決着
「雲外蒼天!!」
鍛治の振る二つの神器は、灰色に広がる雲をも切り裂いた。ギラギラと照らす太陽は、暑く二人を焼き付ける。「震天動地」を超える広範囲にダメージを及ぼした。そして、川の水は強く打ちつけられ大きな水飛沫をあげた。それは、佳逸の視界を遮った。
「何度も似たようなもん見てきたんだよッ!」
佳逸の繰り出す無数の爆発と刃は、水の壁を破壊した。しかし、鍛治の姿はどこにもなかった。
「むしろそれを利用する!」
鍛治は、佳逸の背後にいた。避けれないほどの至近距離に迫っており、槍を突き立てる。
「移山造海──」
そのときだった。
「まあ、そう簡単に攻撃を受けるわけないよな」
ドゴオォォォンッ!
「ッ!?」
突然地面が崩壊した。むき出しになる土から見えたのは、佳逸の鎖だった。鍛治と斬り合う中、鎖を張り巡らせていたのだ。一気に足場が不安定になる。
(最大出力で、これで終わらせる!俺の攻撃を最後に、被害はこれ以上出させない……!)
鍛治は佳逸の次の一手を考えていた。
(俺のように背後からの奇襲か?なら、天空の神器でトドメの一撃を弾いて今度こそ「移山造海」を……)
しかし、鍛治の予想は外れた。佳逸は土の塊を掻い潜り鍛治の目の前まで移動していた。
(正面!?マズイ──)
佳逸が放った鉄球が鍛治の腹に直撃する。怯む隙すらも与えず、鋼の波が押し寄せる。
「ガハッ……」
森の中から煙がはっきり見えるほどの爆発と、周りの木々が倒れる斬撃が鍛治の身体に巻き付く。佳逸は足に力をこめ地面を踏み込む。そして鍛治を真上に打ち上げた。意識が朦朧とする鍛治は、それでも着地をしようと身を捩る。しかし、それを許さない男がいた。
「輪回結核──」
鎖に燃え盛る炎のような紅蓮を纏う。それは獅子の威圧感そのものだ。そして、鎖が一気に引き抜かれた。
「双武炎天!!」
宙に浮く鍛治の胸をX字に切り裂かれる。
「ガハァァッ!」
糸を切られた操り人形のように、儚く地に落ち腕に力を入れる。
「グ……。嘘だ、ろ……。どうせ……死ぬなら……!」
(なんだ……。一体、何をする気で……)
「俺がずっと能力を使わなかった理由、それは万が一のためだった。この戦いの中で、俺はお前に沢山「触れてきた」」
佳逸は疲れで鍛治の言っていることがらよく理解出来なかった。人間の活動や能力に必要な「出力」を消費しすぎてしまったからだ。
「俺の能力は「蓄積」。触れた回数に比例して相手に内部から攻撃する!」
疲弊しても、攻撃という単語は佳逸の目を覚まさせた。
「待て!話を──」
「せめて相打ちだああ!」
鍛治は手に力を込めた。
「ガッ……!」
佳逸の身体の中心から内臓が爆ぜるような痛みが連鎖して身体中に広がる。佳逸はまともに立つことも出来ず鍛治と同じく地に崩れ落ちた。
「絶対に……死んでたまるか……ぁ!」
その強い意志は能力による攻撃を耐え凌いでみせた。次第に、痛みが弱くなり引いていく。
「え……、ありえない……。生きているなんて……」
言葉を零す鍛治に、佳逸は身体を引き摺って近づく。そして、改めて鍛治に問いかけた。
「なあ、なんで戦う相手が俺なんだ……?それに、神器って……」
鍛治はやっと、その問いに応えた。
「父だ……。父に、ケイイツという者を倒すよう言われたんだ……。何故だかは応えてくれなかったが……。神器は、俺の家系に受け継がれる武器だ。大地、深海、天空。父は、お前と戦うときにこれらの神器をすべて使うように言われた」
(話を聞く限り、家系の伝統が少し複雑だな……。それになんでこいつの父親は俺のことを知って……。理由も教えられてないのも変だ。でもとにかく今は……)
佳逸はふらつく身体を無理に起こし、鍛治に手を差し出した。
「お前の話を聞いてわかった。お前はただ父親の言うことに従ってただけなんだな。掴まれ、家に回復しやすくなる薬がある」
「は……?俺を、助ける気なのか……?本気でお前を殺そうとしたやつだぞ……?」
「まあ、こんな被害出しちゃったけど、お前結構良い奴なんだなって思えた。受け継いだ意志を責任もって背負って生きてるわけだし」
(なんで、俺はこいつを殺さなければいけなかったんだ……。こんな俺を許してくれるんだぞ……?)
そう思った鍛治の目から、涙が流れる。
(孤独なんかじゃない……。少なくとも、この人が居てくれるのだから……)
鍛治の震える手が、差し伸べられた佳逸の手に近づく。
手を取ろうとしたとき──。
ザザッ──。
黒い影が鍛治を連れて森の奥へ姿を消した。
「は……?おいッ!!」
咄嗟に鎖を伸ばそうとしたが、疲弊したうえダメージを受けた佳逸の身体では不可能だった。
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黒い影の正体は、紳士服を着て仮面をつけている若い男性だった。
「だ、誰……だ……」
「神器はすべて壊して欲しいところでしたが、まあ仕方ないでしょう」
男は仮面を外す。その顔は、
「あ、あなたは……!」
………………。
…………。
……。
鍛治は森の奥で亡くなった。




