特大花火
魔物がこっちに振り向いたとき、俺は咄嗟にそいつに突撃した。
(今はとにかく、遠くにやるしか!)
突き飛ばし、「氷」で魔物の身体を覆った。しかし、予想通り身体から生やす針により破壊された。間髪いれず、さらにもう一本針を俺に突き立てた。
「チッ」
俺は「雷」の能力で避ける。そして、
「無力化が無理なら、「氷」は攻撃として使うしか!」
腕を氷で纏い、再度突撃すると共に腹に打ち込んだ。
「ギャアアアア!」
魔物は甲高く悲鳴をあげる。効いているようだ。この戦法を繰り返そうとしたそのとき──、
ヒュウゥゥ……。……ドオォンッ!!
花火の打ち上がる音が聞こえた。花火大会が始まったのだ。そしてなんと、
魔物が、その音の方に駆けた。
「行かせるか!」
俺は瞬時に追い越したが、考えてみると魔物を食い止める方法はなかった。氷はもちろんさっきまでの戦法も覚えられたかもしれない。俺はがむしゃらに攻撃し続けた。針に砕かれても、そこからさらに攻撃を加える。
……しかし、どれも効果はなかった。最初は時間稼ぎにしかならなかったものは、もうそれすらも出来なくなった。魔物を徐々に攻撃を押しのけていく。
(どうする!?もう、炎を使うしかないのか……!?)
俺の手のひらから、暗い森を照らす花火よりも明るく、紅い炎が燃え盛る。俺はその手を魔物へ向ける。
(仕方ない……水でどうにか消火を……)
そのとき、魔物の歩む足が止まった。しかも、誰かに攻撃されたように、横によろける。俺はその方へ視線をやる。そこにいたのは、
「おいおい、環境破壊は流石にダメだぜ?」
岩で作られたバットのようなものを振る、夕霧だった。
突然の攻撃に、魔物は針すら出せなかった。夕霧は魔物が立ち上がる間も与えず、地面から岩を突き出させ、魔物を高く空へ打ち上げた。
「俺は高く飛ぶなんで出来ねえ。華佗、カッコよくやっちゃえよっ」
その言葉に、俺は自信を取り戻す。俺には友達がいると、そして、一人で悩む必要はないと、改めて心から思った。
俺は勢いよく地を踏み、魔物に追いつく。
「危害なんか加えさせない。ここで終わらせる!」
空なら、「炎」の能力が使える。夕霧の能力も覚えられてしまったら針で破壊されてしまう。まだ使っていない「炎」で、最大火力の技をぶつけることが一番の手なのだ。右腕に炎を纏い、
「溶骨!!」
緋色の一閃が魔物を貫いた。身体の内側から炎が吹き出る。炎は魔物を荒々しく蝕み、灰となって散り散りに消えた。




