ケリつけにいこうぜ!
麻衣が、缶を握ったまま言い放った。
「はるたが、あのタカとか言うやつとケリつけにいく」
「ついてこい。」
エリが、すぐに眉をひそめる。
「姐さん、それ、ただの突撃っスよ」
カナも腕を組む。
「段取りゼロじゃん」エリが眉をひそめる
俺は、静かにうなずいた。
「いや、それが一番いいと思う。
もう逃げない。
弱みを握ってると思われると、それこそ向こうの思うつぼだ」
麻衣は、俺を見てニヤリと笑う。
「だろ。で、男の格好で行くのか?
女の格好で行くのか?」
俺は、少しだけ考えてから答えた。
「Ms.unknownの格好で挑む。
もう誰に笑われてもいい。
これは俺が努力の先に到達した姿だから」
その言葉に、空気が少しだけ張り詰めた。
そこへ、ミキが話に割って入る。
「え、はるたくんって、あのMs.unknownなの?
なんで、いつも麻衣ちゃん達と一緒にいるの?」
俺は、少しだけ肩をすくめて答えた。
「まぁ、色々あったんだ。
ミキは俺のこと、軽蔑する?」
麻衣は、申し訳なさそうに俯いた。
その背中に、少しだけ緊張が走った。
でも、ミキは首を振った。
「ううん、全然。
それよりタカってヤツ、ちょっと格好いいかなって思ってた時もあるけど、感じ悪いよね。
なんか友達に偉そうに命令してさ、私たちの周りウロウロさせてるじゃん。
向こうは気づかれないと思ってるのかもしれないけど、ジロジロ見られてたら気持ち悪いっての」
その言葉に、エリとカナが吹き出した。
「ミキ、言うねぇ」
「姐さんより毒舌かもな」
麻衣は、俯いたまま、少しだけ笑った。
俺は、拳を握り直した。
Ms.unknownの姿で、タカに会いに行く。
それは、逃げでも挑発でもない。
俺が、自分のままで立つための選択だった。
俺は、衣装担当だった子に連絡を取った。
「Ms.unknownの衣装、もう一度貸してくれないか」
そう伝えると、画面越しの彼女は目を丸くした。
「えっ、また着るの?…今度は何のために?」
少しの沈黙のあと、俺は答えた。
「ケリをつけるために。自分のために」
彼女は、すぐに笑ってうなずいた。
「いいよ。あれ、すごく似合ってたし。
正直、また見られるなら嬉しい」
その言葉に、俺は胸が熱くなった。
彼女は続けて言った。
「でもね、前回の騒動で、次回のミスコンは自粛になったんだ。
私たちが作った衣装も、ステージに出る機会がなくなっちゃってさ。
ちょっと残念だった」
その声には、悔しさと誇りが混ざっていた。
自分たちの手で作ったものが、誰かの記憶に残ったこと。
それが、彼女にとっての救いだったのかもしれない。
「でも、またMs.unknownが見られるなら、それだけで十分。
応援してるから。ちゃんと、立ってきて」
俺は、深くうなずいた。
またひとつ、勇気をもらった。
衣装はただの布じゃない。
それは、俺が“誰かになろうとした”証でもあり、
誰かの託した思いが宿っている鎧だ。
衣装室で着替えるとミキが化粧をしてくれた
ミキ
「え、ほんとに可愛いんだけど!
もうずっと女の子でいたら?」
俺は笑って、首を横に振る
「それは勘弁してくれよ。」
さて、これで準備は整った
逃げない。
誤魔化さない。
全部、背負っていく。
ケリをつける。
自分のために。




