華佗の妹!?
「え?お、おい華佗、お前この子の……」
「この子今お兄ちゃんって言ったよね!?はっきりと!」
みんなから質問攻めされ再び賑やかになったが、華佗は滝のように汗を流しながら女の子に問いかける。
「お兄ちゃんっていうのは、血縁関係のある方の意味で?それとも、小さい子が俺たちくらいの人のことをお兄ちゃんお姉ちゃんっていうような意味で?」
正直、華佗自身も何を言っているか分からなかったが、女の子は応えてくれた。
「?お兄ちゃんは、私のお兄ちゃんだよ?」
華佗は完全に固まってしまった。
「私のって言ったよね!?完全に言ったよね!?」
「おい華佗!!本当にどういうことなんだァ!?」
夕霧に肩をガッシリ掴まれ、前後に乱暴に揺らされた。
十分ほど経ちやっと落ち着いてきた頃、華佗は再び女の子に聞いた。
「そういえば、名前は?」
「んー、裏譜!」
「んー」というちょっとした曖昧さと間が少し引っかかるが、みんなは考えた。
(なんか危なそうだけど、どうする……?クロムがこれだけ守ろうとしてたのなら、「計画」っていうのに関係あるんじゃない?)
(カプセルにヒビが入った時、魔物の気配がしたし関わると危険な気が……)
再び沈黙が流れる。しかし、華佗がその静寂を絶った。
「この子……裏譜を、守らない?」
「え……守る……?」
晶馬が問う。たしかに、みんなの考えていたことはどれも正しい。だからこそ、疑問が浮かんだ。
「仮に、クロムが本当に裏譜を利用して何かしようとしてたのなら、仲間かなんかが代わりに裏譜のカプセルを監視するだろう。裏譜の意識もちゃんとある訳だし、ここに置いていくことはできない」
しかし、華佗の言うことも間違いではなかった。
「裏譜がそれでいいなら、俺は賛成」
晶馬は小さく頷き、続けて話した。
「この話はクロムとかがどうしたいか、俺たちがどうしたいかじゃなくて、裏譜自身がどうしたいかってやつだろ?一回裏譜に聞いてみてそれで判断しよう」
「ウソ……、晶馬がまともなこと言ってる……」
「はったおすぞ」
晶馬と涼香のやりとりを無視して、卓は裏譜に話しかけた。
「ねえ、裏譜はどうする?ここにいる?」
裏譜はまた、んー、と唸り、はっきりと言った。
「もう、こんなところいたくない」
「そっか……」
「実は、もっと前から意識はあったの。食欲がないから食事とかしたことないし、眠気もないから寝なことないし、ただぼーっとしてぷかぷか浮いてるだけ」
話を聞けば聞くほど酷い話だった。
「自由がないなんて……。それじゃ、うちに来るか?下手に施設に預けるのも危険だと思うし」
夕霧がそういった時、裏譜の顔はパッと明るくなった。
「っ……!うんっ!」
「よしっ、決まりだな」
涼香は、裏譜の手を握った。
「立てる?」
手を引かれ、裏譜はなんとか立つことができた。あとは家まで戻るだけ。
「ところでさ……」
涼香の目線が華佗たちに向く。
「なんでみんな裏譜から目逸らすの?」
しかし、誰も答える者はいなかった。
「へっ。思春期共が……」
涼香は鼻で笑ってやった。
そうこうしているうちに、いつの間にか日が暮れていた。
「あ、もうこんなに暗くなってる。ここら辺人いないし、今のうちに家まで連れていこう」
そして、家に着くまで涼香率いる集団が裏譜に上着を着せたり、周りを囲って見られないようにした。
結局、クロムらの目的や裏譜の細かい情報は何もまとまらなかった。




