涼香の力
夏休み後半の学校閉鎖期間初日──。
早速、涼香がある人と戦っている。しかも佳逸のときと同じく人間だ。
「グッ……!こいつ、さっさと……!」
この男の名前は「クロム」。涼香と戦っている理由は、涼香が通った少し街から外れた所がクロムの縄張りとも言える場所だったかららしい。なんとも理不尽な理由だ。
「子供だからと容赦はしない!殺すッ!」
クロムは大きく両手を振りかざす。すると地面から銀色に光り輝く金属が勢いよく突き出てきた。しかし、鋭い先は涼香を掠めもしなかった。
「だから、同じ攻撃ばっかなんだから当たるわけないんだって」
涼香は強く踏み込んで避け、能力の「弾幕」をぶつけた。広範囲に大量の弾が虹色に光って地面、木ごとクロムを襲う。
「所詮範囲が広いだけ……。一つ一つの威力は呆れるなァ」
クロムの出した金属の壁が弾幕を防いだ。
「混沌」
涼香がそう呟いたそのとき、宙に浮く弾幕が不規則に飛び交う。
「なら数で押すだけ」
クロムは全ての弾幕を防ぎ切れず、身体中に小さな傷が出来る。しかし、クロムにはまだ底力が残っているのだ。
「俺はそれをも上回ってみせる。これで終わらす……!」
クロムは両手を地面につけ、力を込める。出力が約半径15mの範囲に地中を巡り、地面が突然隆起する。より高い硬度の金属が山脈の如く盛り上がった。
涼香の逃げる余裕も与えない、鋭い先が涼香を貫こうとしたそのとき──。
「月閃光!」
弾幕の点と点を結ぶ線が、目にも止まらぬ速度で金属を破壊した。金属は甲高く音をあげ、小さな小石のようになってしまった。そして、閃光は逆に──。
「ゴフッ……」
クロムを貫いた。細い攻撃ではあるが、数が数だ。クロムの身体はまるで蜂の巣と言える姿になった。
「クソッ!俺らの計画が進みつつあるというのに……!」
瀕死状態のクロムが、意味深な言葉を吐く。
「ん?他にも仲間がいるってこと?」
問う涼香に対し、クロムは不敵に笑い言った。
「ああ。だが、今更お前に言った所でもう遅い。あの方の計画はもう次期叶う」
文脈からして、早く解決しなければいけないものだろうと分かると、涼香は急いでクロムに迫る。
「計画ってどういうやつ?」
「人間を全員殺すんだ」
「っ……。知ってること全部言って」
涼香はクロムの首に手をかける。
「阻止でもする気か?無駄だ、あの方の計画は今も刻一刻と進んでいる。俺を殺しても意味ないぜ?」
しかし、ヘラヘラと笑うその顔は次第にやつれていく。クロムは最後の大技を放ち、出力がほぼ底を尽きてしまったのだ。出力が少なければ、能力はもちろん、生命活動すら困難になる。クロムの口数は減り、瞼が閉じる。
「あっ、ちょっと!」
クロムは強烈な睡魔に襲われ、結局寝てしまった。
(身体中穴空きまくってるのに、その敵の前で寝るか普通……?)
涼香は近くの空き家の周りに落ちている縄でクロムを縛った。
(死にはしないだろ……。そろそろ帰るか)
そして、涼香は家へ足を運んだ。しかし涼香は、頭に一つの疑問が浮かぶ。
(こんななんもないところに、なんで縄張りなんて張ってるんだ……?)




