を振るう。
「させねーよっ」
しかし、慶斗が人影を蹴る。
「ナイス、慶斗!」
光哉は既に体制に入っていた。慶斗が攻撃するよりも早く。
「……ナッ!?」
「分からねーか?」
その体制は、スイング。
「ホームランだよッ!」
振りかざしたバットは、人影の腹部を完全に捉えた。強烈な一撃に加え、ビカッとフラッシュが人影を殴った。
「ガアアアァァァッッッ――!!」
光を浴びた最後の人影は、分身体を作る間もなく跡形もなく消滅した。直後、辺りは静寂に満ちた。光哉はフッと息をついた。
「これで、片付いたか?」
続けて慶斗も、
「ああ、終わったんだ」
と言い、拳を突き出した。光哉はそれに応えるように、同じく拳を突き出しグータッチを交わした。
「ヘヘッ。んじゃ、帰ろーぜ」
そうして、二人は家へ歩いた。




